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第262話 家族団欒

 彩子(あやこ)さんの協力で、地球から父さんと母さんの召喚に成功した。二人とも再会を喜んでくれ、かなりはしゃいでいる。


 元の世界に戻れなくても(うれ)いが無いよう、色々準備してくれていたのが功を奏したようだ。



「まさか本当に異世界に行ってたとは驚いたぞ」


「でもでも、こんなに可愛い孫が二人もできてうれしいわ」


「ライムもじーちゃんと、ばーちゃんにあえて、すごくうれしい」


「ん……今はお祖父ちゃんとお祖母ちゃんだけど、近い将来お義父(とう)さんとお義母(かあ)さんになる」



 みんなでリビングに集まり、暖炉に火を入れてから雑談を始めている。イコとライザが着替えに行ったので、本格的な紹介はその後にするつもりだ。



「それより聞きたいことあんねんけど……

 あんた、ウチとどっかで()うたことない?」


「う~ん、あるような無いような……テレビとか出てました?」


「そないなもんに出たことないで」


「誰かに似てる気もするんだけど、記憶にないかなぁ……」



 彩子さんの質問に、母さんは(あご)に手を当てながら考え込んでいる。母さんの実家は大阪や兵庫と別の場所だし、二人に接点なんて無さそうだ。そもそも、彩子さんがこの世界に来たのは、母さんがまだ幼い頃だしな。



「名前は赤井翠里(あかいみどり)で、ええんやな?」


「えぇ、そうですよ」


「旧姓は何やったんや?」


「えっと、彩川(さいかわ)ですけど」


「あー、思い出してきたでぇ……

 おかんの名前って音色(ねいろ)やなかったか?」


「えっ!? どうして母の名前を知ってるんですか?」


「やっぱそうや! あんた音色姉さんの子供や! 音色姉さんの旧姓は虹野(にじの)ゆうんやけど、聞いたことないか?」


「もしかしてあなた、神隠しにあったっていう、お母さんの妹?」


「せや、その虹野彩子(にじのあやこ)や。あんたの叔母やで」



 つまり彩子さんは、母方祖母の妹ってことになるのか。


 それなら、彩子さんのスキルで生み出されたライムやクレアは、俺にとって遠い親戚といってもいい。神子(みこ)であるライムが俺に反応して目覚めた理由、クレアに感じている妙な繋がり、その全てがこれで説明できる。


 この世界に来た俺たちは、様々な縁で結ばれていた、ちょっと感動だ……


 姉に子供が生まれた時に、当時十九歳の彩子さんも見に行ったらしい。もし彩子さんが異世界転移せず日本にいたら、やっぱり六十……おっと、また寒気が。


 なにせ神になってから長い年月が経過しているので、彩子さんの記憶も結構曖昧になっているようだ。母さんたちと記憶のすり合わせをしながら、姉である音色さんのことを色々聞いている。


 音色さん( 祖母 )は真白が生まれる前に病気で亡くなっていて、俺も全く記憶に残っていない。ただ、俺だけは抱いてもらったことがあるので、真白がちょっと悲しそうな顔になっていた。



「真白」


「うん、ありがとう、お兄ちゃん」



 軽く抱き寄せて頭を撫でていると、その表情がいつもの安心できる笑顔に変わる。そんなことをしていたら、着替え終わったイコとライザが、ティーセットを持ってきてくれた。それを飲みながら、まずは落ち着くことにしよう。



◇◆◇



 自己紹介や諸々の説明を終え、とりあえず俺のロリコン疑惑は回避されたと思う。今もシエナさんが膝に座っているが、この人は十歳年上のお姉さんだから、全く問題ない。


 母さんは膝にライムを乗せ、クリムとアズルを左右に座らせて、かなりご満悦だ。猫好きなのにアレルギー体質で苦労していたから、思う存分可愛がれる猫人族はたまらない存在なんだろう。



「はい、ライムちゃん、もう一つ食べる?」


「うん、ありがとう、ばーちゃん」


「母さん、もうじきお昼だから程々にな」



 俺の忠告を受け流している母さんは、小さな豆菓子をライムの口に一粒づつ入れながら、楽しそうにニコニコしている。これは全力で餌付けしてると考えて良いんだろうか?



