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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第14章 密林の死闘!地下に沈む魔境の謎を追え!!

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第176話 コンガー

 俺とライムが同化して、近衛隊長コンガーに模擬戦を申し込んだ。少し大人げないと思ったが、大切な家族が負けっぱなしで終わるのは嫌だったからだ。相手もまだまだ戦い足りない感じだったので、いい発散になったんじゃないだろうか。


 そのコンガーを訓練場の壁に激突させて負けを認めさせようとした時、ビブラさんとマリンさんの二人がやってきた。



「ビブラ君、マリンちゃん、あなた達も来たのね」


「近衛の隊長が一般人を無理やり連れ込んで、手合わせしようとしてると連絡を受けてね、詳しく聞くと私たちの知り合いだったから様子を見に来たんだよ」


「誰にも止められないから助けて欲しいって、私たちの所に駆け込んできたの」



 凄腕の侍従長だとか、筆頭乳母だとかシェイキアさんから聞いていたけど、いまだに影響力があるのか、この二人は。



「そんな所で気絶したふりをしてないで、こちらに来なさい」


「……バレてたのか」


「お前がその程度で倒れないことは、この私が一番良く知っている」


「さすがビブラの旦那だな、一発で見破りやがった」



 崩れた瓦礫の下敷きになってるのかと思ったが、どうやら狸寝入りをしていただけのようだ。元気に立ち上がったコンガーの姿を確認して、俺とライムも同化を解除する。



「コンガーさん、ここに来て座りなさい」


「わっ、わかったよ……」


「返事は“はい”と教えたはずですよ」


「はっ、はい!」



 マリンさんの怒った姿も初めて見たが、声が大きくなったりキツイ言い方はしていないのに、伝わってくるプレッシャーはコンガーをも圧倒していた。背後に修羅のようなものが幻視できそうだ。


 二人がシェイキアさんや兵士たちから事情を聞いている間、正座して小さくなっているコンガーは身動き一つしない。一緒に旅をしたり、リコやケーナさんのことでよく会っていた時は、普通の優しい老夫婦という印象しかなかった。


 国王のそばに控えていたり王族を育てるってことは、厳しい面もないと務まらないんだな……



「よく考えて行動しなさいと、私は何度も注意したはずだね?」


「で、でもよぉ……」


「言い訳は見苦しいですよ、あなたが一般人に危害を加えようとしたことは(くつがえ)りません。それになんですか、まだ幼いライムちゃんに勝負を挑むなんて、恥を知りなさい」


「うっ……すまねぇ」


「謝る時は“ごめんなさい”です」


「ご、ごめんなさい」


「その言葉は、彼女たちに言ってあげなさい」



 コンガーは正座したまま体を動かし、土下座の姿勢で頭を下げた。失意の体前屈や五体投地はエルフの里で見たが、土下座の文化もあったようだ。



「今回はつい好奇心を抑えられずにやっちまった、みんなには迷惑かけて本当にすまな……いや、ごめんなさい」


「まぁ、二度とこんな真似をしないでくれると助かるよ。それより、さっき派手にふっとばしたが、怪我はないか?」


「肩のあたりがちょっと痛いが、これくらい数日寝れば治る」


「ちょっと見せてみなさい」



 ビブラさんが軽く触診してくれているが、鎖骨の辺りを触るとズキズキした痛みが強くなるみたいだ。俺も少し頭に血が上っていたので、ちょっとやりすぎてしまった、反省しよう。



「これは骨にヒビが入っているようだね」


「国王を守る大事な体なのに怪我をさせてしまって申し訳ない、こちらで治療させてもらうよ」


「いや、いいんだ、元はと言えば俺が悪いんだし、気にするな」


「骨のヒビくらいでしたらすぐ治りますから、私に治療させて下さい」


「かーさんに任せておけばだいじょうぶだよ、コンガーおにーちゃん」



リジェネレーション( 再 生 )



