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第245話 お説教

終盤で視点が変わります。


◇◆◇


第243話を加筆修正しています。

話の流れに変化はありませんが、状況説明を明確にしています。

(前書きに修正箇所を乗せてるので、そこだけ確認しても大丈夫な程度の変更)

 暗闇の中から聞こえてきた助けを呼ぶ声に気づき、カリン王女たちが救助に向かってしまう。侍従見習いの二人は大怪我をしてしまったけど、真白の治療で完全に回復している。


 ハグレに襲われていた幼い子供は、王子たちと話し合いをしていた男性の(むすめ)だった。いつまでも帰ってこない父を心配して家の外に出たものの、暗闇の中で迷子になってしまったようだ。


 今はリビングにベッドを置いてタルカとスワラを眠らせているが、カリン王女は二人の手を握ったままそばに寄り添い、離れようとしない。


 もう一匹の存在を見落とした件は、誰にも責任はないとサンザ王子が宣言した。とりあえず明日の昼間に俺たちのパーティーが森へ入り、他にハグレが残っていないか調査する。


 アージンの森で迷子捜索した時もちょっとした騒ぎになったが、こうして集団で現れるのはかなりのレアケースらしい。今回の件も国や冒険者ギルドに報告を上げ、村まで人を派遣してくれるそうだ。



「ん……あれ………ここは?」


「……きがつきましたか、タルカ」


「カリン様、私どうして……あっ!?」



 さっきのことを思い出したんだろう、タルカは自分の腕に手を当てて表情を固くする。しかし、一向に襲ってこない傷みと、傷の残っていない体に気づいたらしく、驚いた顔でカリン王女を見つめた。



「……からだのきずは、すべてなおりましたよ」


「まっ、まさかカリン様が収納している、お薬を使ったのでは!? あれは王家の人間にしか使ってはいけないと……」


「……いいえ、タルカをなおしてくださったのは、マシロ様です」



 以前、真白から霊薬のことを聞いたことがあったが、やっぱり持ってるんだな。


 それに、真白のことを様呼びし始めた。まぁ、再生魔法を見てしまうと仕方ないか。夕方にやった村人の治療は、カリン王女がいない場所だったし、さっきの傷はあれよりかなり酷かった。失った部分まで治せる治癒でないと、元の生活には戻れなかっただろう。


 続いてスワラも目を覚まし、怪我の治療が終わってることや、子供が無事だったことを伝えられる。


 その話が終わったところで、サンザ王子とラメラ王妃が立ち上がった。



「カリン、こちらに来なさい」


「……はい、父上さま」


「今日のお前は間違ったことをした、それはわかっているね?」


「……はい、わたしのせいで、みなさまにごめいわくをおかけしました」


「カリン様をお守りできなかったのは、私たちの責任です」


「お叱りは私たちの方が受けるべきです」


「これは王族として、人の上に立つ者が持つ責務の話だ、君たちは黙っていなさい」


「はっ、はい、申し訳ありません」


「いらぬ差し出口、お許しください」



 サンザ王子がここまでピシャリと言い放つ姿を見るのは初めてだ。

 これが王子としての威厳か……



「どうして私やコンガー、それに外にいる騎士たちに相談しなかったのか、説明しなさい」


「……父上さまはおしごとちゅう、だったからです。

 ……コンガーは父上さまと母上さまの、ちかくにいないといけません。

 ……きしのふたりには、うまをまもる、やくめがありました」


「それで黙って出ていったというのか?」


「……はい、そのとおりです」



 そして今のサンザ王子には、父親としての厳しさも出ていると思う。

 俺には全く足りていない部分だ。


 これまで数は少ないながら、ライムを叱ったことはある。

 しかし、ここまで厳しく問いただすようなことは出来なかった。


 俺がそんなことを考えている間も、カリン王女に状況の説明や判断の理由を求めていく。



「ここは王城ではないから、いつもの常識は通じない。それに危ないから外には出るなと言われていたはずだ。決まり事を破ったあげく、部下を危険に晒すなど、上に立つものとして絶対にやってはいけない。そんな事をすれば、誰もついてこなくなる」


「……父上さまのいうとおりです。

 ……こんかいのことは、すべてわたしのせきにんです」


「今回は優秀な冒険者の方がいたから、誰も失わずに済んだのだ。こんな幸運は二度とない、そう肝に銘じなさい」


「……このようなまねは、にどといたしません」


「だが、小さな子供を守ろうとしたのは立派だった。よくやったね、カリン」


「……はっ、はい……ひっく……ありがとうございます、父上さま」



 カリン王女は、王子と王妃に抱きしめられながら泣いてしまう。相手の言い分や考えを聞き、その上で何が悪かったのか、どうするのが最善かをしっかり説明する。サンザ王子の叱り方はこんな感じだった。


 そして最後に、良かった所を褒めてあげる。サンザ王子は俺より五歳くらい年上だが、本当に立派な父親をしていると思う。これは負けられないな。



「あっちの話は終わったな。タルカ、スワラ、立てるか?」


「はいっ!」


「問題ありません!」


「ならそこに並んで立て」



 今度はコンガーがベッドの近くに行き、侍従見習いの二人をその場に立たせた。



「お前たちの役目はなんだ、言ってみろ」


「カリン様の盾になり、その身をお守りすることです」


「姫様の剣となり、脅威となるものを排除することです」


「それは近衛や騎士団でも出来ることだ。お前たち侍従には、もっと重要な役目がある。なんだと思う」


「身の回りのお世話でしょうか?」


「姫様の手助けをすることでしょうか?」


「常に近くにいる侍従の役目は、主君が間違ったことをしようとした場合、体を張って止めることだ。今日のお前たちは、それが出来たか?」


「……あっ」


「……出来ません、でした」


「それにどうして、お前たちが二人で仕えているかよく考えろ。カリン様が飛び出してしまった場合でも、一人が護衛し、もう一人が報告する。二人一緒に選ばれたのは、それが理由だ」


