第270話 エピローグ[前編] 赤井龍青の日常
今日は連続で2話更新しています。
その1話目[前編]です。
彩子さんが天界に戻ってから季節が進み、晴天の多い青月になっている。三人の精霊王たちは各地をめぐる生活へと戻り、多目的ルームには金色に光る三つの聖魔玉が残された。定期的に遊びに来ると言っていたので、その日を楽しみに待とう。
玄関に置いていた霊木は庭へ植え替え、精霊の力を借りつつ一気に成長した。今では完全に俺の身長を超えてしまい、そろそろ三メートル位になるんじゃないだろうか。花壇の花が一段と元気になったので、コールとヴィオレが喜んでいる。
妖精王のエコォウも、どこかで野良化している本の妖精を探すと放浪の旅へ出発。ソラが実家から譲り受けた蔵書には、王立図書館に所属している司書が絶句するほどの稀少本があるので、それの管理を任せられる妖精が見つかって欲しい。
ディストは時々地脈源泉の様子を見に行くが、それ以外の時間は家でのんびりしたり、一緒に冒険者活動を楽しんでいた。俺たちと生活を共にしたことで、寝て過ごす時間を勿体ないと思うようになったそうだ。当分は省エネモードで今の生活を楽しむと決め、街でも俺の子供としてお姉様方の熱い視線を一身に受けている。
「今日はどうするんだ? ライム」
「今日はかーさんといっしょに、じーちゃんとばーちゃんのところにいく」
「着替えを持って行くからよろしくね、お兄ちゃん」
「準備ができてるみたいだし、送るよ」
手提げバッグを持って二階から下りてきた真白とライムを連れて、ジェヴィヤの街へ転移。ライムを片手で抱っこしながら反対の腕を真白に差し出すと、嬉しそうにしがみついてきた。また少し成長したらしい部分は、今日もまろやかだ。
父さんと母さんは現在、マナ変換触媒の改良に取り組んでいる。ソラの両親を王都へ呼んでお祝いした時に意気投合し、今では月に一度か二度の割合で実験や検証に立ち会いながら、この世界の技術を吸収中。そんな時は泊まり込みになるので、こうして俺や真白が様子を見に行く。
「今夜は真白とライムも泊まってくるのか?」
「今日はソラちゃんのご両親も一緒だから、そうするつもりだよ」
「サラミヤおばちゃんといっしょに、おふろ入るやくそくしたの!」
「それなら明日の夕方前に迎えに来るから、四人のことよろしく頼むな」
今後のことを考えて購入した、ジェヴィヤにある家の前で、少し長めのハグをする。お兄ちゃん成分とやらを十分に吸収した真白は、ライムの手を引いて家の中へ入っていった。
◇◆◇
転移で王都の家に戻ってくると、庭で花壇の手入れをしていたコールとばったり会う。近くにはヴィオレと、もうひとり妖精がいる。最近ちょくちょく顔を見せる子と別なので、新しい花妖精を案内してきたんだろう。
「ただいま、コール、ヴィオレ。それにいらっしゃい」
「お帰りなさい、リュウセイさん」
「お帰りリュウセイ君、今日は新しい子を連れてきたのよ」
「はじめまして、なのですわ」
「王城の花壇に来るようになったって聞いたから、こっちにも案内してあげたの」
「街の中に聖域が二つあるなんて、驚いたのですわ」
「もう少ししたらおやつの時間になるから、ぜひ楽しんでいって欲しい」
「ヴィオレ様から“あいすくりいむ”という食べ物を聞いて、楽しみにしているのですわ」
アイスもそうだけど、ハチミツを固めて作った飴も花の妖精に大人気だからな。おやつ目当てで遊びに来る子もいるくらいだ。これから花もどんどん増えてくるし、妖精たちの社交場という目標に、少しづつ近づいている。
「お疲れ様、コール。何か手伝えることはないか?」
「肥料を少し買いたいので、付き合って欲しいです」
「あぁ、構わないぞ。どうする、このまま買い物に出るか?」
