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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第15章 異世界!不思議!大発見!

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第194話 古代竜言語

 人化した真竜(しんりゅう)のディストに、この大陸の歴史を色々話してもらった。四人の王たちですら知らないその歴史は興味深く、ついつい夜ふかししてしまったので、いつもより遅く目が覚めてしまったようだ。



「おはよう、リュウセイ」


「おはようディスト、もう起きてたのか」


「元々数年寝なくても大丈夫な体だし、君たちが来るまでほとんど寝ていたから、つい目が覚めてしまったよ」


「体調はどうだ?」


「すこぶる快調さ。きっと君の腕枕のおかげだね、みんなが勧めるだけの効果はあったよ」


「男の腕枕なんて、あまり寝心地がいいとは思えなんだけどな」


「いやいや、これはなかなか(あなど)れないと思うよ。現にライムはリュウセイに抱きついて眠ってるくらいだし、ボクもこうされていると何だか落ち着くからね」



 そう言って肩の辺りに頭を乗せて、甘えるようにグリグリ押し付けてくる姿は、とても(なが)い時を生きてきた竜には見えない。



「俺の体質は真竜の血に、なにか影響でも及ぼしてるのか?」


「う~ん、それはわからないけど、向こう側で寝てるシエナだって気持ちよさそうだから、腕の太さとか弾力とかが丁度いいんじゃないかな」



 昨日は色々な事がありすぎて精神的に疲れたから癒して欲しいと、俺の隣を希望したんだったな。そんなシエナさんの頭を軽く撫でると、少しだけくすぐったそうな顔をしたあと寝返りを打って、胸元にギュッとしがみついてきた。


 今日は古代竜言語(こだい・りゅうげんご)を教えてもらう日だし、万全の体制で挑んでもらえると良いんだが……



「今日は朝のうちに転移装置を調べさせてもらって、午後から王都に戻るってことで構わないか?」


「うん、それでいいよ。

 それにしても、家を聖域にしちゃったなんて、どんな感じなのか楽しみだなぁ」


「二人の家妖精が管理してるから、住心地だけは保証するよ」


「この小屋ですらこんなに快適なんだし、それは心配してないから大丈夫さ」



 さすがに真竜を連れて帰ったら、イコとライザにも驚かれそうだ。二人がどんな反応を示すか、ちょっと楽しみになってきた。



「王都に戻ったら、まずは服を買いに行かないとダメだな」


「この大陸の問題を任せちゃったのもそうなんだけど、君たちにはお世話になりっぱなしだね。何かボクからお返しできるものがあればいいんだけど……」


「それなら、抜けた(ウロコ)があれば譲ってもらえないか?」


「それくらいなら、洞窟に行けばいくつでも拾えるけど、そんなのでいいのかい?」


「売ればお金になるし、持っていくと喜んでくれる人がいるから、一番の報酬だよ」


「洞窟の隅の方に固めて置いてあるから、いくらでも持っていっていいよ」


「ありがとう、嬉しいよ」



 神話として伝わっている竜の鱗を持っていけば、アージンのギルド長も大喜びしてくれるだろう。色々と印象深い人だし、何だかんだでお世話になってるから、小さな鱗があったら個人的にプレゼントするのもいいな。


 こちらを見てニコニコしているディストの頭を撫でながら、俺はそんな事を考えていた。



◇◆◇



 朝ごはんを食べてから、転移装置になっている場所まで移動してきた。鱗は既に回収済みで、大きな物を二つと小さな物を一つ貰ってきた。一枚はプレゼント用で、もう一枚は倉庫に置いておこうと思っている。



