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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第14章 密林の死闘!地下に沈む魔境の謎を追え!!

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第171話 砂漠階層

最後の部分で視点が変わります。

 ダンジョン内の初野営から一晩明け、一階しかない沼地の階層を一気に通り抜けると、次の砂漠階層にやってきた。ここは周期的に下へ降りる通路の場所が変化するという、特殊な階層になっている。下へ降りる通路がある遺跡の位置は冒険者ギルドの方で常に把握しているため、ギルド長の案内で一直線に向かう予定だ。



「うわー、暑いねー」


「砂が多いせいか(ほこり)っぽいです」


『俺様に任せときな!』



 エレギーの言葉とともに砂埃を含んだ風がやみ、周囲の温度も幾分下がる。



「エレギーおにーちゃん凄い!」


『おうよ、俺様の得意分野だかんな』


『儂の方からは、砂を巻き込まんようにして、少し歩きやすくしておこう』


「ありがとうバンジオ、助かるよ」


『ダンジョン内は外とは異なる力に満ちておる、この程度なら存分に頼るといい』


『人助けなのですから、遠慮してはいけませんわよ』



 今回は進行速度優先で目的地に向かっているので、精霊王たちの協力はとても助かる。



「足場の悪い場所での戦闘は、我々にお任せ下さい」

「こうした場所での経験は我々の方がありますので、必ずやお役に立ちます」

「皆さまにはお館様の身の安全をお願いしたく存じます」

「このままでは、我らただのお荷物になってしまいますので」


「そうね、あなた達も日頃の成果を発揮して、リュウセイ君たちの負担を減らさないとね」


「こんな足場の悪い場所で魔物と戦ったことありませんから、お願いしますね」


「戦い方の勉強させてもらいます」


「「「「お任せ下さい、マシロ様、コール様」」」」



 真白とコールに声をかけられて、やたら元気に返事をしている隠密四人の気持は、とても良くわかる。この階層を抜けて森に入ると、すぐどこかで野営をしないといけないし、夕飯はこの二人にかかっているからな。



◇◆◇



 砂漠の階といっても、周り全てが砂なわけではない。岩がゴロゴロ落ちている場所もあるし、乾いた土で出来た平地も多数存在する。写真でよく見るラクダがよく似合いそうな砂丘ばかりと思っていたので、地図に地形が書き込まれているのを見て安心した。



「この方向からヘビ型魔物、長くて太さある」


「砂の中に潜って近づいてくる魔物だ、敵を音と振動で感知する。よく見れば位置がわかるから、砂の動きに注意しろ」



 隠密の四人がソラの指差す方向に飛び出し、防具に身を固めた一人が囮役になって孤立する。わざと砂を踏み固めるように歩いているのは、魔物の特性を逆手に取っているんだな。


 ギルド長の情報どおり、不自然に波打つ砂がゆっくり近づいてきた。囮役にあと少しという位置で、急に速度を上げて飛び出した魔物は、細かい鱗が体表を覆っていて、ゲームに出てくるサンドワームを彷彿とさせる。


 囮役に気を取られている魔物へ両側から二刀流の二人が襲いかかり、もう一人は反転して逃げられないように後ろ側へ回り込んだ。四本の短剣がきらめくと、魔物の胴体にいくつも切り傷が付き、その形が揺らいで消えてしまった。



「退路も塞いで確実に仕留める手腕は見事だな」


「魔物との戦闘が得意な隠密を連れてきてるからね」


「あいつらなら階位でもやっていけそうだぞ」


「二刀流もかっこいいなー」


「クリムちゃんは剣が苦手じゃないですか」


「じいちゃんにも向いてないって言われたしねー」


「クリムはハンマー似合ってる、そのままでいい」


「えへへ~、ありがとうソラちゃん、愛してるー」



 俺と一緒にソラを抱きしめ、頬を擦り付けている姿はほっこりする。ここがダンジョンということを忘れてしまいそうだ。


 隠密たちのおかげで安心して進めると喜んでいたら、前方から六人組のパーティーらしき人物が近づいてきていると、ソラの感知魔法に反応があった。


 丘陵地(きゅうりょうち)を縫うように進んでいくと、前方から来た六人組のパーティーが、こちらに気づいて手を振ってくれる。砂を避けるためのローブを着込んでいるのではっきりわからないけど、人族四人と獣人族二人のパーティーのようだ。