「おっしゃるとおりです」


「全く気が回りませんでした」


「お前たちはまだ未熟だ、何かあれば誰かを頼れ」


「はい、次は必ず」


「今度は姫様をお止めいたします」


「体を張ってカリン様を守ろうとしたのは立派だった、よくやったな二人とも。さすが俺の後輩だ」


「あっ、ありがとうございます」


「嬉しいです、コンガー様」



 コンガーが抱きしめて頭を撫ではじめると、二人の目からキラリと光るものが流れ落ちた。


 やはりコンガーも上に立つ者としての適性が高い。俺たちと模擬戦をする前は、時々暴走することもあったみたいだけど、それでも近衛隊長を任されていたのは、こうした部分が優れているからだろう。



「お風呂の準備ができてるみたいだから、三人で入ってらっしゃい」



 ラメラ王妃にそう言われ、カリン王女と侍従見習いの二人が脱衣場の方に消える。それを見送ったリビングは、ホッとした空気に包まれた。


 俺たちは仲の良い者、気の合う者が集まり、家族として暮らしている。そのためにどうしても、なあなあで済ませている部分があると思う。


 今回の遠征は俺たちにとっても、いい経験になってるのは間違いない。



「ポーニャは一緒に入らなくていいの?」


「今日は三人だけのほうが……いいと思う」


「なら、リュウセイ君の頭で一緒に休みましょ。今日はかなり頑張って飛んだみたいだし、ここにいると癒やされるわよ」


「いい?」


「あぁ、遠慮なく来てくれ」



 ポーニャがあの場から飛び出してコンガーを呼んでくれなかったら、状況が更に悪化していたかもしれない。今回の件では、間違いなく一番の功労者だ。俺の頭で良かったらゆっくり休んでほしい。




―――――*―――――*―――――




 カリンと侍従見習いの二人が脱衣場で服を脱ぎ、そろってお風呂場に入っていく。旅の間のスキンシップで親密度を大きく上げた三人は、一緒のお風呂に抵抗がなくなっていた。



「旅を続けているのに、毎日お風呂に入れるって不思議」


「お風呂や料理で使う水は、全てコールお姉さまが魔法で作ってるんだって」


「鬼人族って、マナの量は少ない種族なんだよね?」


「生活魔法を使える人でも、自分の飲む水を出すのが精一杯かな」


「……こんなことができるのは、このくにでもお兄ちゃんのパーティーだけ、父上さまはそういってたよ」


「魔法も凄いし料理だってとても美味しい、また一緒に旅ができるといいな」


「種族がいっぱいで驚いたけど、みんな仲良くて優しいもんね」


「……わたしたちも、もっとなかよくなりましょう」



 三人は椅子に座り、お互いの頭を洗い出す。


 そしてタルカの頭をカリンが洗っている時、額に一本だけあるツノに少し強く手があたってしまった。



「あっ!?」


「……ごめんなさい、いたかった?」


「ううん違うの。これが上から落ちてきて、ちょっとびっくりしただけ」



 タルカは自分の足の間に落ちてきたものを掴み、お湯の中で洗い流す。それは小さな円錐形をした、変わった手触りの硬いものだ。



「……タ、タルカのツノがとれてしまいました。

 ……いたくない? きょうのケガが、なおってなかった? ちとかでてない?」


「カリン様、落ち着いて。鬼人族は一生に一度ツノが生え変わるの。これは私が大人になった証拠だから、心配は無用だよ」


「……そうだったの、よかった」



 とれてしまったツノを見ながら、タルカは嬉しそうな顔になった。後でコールお姉さまに報告しよう、きっと祝福してくれる。自分もあんな素敵な女性になれたらいいな、そのようなことを考えていると、頬の緩みはいつまでたっても元に戻らない。



「タルカってば嬉しそうでいいなぁ、私もなにか変化が欲しい……」


「スワラはまだ十一歳なんだから、大人になるのは無理だと思う」


「それはわかってるんだけどぉ……あっ!

 姫様、お願いがあるんだけど」


「……なに? なんでもきくよ」


「私と主従契約して!」



 スワラは誰かと主従契約するのが、小さな頃からの夢だった。コンガーが二人同時に主従契約を結んだと聞き、その思いは更に強くなっている。そして一緒に旅をしたことで、カリンに対する忠誠心が一生離れたくないほど大きくなったのだ。



「……わたしでいいの?」


「姫様じゃないと嫌」


「……それなら、ぎしきのあいだだけでいいから、わたしのことカリンってよんでほしい」


「うん、いいよカリン」


「……ありがとう、じゃあやって」



 二人は簡単に体を流して立ち上がると、生まれたままの姿で向き合い、お互いの体を抱きしめ合う。カリンは耳としっぽを左右の手で触れ、スワラは右手をまだ幼い胸に当てる。



《私の全部をカリンにあげる》



 するとスワラの首元に、薄っすらとリボンのような模様が浮かび上がった。


挿絵(By みてみん)




 こうしてお互いの絆がより深まった夜、タルカは鬼人族の成人を迎え、スワラはカリンとの主従契約を成立させたのだった。


カリン王女たちの成長は、これにて終了。

次回からは主人公たちのイチャコラが開始(笑)

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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