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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第15章 異世界!不思議!大発見!

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第187話 万能薬

 生産者の男性に石焼き芋をおすそ分けして作り方を伝えると、その手軽さと美味しさに驚いていた。この世界では煮るレシピしか無かったので、焼いて食べたのは初めてだったそうだ。


 特別な道具が必要ないということもあり、今年から試験的に販売してみるらしい。この街の新しい名物になるかもしれないな。



◇◆◇



 予定より少し遅くなったけど、いよいよ街から出て街道を進み始める。二人の馬も元気に荷台を引っ張り、御者をやっている俺の膝にはライムが座ってごきげんだ。



「馬車のたびは楽しいね、とーさん」


「景色を見ながらのんびり移動できるから、父さんも大好きだ」


「普通はこんなに荷台を広々と使えたりしないんだけどなぁ、それに狭くて固くて揺れるから気持ち悪くなったりするんだよぉ~」


「乗り物酔いになったら、私に言ってちょうだいね」


「ヴィオレちゃんが女神すぎるぅぅぅ~」



 荷台に置いてるのは靴とわずかな雑貨だけだし、床はイコとライザの手によって完璧に掃除され、クッション性の高い敷物で覆われている。荷運びのお礼も兼ねてグレードの高い荷台を貸してもらっているので、居住性に関しては以前の旅よりさらに上質だ。



「坂道になったらまた歩こうねー」


「馬車に乗りっぱなしだと、体が(なま)ってしまいますからね」


「私もヴェルデと一緒に、時々走りに行こうと思います」


「ピルルルルー」


「うぅ~、歩くのやだよぉ~」


「シエナ、小人族の私より体力ない、もっと歩かないとダメ」


「旅の途中で死んじゃうよぉ~」


「疲れた時はリュウセイに肩車してもらうと良いのじゃ」


「お兄ちゃんの肩車も、旅を楽しみむ重要な要素だからね!」


「お姉さんの命はぁ、リュウセイくんの肩車に託すよぉ~」


「肩車もするし馬の背中にも乗せるから、動けなくなるまで安心して歩いてくれ」


「動けなくなる前にお願いしますぅぅぅ~」



 本当に反応がいいな、この人は。この調子で最後まで旅ができるなら、定期的に調査に参加してもいいくらいだ。年に何回も行く羽目になったら、本人は嫌がるかもしれないが……



『ホント、オメーはぐーたらだな。チェレン(紫竜)のやつに匹敵するんじゃねぇか?』


「あの竜はこちらから声をかけないと起きないからな」


『朝起きられぬ辺り、よく似ておるかもしれんな』


『人というのは、そんなに眠っていられる存在ではなかった筈ですものね』


「王たちのお言葉が、心にグザグサ突き刺さってくるぅぅぅ~」



 数日一緒に暮らしてため、四人の王たちにもシエナさんの自堕落ぶりが周知されていた。この旅の間にどれだけ改善するか、できるだけ頑張ってみよう。



◇◆◇



 お昼を食べてしばらく進んだ場所でそれはやってきた、目の前に伸びる坂道だ。勾配はそれほどではないものの、どこまで続いてるかここからだと見通せない。



「よし、みんな降りて歩こうか」


「クリムさん、アズルさん、あそこにある木まで競争してみませんか?」


「望むところだよー」


「お昼を食べて十分な時間が経過しましたし、受けて立ちましょう」


「ライムもさんかするー」


「俺は荷台の回収と馬具の付替えをやるから、誰か合図を頼む」



 進化状態で旅を続けているヴェルデに三倍強化をかけ、馬たちについている革具(ハーネス)を外していく。スタートの合図は真白がやってくれたらしく、四人が土煙を上げながら坂道に駆け出していった。



「うわぁ~、ライムちゃんも速いなぁ~」


「最近リュウセイより速くなった」



 あまりその事を言わないでくれ、ソラ。

 一応、俺にも父親としてのプライドはあるんだ。



「ライムはリュウセイと同化することで、体の動かし方が(うま)くなるようじゃな」


「最近はリュウセイ君と同化する機会が増えたものね」


「人族が竜人族に負けるのは仕方ないと思うんだけどぉ、獣人族より身体能力の高い鬼人族ってぇ、お姉さんの目に不具合が発生したように見えるわぁ~」


「コールには守護獣がついてるし、強化魔法や精霊王の祝福で、かなり底上げされてるからな」


『あんなに結びつきの強い二人ですから、わたくしも祝福を授けた甲斐がありますわ』



 そうやって話しをしている間に、馬具の付替えと荷台の収納も終わったので、そろそろこちらも出発することにしよう。すっかり遠くに行ってしまった四人はゴールに着いたらしく、その場で大きく手を振っている。