「クレアの好きなものは何だ?」


「ん……パパ! 将来パパと結婚するの」


「俺は真白にそれを言われたこと、無かったんだよ」



 クレアを膝に抱いた父さんが、肩をがっくり落として落ち込んでしまう。真白は昔から「将来はお兄ちゃんと結婚する」だったもんな。



「リュウセイくんってぇ、とうとう神様の関係者になっちゃったねぇ~」


「俺もこんな繋がりがあったのは予想外だったけど、実はちょっと嬉しいと思ってるんだ」


「ライムちゃんやクレアちゃんとも、ちゃんと繋がってるってわかったから、私もすごく嬉しいよ」


「そっかぁ、なら後は王族だけかなぁ~」


「あっ、実は私、王家の血をひいてるんです」



 リコを膝に乗せながら隣りに座っていたケーナさんが、あっさりカミングアウトしてしまった。まぁ、シエナさんなら知られても大丈夫だろう。秘密の厳守に関しては、すでに俺たちもお世話になってるしな。



「うそぉ、ホントなのぉ~」


「はい、私の母が元王族で、家を出て一般人だった父と結婚したんです」


「やったねぇ、リュウセイく~ん。すべての種族や神様にぃ、王族もお嫁さんに出来るよぉ~」


「龍青……」


「どうしたんだ? 父さん」


「異世界転移でチーレムを築いてるとか、ちょっとテンプレすぎるぞ!」



 実の息子に向かって、その言い方は酷くないか?

 確かにチート能力も授かってるし、王都でも同様の二つ名が付いてるだけに、否定できない辺りがちょっと悔しい。



「みんな可愛い子だし、仕方ないじゃないかな」


「確かに俺が龍青と同じ年齢なら、全員嫁にするな」


広墨(ひろずみ)さんがそれをやったら、絶対に許さないからね?」


「もちろん今の俺はそんなことしないぞ! だが、龍青はいいのか、龍青は」


「みんなが納得してるみたいだから問題ないけど、もちろん正妻は真白ちゃんよね?」



 とてもいい笑顔をしているにも関わらず、母さんから凄いプレッシャーを感じる。クリムを間に挟んで座ってるのに、父さんは青い顔をして脂汗を流し始めた。背後にうっすら浮かんでいるのは、般若(はんにゃ)だろうか……



「家族には順番とかなくて、みんな同じように大切な女性(ひと)なんだ。母さんの望む答えは出せそうにないよ」


「うん、合格! さすが龍青くんだね。こんなに毅然とした態度は、広墨さんにも見習って欲しいなぁー」


「……ぐぅぅ」



 肌がひりつくようなプレッシャーは嘘のように消えてしまったけど、容赦ない母さんのダメ出しを受けた父さんは完全にノックダウンした。直前にクレアから告げられた、パパの嫁宣言ダメージが抜けきらないタイミングで、とどめを刺されたようだ。



「竜族のボクでさえ恐怖を感じるなんて、リュウセイのお母さんはすごい人だね」


「今回ばかりは私もリュウセイの服に隠れようと思ったぞ」


『儂もこのような圧力を感じたのは初めてだ』


『吹き飛ばされちまうかと思ったぜ』


『わたくしは特に何も感じませんでしたわよ?』


「私も同じ場所にいたけれど、何も感じなかったわ」


「キュキューイ」


「ピピー」



 もしかして母さんのプレッシャーは、男性にしか感じられないものだったのだろうか。だとすれば、意外な事実が判明したぞ。


 ヴェルデとバニラも変化なしってことは、この二人は女の子ということだ!



