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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第17章 せっかくだから、俺はこのルートを選ぶぜ!
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第231話 ダンジョン攻略開始

誤字報告ありがとうございます!

 翌朝、メイド服と執事服に身を包んだ俺たちが冒険者ギルドに行くと、シンバと治癒師の男性が待っていた。久しぶりに見たが、相変わらずムキムキだ。



「おう、おはようリュウセイ。そいつは緑の疾風亭で着てたっていう服だな、お前も持ってたのか」


「おはようシンバ。これは俺たちパーティーの制服みたいなものだからな」


「なかなか(さま)になってるが、そんな装備で大丈夫か?」


「大丈夫だ、問題ない。俺たちが持ってる軽装備の中では、一番防御力が高いんだ」



 元々三人の精霊王が力を込めてくれているし、今日も一時的に強化してもらうことになっている。国宝級と言われるだけあって、見た目に惑わされてはダメな服だ。



「おはようございます、シンバさん、ディレさん。今日はディレさんも参加してくれるんですか?」


「久しぶりだなマシロ! 今日は治癒師として参加する、俺の筋肉でどんな怪我でも治してやるからな」


「今日はよろしく頼むよ」


「リュウセイも久しぶりだな! ちゃんと鍛えてるか?」



 この人の名前はディレと言うのか、みんな筋肉と呼んでるから名前を知らなかった。ずいぶん久しぶりに会ったが、今日もしゃべる時にピクピク動く大胸筋は絶好調のようだ。どうしてもそっちに目が行って、会話に集中できない。


 何度も会ったことのある真白とライム以外の女性陣は若干引き気味だが、その気持は何となくわかる。マラクスさんも彼のことは苦手らしく、俺の後ろで半分隠れるように立っていた。


 まず間違いなく、もっと体を鍛えて筋肉をつけろと迫られたんだろう。

 誰にでも同じことを言うからな、この人は。



「八階までの道案内は俺たちに任せろ」


「今日はイザーも短剣を使うってよ」


「索敵はソラちゃんに任せてもいいかな?」


(敵意)(危険)(魔力)でいい?」


「えぇ、その三つをお願いするね。私は(生体)を見ておくから」



 ソラとマキさんが感知魔法の役割分担を決め、イザーさんは自分の収納魔法に入れている短剣を並べてチェックしている。どうやらエルフ族としては珍しく、弓より短剣のほうが得意らしい。接近戦では二刀流を使い、中距離は投擲(とうてき)で対処するんだとか。


 三人だけのパーティーを組んでるだけあって、弓の苦手な部分をしっかりフォローできる技術を持っていた。そんな弱点を抱えたまま百年近く冒険者を続けられる訳ないもんな。あたり前のことかもしれないけど、やっぱり上位の冒険者は凄い。



「シンバは腰に刺しとる剣が武器じゃろうが、そっちの筋肉は装備を身に着けんで構わぬのか?」


「筋肉は武器でもあり鎧でもある、そんな無粋なものは不要だ!」


「服が破れそうになってるよー」


「胸が別の生き物のようです」



 俺たちに対して横を向いたディレが上半身だけ九十度回転させ、自分の手首を握りながら大胸筋をビクンビクン動かしている。たしかボディービルのポージングに、こんな格好と同じもの(サイドチェスト)があったな。


 腕にも相当力が入ってるらしく、半袖のシャツが破れそうだ。


 流石にこれはコールやソラもドン引きしてるし、マラクスさんは完全に俺の後ろへ隠れてしまった。体作りのトレーニングは続けていこうと思ってるけど、マッチョにだけは気をつけよう。



「みんな、手続きが終わったからそろそろ出発するよ」


「頑張ってこいよ、シンバ」

「みんな気をつけてね」

「終わったら飲みに行こうぜ」

「また緑の疾風亭で、その格好してくれよー」

「マシロちゃんたちを守る肉壁になるんだぞ、筋肉」



 シェイキアさんの号令で、みんなの声援を受けながら冒険者ギルドを後にする。


 ギルド長とクラリネさんも来てくれてたが、二人とも顔に疲れがにじみ出ていた。やっぱり昨日は寝てないみたいだ。さっさと解決して、いつもの日常に戻ってもらえるよう頑張ろう。



