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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第16章 ようこそコートヤードへ

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第207話 ディストの提案

 ケーナさんとゆっくり話ができたおかげで、自分がこの世界で出来た家族や友人とどう向き合ってきたのか、そしてこれからどんな関係を作っていきたいのか、しっかり意識することが出来た。


 朝ごはんを食べ終わった後、せっかくケーナさんが休みなので、景色の良い場所に行ってのんびりしたいと相談していたら、ディストからとある場所を提案してもらった。



「竜人族の隠れ里に行ってみないかい?」


「前、力たりないって言ってた、回復したの?」


「聖域のおかげでかなり力が戻ってきてるし、アゴゴ(黄竜)にも協力してもらおうと思うんだ」


「ディストにーちゃん、ほかの竜人族に会える?」


「病気や怪我を癒してる人がいれば会えると思うけど、行ってみないとわからないかな」



 隠れ里といっても誰かが定住しているわけではなく、保養所のような場所になっている。そこには怪我に効くという天然の温泉もあり、ディストにそのことを聞いてから家族旅行の候補地に入れていた。



「温泉があるんですよね、ぜひ行きましょう!」


「相変わらずマシロちゃんは凄い食いつきね」


「そこまでどのようにして行くのじゃ?」


「アゴゴに活性化してもらった地脈の力に、ボクとライムの転移魔法を上乗せすれば、全員一度に運べるよ」


「ライムいっぱいがんばる!」


「負担になるようなら、俺とライムが先行して転移魔法を使ってもいいぞ?」


「リュウセイとライムが同化すると、竜魔法は使えなくなるよね。一人運ぶのも全員一度に運ぶのも使う力は同じだから、みんなで行くほうが楽しいと思うんだ」


「確かに、そうだったな……」



 ライムがディストから授けてもらった五つの魔法は、同化中に使えないのを忘れていた。



「一度行けばリュウセイさんが転移できるようになりますから、いつでも移動できるようになりますね」


「任せてくれコール。温泉のある場所なら、必ず憶えられる自信がある」


「さすが旦那様なのです」


「自信満々ですよ」



 温泉地を憶えられなくて、何のための転移魔法というのか。俺が授かった能力は、このためにあると言ってもいい。



「温泉に入る時の服はどうするのー?」


「リコさんとケーナさんの分はありませんよね」


「大丈夫だよクリムちゃん、アズルちゃん! こんな事もあろうかと、リコちゃんとケーナさんだけでなく、ディスト君の分もちゃんと用意してるから」


「さすが、かーさんだね!」


「マシロお姉ちゃん、どんな服をきるの?」


「ちょっと待ってね、すぐ取ってくるから」



 そういえばパスタ麺を仕入れにシェスチーに行った時、雑貨屋でも色々買い物をしていたな。しかもディストの分まで用意しているとは、さすが真白だ。この先見性と温泉にかける情熱は、見習うべき点が多い。



「みんな温泉好きなのは知ってたけど、マシロとリュウセイの力の入れようが特に凄いね」


「俺と真白が住んでいた国は、温泉が何千ヶ所もあるような場所だったから、思い入れが深いんだ」


「お待たせー、ついでにみんなの湯浴(ゆあ)み着を持ってきたよ」


「前きせてもらった、みずぎみたいだね」


「これを着てお風呂に入るんですか?」


「そうですよ、ケーナさん。もうお兄ちゃんと一緒の温泉に入っても大丈夫ですよね?」


「あっ、はい。リュウセイさんやディストさんなら、一緒に入っても平気です」



 昨日のことがあって俺たち家族との距離が一気に縮まったおかげで、混浴に抵抗が無くなっているみたいだ。そんなタイミングで誘ってもらえたのは、僥倖(ぎょうこう)と言わざるを得ない。



「地脈の力が強い場所だけど、リュウセイに心当たりはあるかい?」


「竜族が来ても目立たない場所で山の中といえば、モジュレと出会った滝はどうだ?」


『あそこなら最適だと思いますわ』


『俺様のいた山もいけるんじゃねぇか?』


『あの場所はエルフの管轄ゆえ、避けたほうが良いかもしれんな』


「われやリュウセイがおれば、文句は言ってこんじゃろ。滝のある場所が転移に不向きなら、行ってみるのじゃ」


「エコォウさんは腰に布を巻けば大丈夫だし、秘湯を目指して出発しようか!」


「「「「「おーーーっ!」」」」」



◇◆◇



 全員で滝のある場所まで転移してきたが、ここなら地脈の力も強いとディストのお墨付きをもらった。ライムはディストから“遠話”と“転移”の竜魔法についてレクチャーを受けている。


 遠話は話す相手を、転移は行きたい場所を、それぞれ思い浮かべて発動しないといけない。ライムは今から行く場所を知らないし、アゴゴと会ったことがないので、今回はディストのサポートが必要だ。



「アゴゴに繋ぐ補助はボクがやるから、ライムは魔法の発動を頼むよ」


「うん、わかった!」



お話ししたい( 遠 話 )



 地脈の枝が伸びているという場所に二人で手を付き、ライムが新しく考えた呪文を唱える。聞こえるのはディストの声だけなので、スマホに向かって話してるのを近くで見ている感じだ。