「ギルド長じゃないか、こんな場所で何してるんだ?」


「オレたちはこの下にある森の調査に来た」


「なるほど、それで流れ人のパーティーと一緒ってわけか」


「お前らこそどうしたんだ、もう地上に戻るのか?」


「運悪くこの先に魔物の群れがいてな、数日経てばバラけると思うんだが、時間も惜しいし迂回して先に進むことにした」


「この階層で群れるってのは牛型の魔物だな」


「目視で百匹以上いたから手がつけられん、お前たちも迂回するかしばらく待った方がいいぞ」



 六人組のパーティーは古代エルフが二人もいる俺たちにあまり近づかないよう、離れた場所からそう言って別の方向に進んでいった。ギルド長によると彼らは階位の真ん中に当たる、紫階(むらさきのかい)で活動しているそうだ。


 さすが上位ランクだけあって、マナーや気遣いが徹底している。



「少し時間は食うが、オレたちも迂回するか?」


「使ってみたい武器があるから、力技で突破する手段に挑戦してみようと思う」


「リュウセイとライムで蹴散らすのじゃな」


「はやくエルフの人を助けてあげたいから、ライムがんばる」



 迂回ルートに渓谷があって、かなり遠回りになるらしいから、直進コースを選ぶことにした。ライムの同化魔法で魔物と戦うのは、森の中でハグレを倒した時以来だ。今度は武器もあるし障害物のない場所なので、派手に暴れても大丈夫だろう。そう考えながら先へと進んでいった。



◇◆◇



 しばらく進んでいくと、ソラの感知魔法でも数が把握できないほどの反応があった。湾曲しながら伸びている二本のツノと黒い体は、テレビで見た群れで大移動をする動物とよく似ている。



「お兄ちゃん、ライムちゃん、大丈夫?」


「近くにいる敵対者に真っ直ぐ向かってくる魔物だし、集団で襲ってくることはないから、一つ一つ潰していけば大丈夫だ」


「無理はしないようにするよ、かーさん」


「アイツラは反応も鈍いし直進しかできない魔物だが、頭を振りながら襲ってくるツノの攻撃だけは気をつけろ」



 近くにある高台に登って下を見てみると、ソラの感知した通りだった。団子状に固まっているわけでなく、いくつかのグループで隊列を組んでゆっくり移動している。その方向は下階へ降りる遺跡の方に伸びているから、ここで倒しておかないと迂回した先で鉢合わせなんてことになりかねない。



「ここで倒しておくほうが良さそうだから、群れの端から先頭に向かって討伐していくよ」


「あるじさま、ライムちゃん、頑張ってねー」


「この場所は私たちで必ずお守りします」


「リュウセイさん、ライムちゃん、よろしくお願いします」


「ピルルルー」


「二人は大陸最強、絶対負けない」


「親子の絆を見せるときなのじゃ」


「私がいっぱい癒やしてあげるから、ちゃんと帰ってくるのよ」



 四人の王やシェイキアさんたちにも励ましの言葉をもらい、ライムと同化してピャチで手に入れた大剣を握る。庭で何度かやっている練習の成果が出て、軽く振った太刀筋は以前よりも随分安定するようになった。



『それじゃぁ行ってくる』

『行ってきます!』



 高台を一気に駆け下り群れの端にいる魔物に剣を振るが、何の抵抗もなくその体が二つに分かれて、一瞬で形が揺らいで消えてしまう。下に落ちた黒い魔晶を無視して、次のターゲットを定めて剣を振る。


 ハグレと戦った時はキックとパンチだったので、倒すまでに時間がかかってしまったけど、武器があると戦闘時間も一瞬でかなり楽だ。これをくれたフェイザさんには、改めてお礼に行こう。



『これなら時間もかからずに全部倒せそうだ』

『前より動くの楽になってるよ、とーさん』

『服のおかげもあるだろうし、庭でいっぱい練習を頑張ったからだな』

『練習でとーさんとライムの絆が深くなったんだね』



 今日は砂漠の階に入る予定だったので全員普通の服を着ていたが、魔物の群れに突っ込む俺とライムだけ着替えている。体が軽く感じるのは精霊王たちの貸してくれた力と、何度も同化を繰り返して慣れてきた部分もあるんだろう。



