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第258話 虹野彩子

 自分が使っていた話し方や、あるある系のネタも含めた、いわゆる“エセ方言”なので、ツッコミや誤字報告は控えていただく方向でなにとぞっ!w

「呼ばれて飛び出てジャジャジャ~ン」


「「「「「……………」」」」」


 クレアの指示で祭壇に飾られている御神体や三つの石を正しい位置に戻して祈りを捧げると、突然その場に白い布を身にまとった黒髪の女性が降臨した。


 俺たちは突然のことで、誰も声を出せずにその姿を見つめるだけだ。



「……あっ、あれ~。もしかして失敗しちゃった?」


「君って確か、ボクの所に神の使いだって来た子だよね」


「えっと、あなたみたいな子供と会ったことあったっけ?」


「竜人族を生み出す時に握手しただろ? ボクは真竜のディストさ」


「なんやてっ!? なんでそないに(ちい)そうなっとるんや!」



 ということは、この人が新しい種族を生み出した、古代エルフ族に伝わる流れ人かもしれないのか。ディストにツッコミを入れまくる彼女は関西弁でまくし立ててるし、日本出身なのは間違いないだろう。


 どうやらその当時のことを色々確認してるようだけど、テレビでしか見たことない喋り方を生で聞いてるのは、ちょっと新鮮だ。



「あのー、もしかしてあなたは大阪の方からこの世界に飛ばされた、流れ人なんですか?」


「せやで真白ちゃん。あちこち引っ越したさかい、色々混ざっとるけどな」


「ボクと会った時は、そんな喋り方じゃなかったと思うんだけど?」


「普通の喋り方も出来るんだけど、これちょっと疲れるのよねー。せっかく日本から来た流れ人がいるんだし、元の世界っぽく話した方が私のことわかってもらえるかなーって」


「つまり太古の時代に日本からこの世界に呼ばれた流れ人で、竜人族や獣人族みたいなハーフを生み出した女性ってことでいいんだな?」


「龍青君、大正解や! ウチの名前は虹野(にじの) 彩子(あやこ)。空に架かる虹っちゅう字と野原の野、そんで色彩の彩と子供の子で、虹野彩子って書くんや。こっちの世界に飛ばされる前は、兵庫県におったんやで」



 虹野彩子と名乗った女性は、年齢は二十代前半といった辺りだろう。身長は真白より若干低いから、大体百五十センチ前半か。髪は肩くらいまでの長さで、サイドが外向きに跳ね、後ろは内側にカールしていた。顔つきは愛嬌があって、美人というより可愛いといった感じだ。



「神の祭壇に呼び出された。つまりアヤコ、夜の女神?」


「この大陸で信じられとる女神で間違いあらへん。ウチがこの世界に来た時に授かった力を、最初からおった(かみ)さんが気に入ってもうてな。夜を司る神が不在やから、やってみーへんかって言われたんや」



 そんな軽いノリで神を決めていいのか?

 昼の神と言われてる男性はここに来てないけど、ちょっと会ってみたくなる。



「神様なら、どうして……どうして私たちを助けてくれなかったんですか! リコちゃんが病気になって、私がどれだけ辛い日々を送ってたか。それに、リュウセイさんたちを危険な目に合わせるなんて、こんな酷いこと許されるはず……っ!」


「それは悪かったって思うとる。こっちも色々失敗してもうたんやけど、詳しい経緯は後でするわ。とにかくホンマにゴメンな、そのことは全部ウチらの責任や、堪忍したって」


「お母さん、私はだいじょうぶだから泣かないで」


「俺たちのために怒ってくれてありがとう、ケーナさん」


「うっ……グスッ………リュウセイさん……うぅっ」



 つい感情を爆発させてしまったケーナさんを抱きしめ、背中や頭をゆっくり撫でる。ここで見つかった邪魔玉(じゃまぎょく)を浄化しに行くときも、アージンに出現した元凶を消し去った時も、かなり心配してくれたからな。