「この八本の柱は竜に見立てて設置してるんだけど、地脈の力を貯蔵する役割があるんだ」


「その力が貯まらないとぉ、これは動かないのねぇ~」


「その通りだよ。結構大きな力を使うから、一度利用した後は時間をおかないと動かないのさ」


「近くに地脈の源泉があっても、そんなに時間がかかるのか?」


「あまり効率のいい方法じゃないから溜まる速度は一定だって、作ってくれた人は言ってたよ」



 これを作ったのは大昔にこの世界を訪れた流れ人で、その人物が生涯をかけて取り組んだ研究成果らしい。大陸の生命線とも言える地脈の源泉を、神域として強力な結界で保護したのも同一人物だ。池の近くにある大きな木の下に、結界の(かなめ)が埋まっている。


 もしここが結界に守られていなかったら、大陸を二つ失った地殻変動の時に、もっと甚大な被害が出ていた可能性が高い。逆に、結界があったからこの大陸は沈まずに済んだのではないか、それがディストの予想だった。


 この転移装置は流れ人が陣頭指揮をとり、柱には八人の竜族がそれぞれの力を込め、円形の舞台にはディストの力が込められている。その作業を手伝ったのが竜人族なので、遺跡の伝承として残っていた記録は、歴史的にも正しかった。



「ボクから生まれた竜たちには、それぞれ異なる特徴が受け継がれているんだ。この柱は一本一本、別の竜による力が込められてるから、誰のものかわかるように印として残しているのさ」



 そこに刻まれている文字は、斜めに分割されている左上部分が熟語を表し、右下が色を表している。


 【叡智(え い ち)の黒】:知性や知力に秀でている

 【至妙(しみょう)の赤】:器用でマナを上手に扱える

 【朋友(ほうゆう)の緑】:社交的で他種族とも打ち解けられる

 【敏速(びんそく)の青】:移動速度が優れている

 【統御(とうぎょ)の黄】:地脈を思い通りに制御できる

 【頑健(がんけん)の水】:体が丈夫で持久力がある

 【鋭敏(えいびん)の紫】:地脈の動きを敏感に察知できる

 【感応(かんのう)の白】:感受性が高く言葉以外の意志を感じ取れる


 確かにそれぞれの竜には特徴があって、本人から教えてもらった特技も、ここで聞いたものと同じだ。


 一つの塊になっている模様には複雑な意味が込められているが、その種類はあまり多くないらしい。

 今のように言葉が発達する前の時代なので、意思疎通に必要な単語だけを文字にしている。それを現代の言語に変換しているのが、ディストの説明してくれている内容だ。


 ちなみに発音は、(うな)り声のようにしか聞こえなかった。

 正確に喋ろうと思ったら、竜の姿でないと無理とのことだ。前にヴィオレが喋ってくれた、妖精語みたいなものだな。



「ひとまずこんな感じだけど、参考になったかな?」


「これが解読できただけでも大発見ですよぉ~」


「この柱に刻まれているような普段使わない言葉は、ボクがその場で作っちゃったのもあるし、日常的に利用してた文字は後でちゃんと教えてあげるね」



 と言うか、文字を生み出した本人がここにいた。

 全ての竜の祖先なんだから、よくよく考えれば当たり前のことだな、うん。



◇◆◇



 柱に刻まれた文字と舞台の外周に刻まれていた文字の解説も終わり、ホクホク顔のシエナさんを連れて王都まで戻ってきた。数日後にヴォーセまで戻って、遺跡へ続く森の入口にある管理棟まで行かないといけない。そうしないと遭難届が出てしまうからだ。



「ボクですら地脈を伝ってしか移動できないのに、空間同士をつなげて転移するなんて反則すぎるよ」


「とーさんの魔法だと、ライムやディストにーちゃんがいけない神域にも、てんいできたもんね」


「ほんとにライムのお父さんは凄いよね」


「えっへん」



 ライムも使えるようになった地脈を使った転移は、神域の結界に阻まれてしまうらしい。あの場所にわざわざ転移装置を設置していた理由がそれだった。転移魔法はその壁を超えられる上に連続発動も出来るから、確かに反則と言われても仕方ない。