「はい、買うものは決まってますから、今から行けばおやつの時間までに帰れます」
「ピピーッ!」
コールは花の咲くような笑顔を浮かべながら、少し背伸びするように見上げてきたので、頭とツノに手を伸ばす。最近は嬉しいことがあると、こうして甘えてくるようになり、屋外でもついついツノを撫でてしまう。
少しだけ熱い吐息をついた後、俺の腕にしがみついてきた。そんな可愛い彼女の頭をもうひと撫でしてから、定位置に飛んできたヴェルデと一緒に商業区へ。隠し女神特典で種族を問わず子供を作れるようになってしまった俺は、最近はもう完全に開き直っている。
人目をはばからず家族とイチャイチャしすぎたせいで、なんでも“異種族狩人”という新しい二つ名が、王都で囁かれるようになったらしい。
どういった伝わり方をしているの不明だけど、子供は無邪気に頭を撫でて欲しいと寄ってくるから、悪い意味では無さそうだ。“多妻王”や“未亡人殺し”といった他の二つ名も浸透してしまったが、特に実害はないから放置でいいだろう。
◇◆◇
コールとの買い物デートを終えて家に戻ると、ちょうどおやつのクッキーが焼き上がったところだった。本来なら家や船に棲み着く妖精は、お菓子などのお供えをもらった対価に力を使ってくれる。
つまり今のイコとライザは、一種の自家発電状態というやつだ。
白銀土地建物商会で使用人をやっているカスターネさんは、以前働いていた商家で家妖精を見た経験を持つ。そこが代替わりした時に妖精を蔑ろにし、家が凋落してしまった。そんな過去を持つ彼女がラチエットさんと家に来てくれた時、うちの二人を見てとても驚いてたもんな。
それもこれも聖域のおかげなのだけど、庭に植え替えた霊木が成長するにつれ、二人の力も上昇しているらしい。近い将来この聖域内限定だったら、どちらか一人だけでも妖精王を力で抑え込めるかもしれないと、エコォウが複雑な顔をしていたくらいだ。
「今日も美味しそうに出来上がってるな」
「すぐお茶をお入れしますから、リビングでおやつにするのです」
「申し訳ないですが、ソラ様が書斎にいると思うので、呼んできて欲しいですよ」
「すぐ行ってくるよ」
「それから後でマヨネーズ作りも、お願いしたいのです」
「今夜はベル様が帰ってきますし、ケーナ様とリコ様も来られるので、少し足りないですよ」
「そっちも了解だ」
マヨネーズ作りはすっかり俺の担当になってしまっている。混ぜる時のスピードや力加減が影響するのか、俺が作ると一番なめらかで口当たりが良くなるらしい。無心で手を動かしていると、なんだか楽しい気分になってくるし、今日も頑張って量産しよう。
「キュイッ!」
「バニラも一緒にソラを呼びに行くか?」
「キュイーン」
足元に駆け寄ってきたバニラを抱き上げ、階段を登って二階に行く。
ソラはすっかり王立図書館の名物利用者になり、司書をやっている兎人族の女性とも仲良くなった。それは喜ぶべきことなんだが、迎えに行くと二人に抱っこをせがまれるのは困りものだ。小柄な獣人種の彼女を抱き上げるのは苦じゃないけど、かなり可愛らしい人なんだよな……
「ソラ、入っても大丈夫か?」
『うん、いいよ』
扉をノックすると、くぐもった声で返事が聞こえたので中に入る。ソラは書斎に備え付けられた重厚な机に数冊の本を並べ、何かを書き写しているところだった。
「捗ってるみたいだな」
「昨日王立図書館で読んだ本、とても面白いこと書いてた。今ヒロズミとミドリがやってる研究、応用できるかも」
「それならヴァリハさんとサラミヤさんにも、喜んでもらえそうだ」
「喜んでもらえるの嬉しい、でも研究所に誘われるの、ちょっと困る」
「ソラは二人と一緒に働きたくないのか?」
「それ前も言った、彼氏と離れるの絶対イヤ。研究や勉強、場所どこだって出来る。でもリュウセイ居るのここだけ、別の街いっていいとか言うの酷い」