 胸の中で泣いているこの人は、本当に優しい。

 これからもずっとそばにいて、大切にしていきたい女性だ。



◇◆◇



 泣いてしまったケーナさんが落ち着くのを待ち、話を再開することにした。どこか別の場所に行こうという意見は、彩子さんによって却下されている。


 地上に顕現する時は大きな力を使うので、安定するまでここに留まったほうが良いらしい。



「ごめんなさいリュウセイさん、もう大丈夫です」


「お母さん、私はちゃんと、しあわせだからね」


「うん、泣いちゃってごめんねリコちゃん。お母さんも今の生活を後悔していないわ」


「しっかし龍青君はホンマに凄いな、ウチの子供がパパって呼ぶはずや」


「ん……アヤコって、私のママ?」


「せや、ウチがクレアちゃんのママやでー」


「お兄ちゃーん? 私の知らない間に、どうやって兵庫県まで行ったの?」


「ちょっと待て真白、新幹線を使っても片道数時間かかるんだぞ、無理に決まってるじゃないか」


「でもお兄ちゃんには転移魔法があるもん、それで浮気したんだ」



 日本にいた頃は魔法なんて使えなかっただろうが、一体なにを言い出すんだ俺の妹様は。そもそも日本では兄妹だったのに、浮気なんて言われるのは心外だ。確かに今は夫婦だけど……



「彩子さん、ちゃんと説明してくれ、このままだと埒が明かない」


「あー、うん。どっから説明しよかなぁ――」



 念の為クレアにチェックしてもらうと、彩子さんは本当にママ認定された。


 ちなみに、女神になった時に不老不死の体を手に入れたが、同時に生殖機能を失ったそうだ。食べ物や水も必要なくなったり、生物という枠を超越した不変の存在に変わった影響らしい。


 ただ、この世界に飛ばされて時に授かったスキルはまだ有効で、それによって生まれたのがクレアだ。その相手は昼の神だけど、クレアは種族的に半神(デミゴッド)になる。これは、必ず人とのハーフが誕生するという、彩子さんに発現したスキルの影響だ。



「お兄ちゃんの浮気疑惑が解消されてよかったよ」


「学校に行ってる間以外は、ほとんど一緒だったじゃないか。言いがかりは勘弁してくれ」


「それならどうしてリュウセイが、ライムやクレアに父親認定されとるんじゃ?」


「それに関してやけど、まず流れ人に助けを求めた経緯を、説明せんとあかんのや」



 黒い思念体の男は、巧妙に神の目を逃れながら計画を進めていた。それに気づいたときにはもう手遅れで、自分たちが地上に顕現してでも事態の収拾を図ろうと決定。


 そのためには長年放置されていたこの祭壇を、正常な状態にしなければばならない。その役目を担っていたのがクレアだ。


 ところが、ここも邪魔玉に汚染され、クレアは思念体の男に捕まってしまう。


 更にライムを生み出すが、目覚める鍵になっているディストまで、邪魔玉に侵されてしまった。



「それで俺たちが呼ばれたというわけか」


「ホンマはやったらあかんねんけど、緊急事態やったさかい強引なことしてもうてな、こっちの世界に来る場所や時間が、バラバラになってしもたんや」


『それで儂らに気づかれず、流れ人が現れたというわけか』


『かなり無茶をされたのですわね』


『なら、てめぇらのせいで、クリムとアズルのやつは猫人族になっちまいやがったのか』


「召喚はもう一人の(かみ)さんがやるんやけど、四つの魂ちゅうんは想定外やったんや。仔猫やった二人は転移の衝撃に耐えられへんかってん。ウチが強引に繋ぎ止めたんやけど、どうしても仔猫のままやと、あかんかったんよ」


「あるじさまと話ができるようになったし、私は別に気にしてないよー」


「どちらかというと、感謝の気持のほうが大きいですね」



 寄り添ってきた二人の頭を撫でると、嬉しそうにはにかんでくれる。まぁ、猫人族に転生してくれたことに関しては、俺も同じような気持ちだ。


 昼の神である男神(おがみ)は命あるものを育てる力、夜の神である女神(めがみ)は命を生み出す力、それぞれ役割分担があるらしい。クリムとアズルがこうして転生できたのは、彩子さんが取った裏技的な回避法のおかげだし、その点に関して責めるのはやめておこう。