◇◆◇



 新しく出来たダンジョンは街からそう遠くない場所にあり、盛土になった部分から下へ入れるようになっていた。夜の間に突然現れたらしく、前兆なんかは全くなかったそうだ。


 一夜のうちに土地が変形し、ダンジョンの入り口が現れる。外から穴を掘ってもダンジョンに行けないと以前ソラから聞いてるし、まさに異次元へ繋がる扉が開いたという感じだろう。


 入口の横には門番のように二人の男性が立っていて、シェイキアさんが書類を手にしながら確認をとっている。彼女も徹夜してるだろうけど、そんな素振りは全く見せていない。慣れているのか、気合や化粧でごまかしてるのかわからないが、終わったら温泉にでも連れて行ってあげるのが良さそうだ。


 シンバと隠密たちには、ダンジョン内で進路と退路の確保をやってもらう。筋肉は彼らが負傷した際のサポート役で参加する。人数が多くなると守りが困難になるので、未知の魔物がいる八階には入ってこない。


 ハイエルフの三人は道案内と、八階での退路確保を担当してもらう。想定外の事態が発生した時の連絡も彼らの役目だ。



「ヴェルデ、ネロ、二人とも大きくなってくれ」


「ピピーッ!」


「なぁーう!」



 守護獣が大きくなる様子に、入り口に立っていたギルド職員やシンバたちが目を丸くしている。その辺りは後で説明するとして、三倍の強化魔法をかけておこう。



「ネロちゃん、リュウセイ君たちやマラクスのことお願いね」


「にゃう!」


「みんなを守るために頑張ろうね、ヴェルデ」


「ピルルー!」


「じゃぁシェイキアさん、行ってくるよ。地上の方はよろしく頼む」


「危なそうならリュウセイ君の転移魔法で逃げてきてね、その後のことはまた考えればいいんだから」


「わかってる、決して無理はしないよ」



 家で待ってくれている人もいるし、心配してくれている人も大勢いる。そんな人たちを悲しませる真似だけは絶対しない。


 ここでなにか誓いを立てておきたいけど、変なフラグになりそうだからやめておこう。結婚するとか故郷に帰るとか、店を開くなんて言い出すとかなり危険だ。


 装備や手順の最終確認を終え、ダンジョンへと進入した。



◇◆◇



 ダンジョンの中は至って普通の状態で、ここからだと(わず)かな異変も感じられない。打ち合わせの時に見せてもらった地図どおり、分岐や部屋数も少なく初心者向けの作りになっている。



「右の通路ネズミ型、数は一」


「ふんぬぅぅぅぅ、筋肉ぅぅぅ!」



 突然走り出した筋肉が、通路から出てきた魔物を(こぶし)で粉砕した。さっきの言葉を証明するかのごとく、肉体そのものを武器にして戦っている……、というか単純に殴っているだけだ。


 気合を入れてるのか癖なのか知らないけど、攻撃の時も防御の時も筋肉筋肉とうるさい。初級の小さな魔物に、そこまで気合を入れなくてもいいと思うんだが。


 元の世界には“獅子はウサギを捕らえるにも全力を尽くす”という言葉があった、それを体現している感じだろうか。



「あいつ、自分が後衛で参加してるのを忘れてやがる」


「きんにくおにーちゃん、つよいね」


「単身でダンジョンに潜って、中層階くらいなら軽く突破するやつだからな」


「そう言えば筋肉も特別依頼達成の称号を持ってると言ってたけど、あの姿を見てると依頼を拳で解決してそうだ」


「獣人族は強い人が好きだけど、あれはちょっと嫌だなー」


「近くにいると暑苦しくなりそうです」


「まぁ、悪いやつじゃないんだがなぁ……」



 クリムとアズルにここまで言われるんだから、よっぽどだぞ、筋肉。

 というか、ちゃんと名前を教えてもらったのに、すっかり呼び方が筋肉で定着してる。ライムまで筋肉お兄ちゃん呼びだ。あれだけ筋肉と連呼してたら、それも仕方あるまい。



「あいつ一人だけで八階まで行けそうだな」


「あの変な魔物にアイツをぶつけてみようぜ」


「もしかしたら倒しちゃうかもしれないね、筋肉で」


「おぃ筋肉、ちったー俺たちにも戦わせろ。何のために付いてきたかわかりゃしない」


「索敵が優秀すぎて筋肉がうずくのだ、命令しているのは筋肉だから許してくれ」



 脳が筋肉なんじゃなくて、筋肉が脳なのか。

 凄いぞ筋肉、さすがだ筋肉、俺の思考も筋肉で埋め尽くすとは、筋肉には洗脳効果があるのかもしれない。



◇◆◇



 危うく筋肉のことしか考えられなくなりそうだったが、二階に降りてからは多少自重してくれたので、なんとか持ち直した。彼とパーティーを組むのは、なるべく避けるようにしよう。