「とりあえず俺たちもあそこ目指して進もうか」


「あんな場所まで歩ける気がしないよぉ~」


「弱音を吐くのは、少しでも進んでからにしような」


「私も途中まで歩く、シエナも頑張ろう」


「シエナもソラに負けない程度を目指してみるのじゃ」


「頑張ったらご飯も美味しく食べられますよ」


「うぅ~、マシロちゃんのご飯のために頑張ってみるぅ~」



 この数日ですっかり真白に胃袋を掴まれたから、食べ物で釣るのが一番効果的みたいだ。



「リュウセイ君の近くにいると、私のスキルで疲れにくくなるわよ」


「ソラとシエナさんは俺と手を繋いで歩こう」


「うん、リュウセイと一緒に行く」


「歩くのはゆっくりでお願いしますぅ~」



 真白とスファレが馬を()き、俺は二人の手を取って歩き出す。


 しかし、すぐ訪れた限界はシエナさんの歩調を鈍らせていき、膝に手を当てた状態で止まってしまった。



「まだ半分くらいしか来ていないぞ?」


「はぁはぁ……お姉さん、もうらめぇ~」


「話のできる余裕があるうちはまだ大丈夫だと思うけど、そうだな……真白の料理で好きなものを教えてくれないか?」


「それになんの意味がぁ……はぁはぁ、あるのかわからないけどぉ、カレーパンが美味しかったよぉ~」


「カレーパンを目の前にぶら下げれば、やる気が出ると考えたんだが、やってみるか?」


「お姉さんの事なんだと思ってるんだよぉ、そんなので動けるようになったりしないもん! それにまだお腹なんて空いてないもん!」


「思いっきり反論できるくらい体力が回復したみたいだな、そろそろ先に進もうか」


「うわ~ん、リュウセイくんが容赦なさすぎるぅぅぅ~」



 こうやって休みながら行けば、きっとゴールに辿り着ける。あと半分だし、そこまでは頑張ってもらおう。



◇◆◇



「……お姉さん……はぁはぁ……一生分の体力ぅ……はぁはぁ……使い果たしたよぉ~」


「よく頑張ったな、偉いぞ」


「子供扱いされてもぉ……はぁはぁ……反論する力すら残ってないぃ~」


「シエナおねーちゃん、おつかれさま」


「ライムちゃんのなでなでぇ、すごく癒やされるぅ~」



 長い道のりだった、何度も途中で諦めようと思った。しかし、彼女は見事に成し遂げたのだ。この大きな一歩は、確実にこれからの自信につながる。



「ソラも頑張ったな」


「結構疲れた、もう少しなら行ける」


「この先も坂が続いてるから、今日は無理せずに馬に乗っていこうか」


「うん、そうする」


「ライムも馬に乗っていくか?」


「ソラおねーちゃんと、いっしょに乗ってあるきたい」



 ライムとソラをそれぞれ馬に乗せ、ここからはクリムとアズルが先導してくれることになった。



「あのぉ~、限界突破で虫の息なお姉さんはぁ、どうしたら良いのかなぁ~」


「シエナさんは俺の肩車だな」


「わ~い?」


「どうして疑問形なんだ、俺の肩車に命を預けるんじゃなかったのか?」


「だってぇ、やっぱり肩車なんて子供みたいなんだもん~」


「お兄ちゃんの肩車を体験したら、そんな事は二度と言えなくなりますよ」


「リュウセイさんの肩車は、絶対に体験するべきです」


「マシロちゃんはともかくぅ、コールちゃんまでそんなこと言うなんてぇ、依存性でもあるのぉ~?」



 薬物じゃないんだから、依存性とかやめて欲しい。ともかく日の高いうちに平地までいかないと、今夜泊まるのに苦労してしまう。とっとと肩車して連れて行こう。



◇◆◇



「うわぁ~、これって鬼人族より視線が高いよねぇ~」


「とーさんのかたぐるま楽しい?」


「うん~、みんなが勧めてくれたのわかったぁ、中毒性あるよこれぇ~」



 中毒性まである俺の肩車には、一体どんな成分が含まれてるんだろう。半分くらいは優しさで出来ていて欲しい。



「あるじさまに肩車してもらったら、疲れも吹き飛ぶよねー」


「どんな病気でも治ってしまいます」


「心の病も治りそうじゃな」


「俺の肩車は、いつから万能薬になったんだ?」


「すっごく疲れたけどぉ、こんなご褒美があるならぁ、旅の間も頑張って歩くよぉ~」


「あらあら、本当に万能薬ね」


『効き目は抜群のようだな』


チェレン(紫竜)のやつにも、やってもらいてぇくらいだぜ』


『チェレンさんが乗ると、潰れてしまいますわよ』


「ライムと同化すると、支えられるかもしれんな」


「みんな好き勝手いわないでくれ」


「ぷっ……あはははは」



 俺たちのやり取りを聞いていたシエナさんが、いきなり頭の上で笑い出した。何かがツボにはまったらしく、ヴィオレがちょっと心配するくらい笑い転げている。



「シエナ、大丈夫?」


「うん、あははっ……ごめんねソラちゃん、もう大丈夫だよぉ~」


「ちょっと笑い過ぎじゃないか?」


「だってぇ、リュウセイくんがイジられてるのぉ、すっごく面白かったんだもん~」


「まぁ、楽しんでくれたんなら俺としては文句ないが……」


「みんなと旅ができて本当に良かったぁ、こんなに楽しい現地調査って初めてだよぉ~」



 その後のシエナさんは疲れも忘れたように、俺の肩の上でずっとはしゃいでいた。

 そこまで喜んでもらえるなら、できるだけこんな時間を増やしていこう。


お兄ちゃん(エリクサー)は用法用量を守って正しくお使い下さい。

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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