「リュウセイ君とライムちゃんが出会ったのも、あなた達が仕組んだことなのかしら?」


「もう一人の(かみ)さんによるとな、転移の時に二人の魂が共鳴したってゆうとった。多分やけど、ウチと同じ日本人やからちゃうかな」


「ライムは彩子さんの力で生み出された真竜の血を引く竜人族だから、同じ日本人の俺に反応したってことか?」


「そう考えるのが一番妥当やと思うんや」


「じゃあ私はどうなるんですか? お兄ちゃんと同じ日本人なのに、ライムちゃんと共鳴できなかったじゃないですか」


「真白ちゃんの魂は、龍青君との結びつきが強すぎるんや。そっちの影響が大きすぎて目立たへんけど、ちゃんとライムちゃんとも繋がっとる思うで」


「お兄ちゃんとは魂で繋がった夫婦だって!」


「それにライムとも繋がってるなら、俺たちは間違いなく家族だな」


「とーさん、かーさん、ライムすごくうれしい!」



 近づいてきたライムと真白をまとめて抱きしめ、改めて家族になれたことを喜び合う。


 彩子さんによると真白の出現時間と場所がずれたのは、俺と繋がっているリンクをたどるのに時間が必要で、どうしてもタイミングを合わせられなかったらしい。詳しいことは転移を担当した男神に聞けばわかるらしいが、真白の転移が終わったあとで力尽き、ずっと眠っているそうだ。



「それなら後はクレアのことだ。俺はこの子とも繋がりを感じてる、それはやっぱり日本人だからか?」


「それもあるんやけど、それだけやとクレアちゃんがパパ認定した理由にならんやろ?」


「クレアには匂いで判別されてるし、確かにそうだな」


「龍青君はな、あっちの(かみ)さんにめっちゃ似とるんや」


「それはリュウセイさんの匂いがってことですか?」


「ピルルー?」


「ちゃうちゃう、クレアちゃんが感じとるのは、匂いやない。もちろん顔や体型なんかもちゃうで。あっちはもっと背ぇ低いし、顔かって優男(やさおとこ)っちゅう感じやしな」


「一体、旦那様の何が似てるのです?」


「似てる部分が気になるですよ」


「クレアちゃんが感じとるんは、その人が持っとる存在そのもんや。上手いこと表現でけへんけど、龍青君が近くにおると安心できるやろ、みんなも心当たりあらへんか?」



 その言葉に、周りにいる全員がうなずいた。彩子さんは俺がまとっている“気”みたいなものと言っているが、自分自身の雰囲気なんてわかるはずもない。



「ん……パパはクレアのパパ。それだけで十分」


「確かにそうだ。

 クレアは俺を父親として選んでくれた、ならそれに全力で応えるだけ。こんな可愛い子が娘になってくれて、喜ばない父親なんていないからな」


「ん……パパ大好き!」


「さすがママの娘や! 今ので龍青君もメロメロになっとる!」


「曖昧な点は残るが、互いに幸せならそれで良いのではないか?」


「さすが妖精王はんは、えぇことゆうな! まぁ、ウチかてよおわからへんし、そうゆうもんや思っといたら問題あらへん」


「何だかすごく適当な気がするけどぉ、自称女神様がいうんだからぁ、納得するしかないんじゃないかなぁ~」


「自称ちゃうわ! ホンマモンや! そないな事ゆうとったら、耳の穴から手ぇ突っ込んで、奥歯ガタガタ言わせたるで」


「うわぁ~ん、なんかわからないけど怖いよぉ、助けてリュウセイく~ん」



 登場の時のセリフもそうだけど、彩子さんは時々よくわからないことを言うな。一体いつの時代から転移してきたんだろう。


 涙目でしがみついてきたシエナさんの頭を撫でながら、俺はそんなことを考えていた。


彩子の髪型は〝聖子ちゃんカット〟に近いものを想像していただければ。


次回で時系列の総まとめをし、主人公たちに新たな能力が授けられます。

そして、彩子が転移してきた時代も明らかに……

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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