「そうだったな、俺が悪かった。これはお詫びの印だ」
椅子に座っていたソラを抱き上げ、耳元で「愛しているよ」と囁く。それを聞いたソラが抱きついてくると、俺の耳元で「私も愛してる」と言ってくれる。
俺たちはそのままリビングへ、おやつを食べに移動した。
◇◆◇
今日はじめて来てくれた花の妖精と一緒にお茶の時間を楽しんだ後、ヴィオレに用意してもらった新鮮な卵を使って、マヨネーズづくりを開始する。油を少しづつ混ぜながらひたすらかき混ぜていると、スファレが様子を見に来てくれた。
「メレンゲ作りは、われがやってやるのじゃ」
「ありがとう、助かるよ。白身はこっちの容器に入ってるから頼む」
「おまかせなのじゃ!」
スファレが右手を空中に差し出すと、容器の中身が撹拌されていく。これは精霊たちに協力してもらうハンドミキサーだ。三人の王たちとあちこち旅したおかげもあって、スファレのことは多くの精霊たちに知れ渡り、ますます協力的になっている。
同時に俺たちの家と新しい聖域も有名になったので、近くに来た精霊たちは必ず遊びに来るらしい。そのせいで王都周辺の精霊密度が高まり、土地の持つ力の上昇や水量の増加、それに船を動かすために都合のいい風が、よく吹くようになったそうだ。
体感できるほど大幅な変化じゃないけど、確実に住みやすい土地になっている。王城にある聖域も恩恵を受けているようなので、ミルクも喜んでくれてるだろう。
「いつ見てもそれ、便利だよな」
「われでは細かな調整は出来ぬが、メレンゲくらいなら作れるのじゃ」
「精霊王がやってもマヨネーズはうまくできなかったから、微妙な加減はかなり難易度が高そうだ」
「旦那様のマヨネーズを超えるのは、たとえアヤコ様でも不可能なのです」
「旦那様は神を超える手を、お持ちなのですよ」
流石にそれは大げさだと思うけど、一番美味しいといってくれるのは嬉しい。俄然やる気も増してくるってものだ。
一足先に出来上がったメレンゲは、イコとライザが焼き菓子にしてくれる。これで明日のおやつも心配しなくて大丈夫だな。
◇◆◇
マヨネーズを作り終えた後、クリムとアズルに誘われて、日課のランニングに出発。今日は城壁側から土手を川下に向かい、港の手前で折り返すコースだ。他にも公園を走ったり、西門から外に出て丘まで行ったり、時々コンガーに誘われて、兵士たちと一緒に訓練場を走ることもある。
「やっぱり外を走るのは気持ちいいねー」
「雨の日は体がウズウズして大変です」
「今年は兵士たちの使う屋内訓練場にも何度か行ったけど、さすがに毎日というわけにはいかないしな」
俺がコンガーとの模擬戦に勝ったことがきっかけになり、兵士と冒険者の合同訓練が定期開催されることになった。冒険者ギルドでも武器の扱いは教えてもらえるが、より実戦形式に近い訓練を受けられると、新人を中心に好評だ。
王子たちの護衛任務がない時はコンガーも参加し、指導者としての才能を存分に発揮している。ダンジョンや森での事故や怪我が減ったと、トロボさんも喜んでいるらしい。
「みんなと一緒に訓練するのも面白いんだけど、やっぱりあるじさまとアズルちゃんの三人でやるのが、一番楽しいよー」
「最近のコンガーさんはますます強くなってますから、私たちもご主人さまとの絆を更に深めないといけません」
「早く十五歳になって、あるじさまに全部もらって欲しいなぁー」
「来年の誕生季が楽しみです」
「それ以外にも仲良くなる方法はあるから、色々試してみような」
もともとコンガーは先祖返りで力が強いし、二人と主従契約を結ぶという快挙まで成し遂げてるしな。そんな特殊な状態になった彼が強くなるのは、ある意味当たり前といって良い。