 二倍強化で発動された治癒魔法で、外から見ただけではわからない骨のヒビや、(すじ)を痛めた部分もあれば治っているはずだ。



「おぉっ!? 肩の痛みも消えて筋肉痛みたいな症状も消えたぞ、凄いなお前たち!」


「骨や筋肉まで癒やす治癒魔法!?」

「女神だ、女神様がいる」

「癒しの女神様だ!」



 人の限界を越えるような動きをしていたし、やっぱり体に負担がかかっていたんだろう。まぁ、これで職務に影響は出ないはずだ。



「気に入った! 俺はまだまだ修行が足りてないのが身にしみてわかった、今日からリュウセイたちの家来になるぞ」


「ちょっと待ってくれ、国王はどうするんだ」


「そんなの誰かに任せておけばいい。それより、クリムとアズルが主従契約を結べた理由もよくわかった。俺もお前と契約したい」


「だめだよー、あるじさまは渡さないよー」


「あなたは王様と主従契約を結ぶべきです」


「お前たちも獣人族なら、強いやつに惹かれるのはわかるだろ、俺にも契約させてくれ」


「私たちはあるじさまが強いから主従契約したんじゃないよー」


「私とクリムちゃんは生まれ変わる前から、ずっと心に秘めてきた想いがあって主従契約できたんです。さっき知り合ったばかりのあなたは、ご主人さまにふさわしくありません」



 以前、御三家の一つは力で取り込めると言っていたけど、本当にそうなってしまいそうだ。国に喧嘩を売るつもりはないから、誰かこの状況をなんとかして欲しい。



「一体なんの騒ぎですか、それに二ヶ所も壁を破壊して、どうしてこんな状況になってるんです」


「げっ、トニック」


「“げっ”とは何ですか、また無茶をしましたね、コンガーさん」


「トニックさんじゃないか。こんなところに来るなんて、どういうことなんだ?」



 訓練場に入ってきた男性は、王都に来る途中で一緒の船に乗った、モニカの父親トニックさんだった。何か書類のようなものを手にしてるけど、この人も国の仕事に関わっているんだろうか。



「君はリュウセイくん、それにライムちゃんや皆さんも」


「こんにちは、モニカちゃんげんき?」


「あぁ、元気だよ。またライムちゃんと会いたいって言ってたから、遊びに来てくれるかい?」


「うん! また遊びにいく」


「さっきの質問の答えだけど、僕は国の予算に係る仕事をしてるんだ」


「御三家には文官の家があったでしょ、トニック君はそこの次期当主候補なんだよ」


「そうだったのか、知らなかったよ」


「すごく優秀な子で、別の街から呼び寄せて王都まで来てもらったんだって」


「シェイキア様にそう言われると、くすぐったいですね」



 今ここには御三家の現当主が二人と次期当主候補が集まっているのか、なんか凄いことになってしまったな。



「トニック君もリュウセイ君たちと知り合いだったんだ」


「王都へ来る途中に、娘が大変お世話になったんです。それに白銀(はくぎん)土地建物商会の関係者と知り合えたり、引越の手伝いをしてもらったり、色々助けてもらったんですよ」


「リ・ュ・ウ・セ・イ・く・ん。

 コンガー君はあなたの家来になりたいって言ってるし、トニック君とも知り合いだし、もちろん私はあなたについていくから、国王やってみない?」


「それだけは勘弁してくれ」



 状況がますます悪化しだした。

 まだこの世界に来てから一年と少し、それに王都に来てから半年ちょっとしか経ってない。そんな短い時間で御三家全てと繋がりを持てるなんて、予想なんて出来ないだろう。


 これから一体どうなってしまうんだ……



◇◆◇



 結局コンガーには俺との主従契約を諦めてもらえたものの、なんというかすっかり懐かれてしまった。絶対家に遊びにいくと言っていたから、来たらちゃんと歓迎しよう。


 クリムとアズルはまだ少し警戒しているが、コールの方は全く気にしていないみたいだ。自分がやられたのと同じ倒し方をしたので、スッキリしたらしい。



「ただいま、みんな」


「おう、よく帰ってきたな!」



 そこにいたのは、私服に着替えてニコニコ顔で立っているコンガーだった。転移魔法は使わずに徒歩で帰ってきたけど、途中で追い抜かれたりはしなかったぞ?


