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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第14章 密林の死闘!地下に沈む魔境の謎を追え!!

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第170話 ダンジョン内で初野営

 二層目の迷路階層を抜けると、今度は沼の多い場所に出た。草や低木が所々生えているくらいで、見通しはかなりいい。小高い丘や湿地のようになった部分もあって、空が無いことを除けば地上にいるような錯覚すら覚える。



「今夜はここで野営しよっか。今から先に向かっても、中途半端な場所までしか行けないからね」


『水の近い場所でしたら、わたくしが結界を張って差しあげますわ』


「この辺りに野営の設備を出せそうな場所はどこだ?」


「少し遠いがこの辺りまで行くと、地面も平で乾いているし近くに水もある。正規の経路から外れているから他の冒険者もあまり来ないし、お前らにはピッタリの場所だ」



 この階層から、フロアの広さが上層より大きくなる。次の階に下りる場所はかなり遠く、シェイキアさんから野営の指示が出された。モジュレの力を頼ることになるが、それを含めた判断だろう。



「ここで近接戦すると服とか汚れちゃいそうだから、私の飛翔魔法で倒すことにするねー」


「われが狙いをつけやすいように、麻痺を付与するのじゃ」


「ありがとー、スファレちゃん」


「その先ワニ型いる、噛みつき注意」


「われにお任せなのじゃ」



 浅い水場に口が長く手足の短い魔物がいる、尻尾もかなり太くて長いので武器になりそうな感じだ。まだこちらには気づいておらず、通りかかる獲物を狙っているのか、その場から動かない。


 スファレが永続状態の麻痺をかけクリムが石の弾丸を飛ばすと、魔物の体が揺らいで消えていった。



「あー、白い魔晶落としたよー」


「ホントですね。でもあそこまで取りに行くと濡れてしまいます」


「それは俺に任せてくれ」



 召喚魔法を唱えると、水の中に落ちていた魔晶が手元に出現する。これがあれば一切濡れずに魔晶の回収が可能だ。



「お前ら無茶苦茶すぎる。今日一日で、これまでの常識がことごとく崩れたぞ」


「この階層って濡れたり汚れたりするから、冒険者に人気ないのよね。それをこの場から動かずに倒して回収なんて、反則すぎるわっ」


「リュウセイの魔法で、行方不明者は召喚できんのか?」


「この魔法は俺が召喚対象の存在する場所や、形を知らないと使えないんだ。それに人に魔法を使うと犯罪行為になりそうだし、安全性が未知数だから出来れば使いたくない」


「なるほどな、見たことのない者や、どこにいるかわからん者には使えんのか」



 破格の性能ではあるけど、何でもかんでも呼び出せないというのは大きな制約だ。仮にもしそんな事ができれば、世の中に存在するあらゆるモノを盗み放題になってしまう。


 そんな疑いをかけられるのは嫌だから、召喚魔法は今回のように信頼できる人の前でしか、見せないように決めている。



「まぁ、リュウセイ君ならこれを犯罪行為に使わないってわかってるから、安心してね」


「ありがとう、シェイキアさん。その信頼を裏切らないようにするよ」


「そんないい子のリュウセイ君には、私を抱っこする権利を差しあげます。昼間我慢した分、ベッドの上でいっぱい甘えさせてね!」


「抜け駆けはいかんのじゃ、シェイキア。われもずっと我慢しておったのじゃ」


「スファレちゃんは毎日抱っこしてもらってるんだから、一日くらい譲ってよー」


「ダメじゃダメじゃ。われはリュウセイに抱っこしてもらわんと、眠れん体になってしまったのじゃ」


「とーさん、ライムも抱っこしてほしい」


「もちろん抱っこするから安心してくれ。みんなも順番だからな」


「わーい!」「わかったのじゃ」「は~い」


「二人の古代エルフ族を前にして、全く変わらない態度を貫くとは、金剛鋼を超える精神力」

「それに、お館様に意見できる豪胆さは、まさに神の領域」

「彼がどうやってその力を手に入れたのか、俺は知りたい」

「異世界というのは、そんなに過酷な環境なのか……」


「「「「流れ人、怖い」」」」



 隠密の四人が、変な方向に盛り上がり始めた。

 この世界より(せわ)しい場所ではあったけど、日本に関していえば平和な国だったからな。変な誤解は程々にしておいて欲しい。



◇◆◇



 ギルド長が教えてくれた場所は少し奥まったところにあり、ダンジョンの壁に近い部分だった。ここなら人目にもつきにくいし、壁を背にすれば安全性も高まる。


 野営小屋や日除け小屋を収納から取り出すと、隠密たちから歓声が上がる。昼間の作り置きも好評だったので、夕飯も期待してくれているんだろう。四人は初めて会った人ばかりなので、この依頼の間は真白の料理を存分に堪能してほしい。



「シェスチーの麺とチェトレの魚介類で作ったシーフードパスタに、エルフ野菜たっぷりのスープだよ」


「「「「おぉぉぉぉーっ!」」」」


「相変わらずあなた達は、食べることに関して妥協しないね」


「オレたち今ダンジョンにいるんだよな?」


「トロボ君、考えたら負けだよ」


「王都でも魚介類は、なかなか口にできないんだがなぁ……」



 王都も海に面しているが、魚の取れる場所がチェトレより圧倒的に少なく、需要をまかないきれていない。それに、新鮮なものは上流階級や大口の仕入先が優先されてしまうから、市場にあまり流通しないのが現状だ。