「急いで来てくれるみたいだから、ちょっとだけ待ってあげてね」


「アゴゴじーちゃん、すごくびっくりしてたよ」


「お母さん、竜っておっきいんだよね?」


「山のような体って聞いたことあるから、ちょっと怖いわね」


「リコは俺が抱っこしようか」


「ありがとう、リュウセイお兄ちゃん」



 さすがにそこまで大きくはないけど、興味と不安が一緒になったようなリコを抱き上げ、アゴゴを出迎えることにした。ケーナさんも近くに寄ってきて、空いている方の腕をキュッと握ってくる。俺たちはすっかり慣れてしまったけど、普通の人が竜族に会うとなったら、やっぱりこんな反応になってしまうのか。



「これでお兄ちゃんとライムちゃんは、全ての竜に会えるんだね」


真竜(しんりゅう)のディストもここにいるし、本当に全ての竜に会うことになったな」


「ほかの竜はいないの?」


「ボクが生み出したのは八体だけだから、他にはいないよ」



 永遠の時を生きられるディスト以外の竜族は、寿命が尽きる時に幼体へ転生する。そうやって世代交代をするので、同じ色の竜が同時に存在することは無いそうだ。


 世代交代の際、それぞれの竜が持つ特徴や基本的な知識は受け継がれ、地脈の淀みを直す役目や他の竜に関する情報は、全て備わった状態で生まれてくる。


 そんな話を聞いていた時、上空から黄色い竜が降下してきた。現在この大陸に八人いる竜族で最高齢になる、九百歳ほどだというアゴゴだ。



『待たせてしまったのぉ』


「こっちこそ急に呼び出してごめんね」


「こんにちは、アゴゴじーちゃん」


『儂の持っとる知識よりえらく縮んどりますが、竜神様で間違いないかのぉ?』


「ちょっと力を使いすぎてね、神子(みこ)であるライムの家族と一緒に暮らすために、しばらくこの姿でいることにしたんだ」


『タムやグンデルから他種族と暮らす竜人族の話は聞いておったが、その幼子(おさなご)が神子であると?』


「地脈源泉につながる転移装置が反応したから、間違いなく当代(とうだい)の神子だよ」


『なればこの大陸に危機が訪れとるということだのぉ』


「ボクもそれに巻き込まれたんだけど、ライムを育ててくれたリュウセイの家族に救われたんだ」


『儂らとて同じだな』


『家族同然に接してくださいますから、今は楽しく暮らしておりますわ』


『色んなもんをいっぺー(一杯)見られて、すげぇ充実してるんだぜ』


「我ら種族の代表者は、みなリュウセイたちに助けられているからな」



 かなり高齢だからだろうか、アゴゴの喋り方は優しげで、口調ものんびりとしている。“昔々ある所に~”みたいな感じで、昔話を語っている姿が似合いそうだ。


 今までの状況説明や自己紹介をしていったが、すっかり馴染んでしまったリコとは対照的に、ケーナさんはずっと緊張しっぱなしだった。ディストとは何度か会っていたら普通に喋れるようになったけど、やっぱり竜の姿はちょっと怖いみたいだ。


 俺の腕にギュッとしがみついてきてるので、どうしてもまろやかな感触を意識してしまう。気を紛らわすために頭を撫でてあげたいが、あいにく今は両手がふさがっているし、ここは素数大先生にご登場願うしかないな。



◇◆◇



 素数の歌は一瞬で終わってしまい、その後はアゴゴの(ウロコ)を数えていた。腰のあたりに少し浮き上がった部分があったから、抜けそうだったら後でもらおう。



「この人数を一度に運びたいんだけど、問題ないかい?」


『儂と竜神様とライム殿がおれば、余裕ですのぉ』


「よろしくおねがいします、アゴゴじーちゃん」


『ふぉっふぉっふぉっ、斯様(かよう)に可愛らしい子供に頼られたとなれば、頑張るしかないのぉ』


「それじゃぁ、みんなで手を繋いで輪になろうか」



 さすが俺と真白の娘だ、最高齢の竜もデレデレにしてしまった。


 アゴゴの両側にライムとディストが並び、その隣から順番に手を繋いでいく。抱っこしていたリコと腕にしがみついていたケーナさんは、そのまま俺の隣に来た。


 アゴゴがみんなを包み込むように羽を大きく広げると、わずかに地鳴りのような音が聞こえる。黄色の竜は統御(とうぎょ)の能力を持っていて地脈を操る技術が一番高いから、この場の力が増大している影響だろう。


 強く握ってきたケーナさんの手を親指で軽く撫で、大丈夫だと伝えておく。



「みんな、いくよ」



遠くに行きたい( 転 移 )



 力担当のアゴゴ、制御担当のディスト、そして発動を担当するライムの呪文で、俺たちの周りに白い光が立ち昇ってくる。これは竜神殿でも体験した現象と同じだ。




 白い光がアゴゴの身長を越えた辺りで奇妙な浮遊感に包まれ、俺たちは全く別の場所に立っていた――


こ・ん・よ・く・し・た・い

シタイから、シタイなら、シタイとき、シタイでしょ

いつやるか? 今でしょ!


という訳で、次は混浴回です(笑)

果たしてどんな温泉が待ち受けているのか?

彼らの能力をフルに生かした温泉三昧の始まり!

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
― 新着の感想 ―
[一言] 待って待って!最重要人物がいませんよ!?
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