『よし、次の塊に突っ込むぞ』

『うん!』



 一番後ろにいた小さなグループを殲滅し終え、前方に見える少し大きな集団に突撃する。剣を横薙ぎに振るって固まっていた数体をまとめて斬ると、魔物たちは一斉に距離をとって端から順番に突進してくる。


 味方同士でぶつからないように、こういった攻撃の仕方をするんだろうが、こちらとしては乱戦にならないのでありがたい。時間差で突っ込んでくる魔物を斬り伏せ、時にはいなしながらその数を徐々に減らしていった。




―――――*―――――*―――――




 高台にいるメンバーは、ライムと同化した龍青が自分の背丈と変わらない大剣で戦う姿を、食い入るように見つめていた。庭で素振りをしている姿は何度も見たが、ああして思いっきり振り回して攻撃しているのは、初めてのことだからだ。



「ありゃとんでもないな、お前らが二人だけで送り出した意味がわかった」


「騎士団くらいなら、あの二人で制圧できちゃうね」


「あるじさまはそんな事しないけど、狭い場所だと無理じゃないかなー」


「剣が大きすぎて、街や建物の中だと全力で振り回せませんしね」



 群れの中にある塊に突っ込んで剣を振ると数体の魔物が一度に倒れ、次から次へ突進してくる魔物を危なげなく斬り払っていく。次第に剣の扱いに慣れてきたのか、独楽(こま)のように回転しながら魔物の中に突っ込んでいく姿も見えた。



「マシロ、マナ大丈夫?」


「うん、フィド(白竜)さんのおかげで回復も早くなってるから、今の殲滅速度なら十分余裕があるよ」


「あの状態ってのは、そんなにマナをバカ食いするのか?」


「ライムちゃんの持ってるマナだけだと、二つ目の集団を倒し終えた辺りで切れていますね」


「破格の強さを手に入れるって、やっぱりそれ相応の対価が必要ってことなのね」


「もう、お前ら黒階(くろのかい)でいいんじゃないか? 俺が推奨しといてやろうか」


「国の依頼に忙殺されて、気ままに旅ができんようになると困るのじゃ」


「出来て一年くらいのパーティーが、階位の一番上に昇格って問題あるんじゃないでしょうか……」



 コールの冷静なツッコミに、ギルド長のトロボは渋い顔をする。冒険者ギルドとしては、優秀な人材の活躍できる場が増えることは好ましい。


 しかし、経験不足から来る弱い部分があるのも確かだ。ダンジョン内でも戦術指南をしながら進んでいて、戦い方や隊形の組み方といった細かい部分まで劇的に良くなった。それだけの伸びしろがあるということは、まだまだ学ぶべきことが多い時期という証でもある。



「この子たちには自由に動いてもらうほうがいいわよ、トロボ君。この国どころか大陸の歴史を次々塗り替えてるし、ギルドが縛ったりすると世界の損失になっちゃうよ」


「シェイキア様がそこまで言うのか……」



 ギルドに大きな影響力を持つシェイキアにそう言われると、トロボも(うなず)くしかなかった。今の王国が誕生して以来、影から支え続けてきた家の当主がそこまで入れ込んでいる人材を、下部組織の冒険者ギルドが自由にして良い訳はない。その辺りの立場は、トロボもしっかりと(わきま)えている。



「お兄ちゃんは目の前で困ってる人をほっとけないから、そんな事があった時に声をかけてもらえれば、協力は惜しみませんよ」


「私や霊獣のバニラちゃんを救ってくれたように、この家族は誰かの笑顔を守ることなら種族とか立場なんて関係なく、一生懸命になれる人ばかりなの。だから今のままでも心配ないわ」



 妖精王や精霊王たちもリコとその母親を救った出来事を、かなり高く評価していた。これまで全く接点のなかった二人にあそこまで献身的になれるというのは、マクロ(包括的)な視点しか持っていなかった自分たちには未知の行為だったからだ。


 そしてヴィオレと同じようなことをトロボに伝え、残り少なくなった魔物を討伐する龍青とライムを見守り続けた。




 龍青が全ての魔物を倒し終え戻ってきた頃、冒険者ギルドの代表としてこのパーティーをできるだけ援助しよう、トロボはそう決意したのだった。


集団で移動する魔物のイメージは、ヌーっぽい動物。


四人の王たちがやたら協力的なのは、リコとケーナの件が大きく影響していたからでした。

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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