 大通りを避けて路地を使えば見つからずに来ることも出来るが、そもそも仕事はいいのか近衛隊長。



「お帰りなさいませなのです、旦那様、皆さま」


「旦那様の親友(マブダチ)だとおっしゃっていたので、家でお待ちいただいたですよ」


「キュキューイ」


『面白い者と知り合えたな』


『皆さんだけで楽しそうなことをされて、わたくし達もついて行けば良かったですわ』


『国でいっとーつぇー(一番強い)ヤツを倒したんだって? やるじゃねぇか、リュウセイ、ライム』


「立て続けに色々な事があって大変だったな、少し汚れているようだし風呂でも入ってきたらどうだ」



 ただの報告なら行かなくてもいいだろうと、家で留守番をしていた王たちにも出迎えられ、模擬戦に参加したメンバーはお風呂に入ることにした。コールは着替えもしないといけないし、コンガーにも入ってもらったほうがいいだろう。



◇◆◇



 壁に突っ込んでしまったコール、それにクリムとアズルにライムがお風呂に入った後、俺も入らせてもらう。明るいうちに入浴すると、何となく贅沢な気がするのは元日本人だから仕方がない。



「アズルが言っていたとおり、リュウセイは脱ぐと凄いな!」


「コンガーも腕の筋肉が凄いじゃないか」


「剣と(こぶし)で語り合うのが、一番楽しいと思わないか?」


「そういえば、模擬戦でも足技は一切使ってなかったな……」



 男同士ということで俺はコンガーと一緒にお風呂に入っているが、彼の体は上半身が力強く下半身はしなやかだ。この鍛え方が力強いパンチと、脅威のダッシュ力を支えてるのか。



「リュウセイはどうやって体を鍛えてるんだ?」


「体の基礎は水泳で作ったけど、いまは剣を振ったり走り込みをやっってるよ」


「俺みたいに筋肉の付き方が偏ってないのは、まんべんなく鍛えてるからか」


「コンガーは上半身と下半身を、しっかり使い分けてるみたいだな」


「俺は一気に近づいて力で圧倒する、そんな戦い方が大好きだからだ!」



 まだあまり話してないが、コンガーはとても真っ直ぐな考え方をしているのがわかる。いわゆる竹を割ったような性格というんだろうか、今日のことは家でも再度謝罪して、友人になって欲しいと頼まれた。


 いきなり家に来たのも、その日のうちにちゃんと関係改善をしておきたかったからだろう。



「確かにコンガーにはその戦い方が似合ってる気がする」


「だろう! まぁ、お前には圧倒されたけどな」


「あれは竜人族の力を使ってるから、ある意味反則だ」


「その同化ってやつは、お前とライムじゃないと使えないんだろ?」


「他のメンバーとも試してみたけど、同化は出来なかったな」


「だったらそれはお前の力だ、胸を張っていい」


「そういうものか?」


「鍛錬で身につけた力、才能で得た力、運良く掴んだ力、どれも手に入れたヤツのもんだ。たとえ借りもんの力でも、お前にしか使えないんだったら、それを受け入れてやれ。そうじゃないと、その力に失礼だ」


「乱用していい力じゃないと思ってるが、そんなこと言われたのは初めてだよ」


「強すぎる力を持つと自惚(うぬぼ)れたり調子に乗ったりしちまう、今日の俺みたいにな。だがお前は、力の使い方をしっかり見極めてる気がする。俺も今回のことで目がさめた、本当にありがとよ」



 そう言ったコンガーは、腕相撲のような格好で手を差し出してくる。それを握り返した後にお互いうなずき合い、お風呂を出ることにした。


 強大な力に溺れない、それは俺の持つ強化魔法にも言えることだ。

 コンガーの言葉はしっかりと胸に刻んでおこう。


コールやコンガーが突っ込んで破壊した壁ですが、土壁なので割と脆いです。

(壁を支えるための柱や貫といった下地(小舞)が入ってるので、怪我はしてしまいますが……)


次話でこの章が終了になります。

0話の資料集にメインキャラの三倍強化効果、サブキャラの王都にギルド長や三人のハイエルフ、そしてコンガーを追加しています。

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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