本人たちはこう言っているけど、精霊王の祝福を受けたクリムとアズルは、今の段階でも近衛兵以上の実力を身につけている。体術だけに限定すれば、最下層域の魔物と渡り合える、そんな評価を受けているくらいだ。
強くなるために肉体関係を結ぶのではなく、もっと深い所で繋がり合いたい。俺は二人に、そんな結びつきを求めようと思う。
◇◆◇
ランニングを終えた後にお風呂で軽く汗を流し、多目的ルームで遊んでいるクレアを誘いにいく。部屋の中でディストと一緒に、難易度の高い立体パズルに挑戦していた。
つい最近買った木組みのパズルだが、クレアが一目惚れした複雑なものだ。お店の人によると、ジェヴィヤの街で活躍する、魔道具職人の小人族が作ったらしい。細かい部品を組み上げるプロだけあって、こうした品でも一切手を抜いていないのが凄いと思う。
「今から冒険者ギルドに行くけど、ディストはどうする?」
「ボクは家でのんびりしてるから、二人で行って親子の時間を楽しんでおいでよ」
「ん……行ってくるから、パズルはそのままにしておいて」
「了解だよ、クレア。帰ってきたら、完成させようね」
ちらっと見てみると、家の形がほぼ出来上がっていた。中に飾る家具や調度品も、全てパズルになってるという鬼仕様だから、この状態になるまで相当の時間がかかっている。
完成したらリビングの目立つ場所に飾っておこう。
「ん……パパいい匂いしてる」
「ちょっと走り込みに行ってきたから、お風呂で汗を流してきたんだ」
「ん……さすがパパ、身だしなみに手を抜かない所が好き」
「今から大切な人を迎えに行くんだから、これくらいはちゃんとするぞ」
「ん……やっぱり年上愛好者の二つ名は伊達じゃない」
え? その二つ名は初耳だぞ。
ちらっとディストの方を見ると、なにやらニヤニヤした顔で見られてしまう。子供の姿のままで過ごしているとはいえ、彼も超歳上なのを忘れていた。すっかり息子扱いするように、なってしまったからな……
まぁ二つ名に関しては他と同じく、放置でいいか。
とにかくさっさと出かけて、色々な用事を済ませてしまおう。
◇◆◇
クレアと手をつなぎながら冒険者ギルドに入ると、ちょうど奥の扉から二人の男女が出てくるところだった。男性の方はギルド長のトロボさんなので、仕事が終わって見送りに来てくれたって辺りか。
クレアは俺の手を離れ、奥の方へ一直線に走っていく。
「ん……ベルママ、お仕事終わった?」
「えぇ、今日はもう帰れるからね」
「お疲れ様、ベル」
「迎えに来てくれたのね、あなた」
今日のベルは白いシャツに、膝丈のタイトなスカート姿だ。その姿は凛々しくて、仕事のできる女性という感じがする。
胸元に顔を擦り付けるクレアを抱き上げながら、ベルは近くにそっと寄り添ってくれる。その腰に手を回して軽く抱き寄せると、嬉しそうな顔で俺の肩にコツンと頭を当ててくれた。直前まで感じていた張り詰めた雰囲気が即座に消え、二人の間に甘い空気が漂いだす。
ベルの身長は百六十センチ以上あり、男性人族の平均と同じくらいだ。そのおかげで男装の時も違和感がなかったけど、本人にしてみればコンプレックスになっていたらしい。
しかし俺は百八十センチ程度あるので、彼女との身長差は真白が憧れている理想に近く、二人で寄り添う姿が絵になって嬉しいと言っていた。
本当に可愛すぎる奥さんだ。
「あー、おほん! お前たちは仲の良さは良くわかったから、公衆の面前では程々にしておけ」
「ベルさんのお顔、すごく幸せそう」
「男性の時も素敵だったけど、女性のお姿も魅力的だわ」
「時々でいいから、マラクス様に戻って欲しい」
「今のお姿でいいから抱かれたい……」
「リュウセイさんと親密になっておけば、ベル様と一緒に愛してもらえたのに……」
「「「「「年上愛好者の性癖に、気づくのが遅すぎたっ!!!!!」」」」」