 しかし、ディストに向かってドヤ顔を決めているライムは可愛い、さすが俺と真白の娘だ。

 こうした自分の娘宣言も、より確かなものとして感じられるようになった。ライムの出自(しゅつじ)がわかって責任は更に重くなったけど、真白と家族がいれば何があっても乗り越えていける。



「もっと早くリュウセイくんたちと知り合ってたらぁ、毎年あんな苦労しなくてすんだのにぃ~」


「俺たちがこの世界に来てまだ二年経ってないんだから、それ以前のことを言われても何も出来ないぞ」


「うぅ~、そうでしたぁぁぁ~」



 シエナさんがこの調子だと、来年からは指名依頼が出されそうな予感がする。国の研究所なんだし、それくらいは簡単に要求可能だろう。

 まぁ、今回の道中はかなり楽しかったから、年に一度と言わず何度受けても構わないけどな。



「もう三人は玄関で待っててくれてるだろうし、中に入ろうか」



 玄関の扉を開けると、予想通りイコとライザが並んで立っていて、足元にはバニラの姿もあった。



「お帰りなさいませなのです、旦那様、皆さま」


「お帰りなさいませですよ、旦那様、皆さま」


「ただいま、イコ、ライザ」


「旦那様は旅行先で、また子供をお作りになったのです?」


「旦那様が長期の旅に出ると、いつも子供を抱っこして帰ってくるですよ」



 セミの街から帰った時と、ほとんど同じことを言われてしまった。だからこんな短時間で、ここまで大きな子供が出来ることはないと、後で小一時間ほど説明したい気分だ。


 そもそも今度は誰との子供なんだ。

 まさかシエナさんと……いや、これ以上はやめよう。

 何も問題ないはずなのに、何かを踏み外しそうな気がする。



「イコおねーちゃん、ライザおねーちゃん、バニラちゃん、ただいま!」


「キュキュー!」


「へー、これはいい場所だね」


「この人はディストといって、全ての竜族と竜人族の祖先にあたる人だ」


「それはまた凄い人とお知り合いになったのです」


「さすが旦那様と皆さまですよ」


「はじめまして、ボクの名前はディスト。消耗した力を回復するために、リュウセイたちに連れてきてもらったんだ、よろしくね」


「ディスト様はどうやって竜を生み出したのです?」


「少し変わった雰囲気ですけど、お姿は人なのですよ」


「今は人化した状態だけど、本当の姿は真竜といって銀色の体を持ってるんだ。

 竜の状態で作った八つの分体が、今この世界にいる竜族なんだよ。そして竜人族は、神様に頼まれたってボクに会いに来た人が、不思議な力を使って生まれたのさ」



 竜人族を生み出した女性がどういった方法を使ったのか、ディストにもわからないそうだ。肉体的な接触といえば、人化状態で手を握っただけらしい。


 古代エルフの里で聞いた創世神話だと流れ人が関与しているみたいだから、俺たちみたいにこの世界にない魔法を持っていた可能性がある。神様の依頼というのは本当かどうかわからないけど、やっていることはまさに神の所業だ。


 このまま立ち話していても仕方ないし、まずはリビングに行ってくつろごう。

 それから買い物も行かないと、いつまでもダブダブのシャツとパンツじゃ可哀想だ。


男に腕枕したっていいよね! ショタだし!!


◎年表

 旧0000年:世界の誕生

 旧XXXX年:様々な種族の誕生

 旧XXXX年:神の遣いという女性による、新人類の誕生

 旧XXXX年:流れ人による地脈源泉結界と転移装置の完成

 新0000年:二つの大陸を海に沈めた大地殻変動(ポールシフト)(文明断絶)

 新XXXX年:リューシエ大陸に少数残っていた鬼族と獣族が絶滅


◇◆◇


次話でこの章も終わりになります。

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
― 新着の感想 ―
[良い点] ほんわかしてて良い [気になる点] ショタか・・・ [一言] 切りますけどここまで楽しかったです
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