 昔シェイキアさんの家で働いていたシンバは、一緒に行動している隠密たちとの連携が見事だった。どんな場所でも確実に敵の退路を断ち、一匹たりとも護衛対象に近づけることなく倒している。


 シェイキアさんが太鼓判を押すだけあって、誰かを守りながらの集団戦法には学ぶべき点が多い。


 そうやって階層を進み、七階まで来た所でダンジョンの雰囲気が少し変わった。



「前に来た時と違うな」


「少し冷える気がするぜ」


「王都のダンジョンでもあるまいし、環境が変わるなんてありえないんじゃない?」


「いや、これは少し邪気が漂っているな」


「本当か、エコォウ」


「あぁ、ほんの(わず)かだが間違いない」



 八階にいる未知の魔物が力をつけ、自分の支配領域を広げようとしてる、そんな考えが頭をよぎる。イザーさんたちも同意見のようで、ここから先は慎重に進んでいこうと話し合った。


 どんな性質を持っているにせよ、相手の力が強くなってきているのは確かだろう。なるべく早期に解決を図る、それが一番の近道になるはずだ。



「前方の部屋、イヌかオオカミ型、数は三で横並び。これまでと大きさ強さ違う、変種の可能性ある」


「ちっ……変種が三匹か、どうする?」


「私とクリムさんで一匹引き受けます」


「左側のをやるよー」


「俺とシマで真ん中のやつを釣る、その方が戦いやすいだろ」


「弓で釣るのは任せときな」


「俺たちは右側を囲む、その作戦で行くか」


「「「はいっ!」」」



 どんな特殊能力を持っているかわからないので、三チームに別れて一気に叩くことにした。使い慣れていない人に強化魔法を使うと力を持て余して危ないから、俺たちパーティメンバー以外にはかけられない。しかし、経験や実績が豊富な彼らなら大丈夫だろう。



「筋肉はリュウセイたちの肉壁になれ、ぬかるなよ」


「筋肉に誓って役目を果たそう」


「よし、行くぞ!」



 合同パーティーの総リーダーになるイザーさんの号令で、一斉に部屋の中へ突入を開始。


 シマさんの矢が中央にいた魔物の肩に命中し、それに気を取られている左右の二匹へコールと隠密が迫る。


 獣人族並みの身体能力に強化されたコールが、盾の付いた篭手(こて)をぶち当てターゲットを取り、もう片方は音もなく一気に距離を詰めた隠密たちが取り囲む。


 矢を当てられた真ん中の魔物はシマさんを睨みながら唸り声を上げ、後ろ足に力を込めて一気に飛び込んできた。シマさんが再度放った矢は、うまく首をひねって致命傷を回避される。そのまま距離を詰めてくるが、横からイザーさんが割り込んで二本の短剣を一閃。


 刹那の間に何度も斬りつけられ、体中傷だらけになった魔物は、その輪郭を揺らめかせながら消えていく。短剣のほうが得意というだけあって手数がものすごい。疲れるからあまり使わないというのがよくわかった。あんな動きを何度もしていたら、体のほうがもたないだろう。


 コールがタゲ取りした魔物はクリムの三倍強化ハンマーで潰され、シンバと隠密たちが取り囲んだ魔物も剣や槍で串刺しになって消えていった。


筋肉にもちゃんと名前がありました!(笑)

ちなみに、大胸筋にアンディやフランクみたいな名前はありません。


次回はいよいよ8階に到着。

果たして何が待ち受けているのか、乞うご期待!

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
― 新着の感想 ―
[一言] さらっとエルシャダイネタが…。 つまり、龍青君はイーノックだった・・・? まぁこのパーティーなら心配は要らないですよね! 今回も面白かったです!!
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