どうやら二つ名の出どころは、ギルド職員みたいだな……
クレアを通じて俺と夫婦になったことをきっかけに、ベルは自分の性別をカミングアウトした。かなり驚かれたものの、男性の姿をしていた時と変わらず、受付嬢たちには大人気だ。
そして俺は“ベル”と呼び捨てにするようになり、彼女は“あなた”と呼んでくれるようになっている。
「今日はこのまま帰るの?」
「中央広場にあるお店で、ちょっとだけ買い物があるんだ。それから、花紫にも寄らないといけない」
「ん……今日はケーナとリコも来る日」
「そういえばそうだったわね、それならまずは買い物をしてしまいましょうか」
自然な動作で腕を組んできたベルをエスコートしながら建物を出る。フロアにいて甘い空気に当てられた冒険者たちは、男女問わず胸焼けしたような顔になっていた。なにか言われる前にとっとと離れるのが、賢い選択というやつだ。
◇◆◇
少し寄り道デートしながら買い物をすませ、ベルは着替えをしたいからと、クレアを連れて一足先に家へ戻っていった。俺は大通りから少し入った場所にある、小さな雑貨屋のドアをくぐる。
「あっ、リュウセイお父さん、いらっしゃい!」
「こんにちは、リコ、ケーナ」
「いらっしゃい、リュウセイさん。もうすぐ店を閉めるから、ちょっとだけ待っててください」
「俺も手伝うよ、三人でやったほうが早い」
「おや、今日は旦那が迎えに来てくれたんだね」
バックヤードの方から出てきたオーナーに挨拶して、閉店処理を手伝わせてもらう。
俺とケーナは少し不思議な夫婦関係になった。自立したいというケーナの意思を尊重して、いわゆる通い妻みたいな感じになっている。
いま住んでる場所の方が職場に近いという理由もあるのだが、こうした関係を望んだ理由は真白のアドバイスにあったらしい。いろいろな形の家族があってもいい、その言葉に感銘を受けたケーナは、俺への気持ちと前夫への操を両立するため、普段は離れて暮らすと決めた。
とはいっても、二人は紛れもない夫婦だ。ケーナは自分の気持ちを俺に全て捧げてくれたし、リコだって父親として認めてくれている。俺自身も今の状態を納得しているので、全く問題ない。だって二人の心は、しっかり繋がってるからな。
「そういえば近いうちに旅に出ることになりそうだ」
「こんどはどこにいくの?」
「ジェーシャっていう古い街に、古代文明の壁画が残ってるんだ。シエナと一緒に調査をする計画が、明日くらいに承認されるらしい」
「どれくらいここを離れるんですか?」
「父さんと母さんが馬車の旅を体験したいって言ってるから、王都から出発しようと思ってる。予定では二十日くらい掛かりそうなんだ」
それを聞いたケーナの表情が、わずかに曇る。施錠を任せて先に帰っていったオーナー夫婦がいないことを確認し、ケーナの体を少し強めに抱きしめた。
「とちゅうでも帰ってこられるようになったんだよね、リュウセイお父さん」
「クレアを目印にして転移できるから、夜は家族を別荘につれていく予定にしてるぞ。二人が休みの日は、一緒に馬車の旅をしような」
「やったー! お母さん、たのしみだね」
「そうだったわね、リュウセイさんとクレアちゃんの力を忘れてました。それに夫の帰りを待つのも妻の務めなのに、ごめんなさい」
「いや、いいんだ。それだけ想ってもらえてるのは嬉しいよ。
そろそろ俺たちも帰ろう、みんな家で待ってるはずだ」
しっかり施錠を終わらせた後に、リコを抱っこしながらケーナと腕を組む。転移門を開いて家まで移動すると、いつものようにイコとライザが出迎えてくれた。
寂しさを少しでも紛らわせてもらえるよう、今夜はいつも以上にイチャイチャしよう。
ちょっと長くなりすぎたので、前後編に分けました。
次の話は翌日から始まります。