「いまの怒り方、音色(ねいろ)姉さんにそっくりや。やっぱ血は争えんなぁ」


「かーさんも、ばーちゃんと同じになる?」


「大丈夫だよライムちゃん、おばあちゃんと同じことが出来るようになっても、相手はお兄ちゃんだけだから心配しないで」



 俺はすごく心配だぞ。


 なるべく怒らせるようなことはしたくないけど、何かの拍子に地雷を踏み抜くことは避けられない。その時はヴィオレに頼んで、精神防御を強めにかけてもらおう。



◇◆◇



 ケーナさんや母さんも参戦し、六人体制で取り掛かった昼食は、あっという間に完成した。仕事が忙しかったせいで、母さんは時短料理が無茶苦茶得意なんだよな。


 完成度という点で真白に遅れを取る部分はあるが、早くて美味しい料理なら負けなしだ。



「真白ちゃんの腕がまた上がってて、びっくりしたよ」


「こっちの世界に来てから、大勢の料理を作る機会が増えたからね」


「それにコールちゃんの作る水が、とても美味しいの」


「魔法で作る水は、誰が出しても同じですよ?」


「甘いわよ、コールちゃん! 私のいた世界では、顔写真のついた水も売ってるんだよ。コールちゃんの美貌があれば、バカ売れ間違いなしね!」


「あのっ、よくわからないんですけど、すごく恥ずかしそうなので、やめて下さい」



 確かにあったな、顔写真付きのミネラルウォーター。俺も“コールの美味しい水”で売り出せると考えたことがあるから、母さんの発想に文句は言えない。



「真白の料理は久しぶりに食べたが、全く違う世界でよくここまで出来るようになったな」


「宿屋兼食堂のおじさんや大きなお屋敷で働いてる人、それにケーナさんとか色々な人に教わったからだよ」


「かーさんのりょうりは、おうじさまもほめてくれるからね!」


「ん……きっとこの国で一番美味しい」


「ホンマに旨いなぁ、毎日食べとうなるわ」



 王都へ転移する前、彩子さんの力で位置や角度を厳密に調整し、御神体と三つの石を固定してきた。更に、精霊王たちの力で歪みや劣化の修復を行い、祭壇の性能が大幅に強化されている。地上に顕現しやすくなったと言ってたので、もう一人の神が目覚めて手が空いたら、本当に毎日通ってきそうだ。


 それに、この家にある聖域の力はかなり特殊で、女神ですら力が湧いてくるらしい。双子の家妖精が限定的ながら、王を超える力を出せる場所は、伊達じゃなってことだろう。



「それならイコちゃんとライザちゃんも、家妖精で最高の料理技術を持ってるって事になるのかな?」


「マシロたちがいない時は二人が料理を作ってくれるけど、どれも美味しいよ」


「ありがとうございますなのです、ディスト様」


「今後は大奥様からも学んで、更に腕を磨くですよ」


「やっぱり家にメイドさんがいるのはいいな、そう思わないか母さん」


「大奥様なんて言われると、どこかの貴婦人みたいな気分に(ひた)れて嬉しいわ」


「俺のことは御主人様と呼んでもいいぞ?」



 イコとライザに何を要求してるんだ、父さんは。二人に拒否られて落ち込むのはいいけど、母さんの目がまたちょっと怖くなってるからな……


 でも、こうして家族や親戚が集まってする食事は楽しい。まさか異世界でこんな風に食卓を囲める日が訪れるなんて、昨日までは考え付きもしなかった。


 この世界にある大切なものを守りたいと願い、ここでずっと暮らしていくと決めた日から、無意識に考えることを避けていた部分があると思う。


 両親と再会してみてわかったけど、やっぱり絆ってものは簡単に断ち切れない。これから先も、大切な人との繋がりは大事にしていかないといけない、改めてそう思い直した。


 資料集に両親の名前と旧姓まで書いてた理由を、やっと回収できました。

 登場人物の名前が色と音(楽器)で構成されてたのも、これでスッキリですね!


・虹野・彩川・赤井家の年齢シート

挿絵(By みてみん)

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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