「マシロちゃんの作る麺料理、大好きなんだー」


「毎回違ったものを作ってくれるので、飽きることがありません」


「今日のも凄くおいしいよ、かーさん」


「里でとれた野菜をここまで美味しく仕上げるとは、さすがマシロなのじゃ」


「野菜の旨みが口の中で踊っている、エルフ野菜は調理されても生きているというのか」

「このスープをずっと口の中に入れておきたい、むしろ自分がこの中に飛び込んでしまいたい」

「今まで食べていた野菜とは一体何だったのか、永遠に解けない謎がここに凝縮されているようだ」

「この野菜は古代エルフ族の味! お館様を味わい尽くせるなど、最高の贅沢です」



 野菜スープは隠密たちにも好評だが、それだけだとお腹が空くしパスタもちゃんと食べてくれ。

 それに、一番端に座ってる人は想定外の美味しさに口が滑ったのか、セクハラっぽい発言になっている。シェイキアさんに思いっきり睨まれているし、後でお仕置きとかされないといいな……



「シェスチーの麺、どんな食材にも合う、すごく不思議」


「鳥の骨で作ったスープを使った麺料理も美味しかったですね」


「あれは時間と手間がかかるけど、何度でも食べたくなる味だったな」


「「「「……ごくりっ」」」」


「あなた達、あまり変なこと考えちゃダメよ?」


「「「「・・・・・」」」」



 隠密の四人は一斉に下を向いて、黙々とシーフードパスタを食べ始めた。口にするたび幸せそうな表情になり、お代わりまで頼んでいたので、かなり気に入ってくれたんだろう。



「あなたもアイスクリーム食べる?」


「アイスクリームなら私も食べられる、少しいただこう」



 ヴィオレの熱心な勧めで、エコォウもアイスを口にするようになった。彼は味よりも、食べた時に感じる喉越(のどご)しを気に入っているらしい。


 美味しい料理と結界の安心感で、初めてダンジョンで迎える野営の食事は、ワイワイ盛り上がりながら終えることが出来た。



◇◆◇



 コールの作ってくれた照明魔法が()()野営小屋の中を照らし、横長の部屋を隅々まで明るくしてくれている。ギルド長と他の四人は、収納魔法持ちの隠密が用意した小屋で眠ることになり、そちらにもコールの照明魔法を一つ発動させていた。


 四並列になった時に、水を出しながら洗浄して着火も同時にやることなんてまず無いと、照明魔法を同時に出す実験をしたら出来てしまった、新しい生活魔法の使い方だ。



「コールちゃんが有能すぎる、重複と並列合わせて四つなんて、さすが魔神ね!」


「魔神はやめてやってくれ、コールが落ち込んでしまう」


「うにゅー、ごめんね、コールちゃん」



 軽いオシオキのつもりで、シェイキアさんの頬をプニプニ突くと、変な声を出しながら謝ってくれる。しかし、この人のほっぺたは無茶苦茶柔らかいな。いつまでも突き続けたくなる……



「リュウセイさんの強化魔法のおかげですから、私が凄いわけじゃないんですよ」


「発動はリュウセイ君のおかげかも知れないけど、コールちゃんって三つの照明魔法を別々に制御してるよね?」


「はい、動かしたり消したりは、それぞれ個別にできますね」


「普通はそんな事できないんだよ。国の上級魔法使いにも重複発動できる人が数人いたんだけど、動かしたり消したりする時は全部一緒になっちゃうの」


「それが出来るのも強化魔法のおかげでしょうか?」


「個別制御できた人がいるって記録も残ってるから、これはコールちゃんの力と考えるのが妥当じゃないかな」



 魔法枠の数や使いこなす技量といい、コールはやっぱり凄いな。俺の隣にちょこんと座り、嬉しそうにこちらを見上げてきたので、頭とツノをそっと撫でる。なんか、腰の辺りでブンブン揺れるしっぽが幻視できそうな喜びっぷりだ。



「さすがコールちゃんですにゃー」


「魔法に関してはー、コールさんの右に出る者は存在しないですにゃんー」


「リュウセイ君、リュウセイ君……」


「どうしたんだ? シェイキアさん」


「この可愛い生き物、お持ち帰りしたいんだけど!」



 やっぱりそう来たか。

 猫じゃらしと(たわむ)れる猫人族は、人のテイクアウト意欲を大きく刺激する存在のようだ。



◇◆◇



「ところでシェイキアよ」


「どうしたのスファレちゃん」


「いま探しておるエルフは、どこの里の者なのじゃ?」


「中央大森林にある里から出てきた、ハイエルフの子たちだよ」


「シェイキアおねーちゃん、ハイエルフってどんな人?」


「ハイエルフってね七百歳くらいまで生きられて、背の高い人が多いんだ――」



 俺も詳しい話は初めて聞いたが、ハイエルフは身長が人族より高めで寿命は六~七百年ある。普通のエルフは寿命が四~五百年で身長は人族と同じくらい、そして古代エルフと合わせた三つの(しゅ)が存在する。


 他種族との交易で、その姿を見ることが比較的多い普通のエルフ。冒険者や研究員になったり、少し変わった分野で活動する人が少数いるハイエルフ。昔ながらの暮らしを守り続け、閉鎖的な生活を続けている古代エルフ。それぞれの種には、そんな特徴がある。


 全てのエルフ族に共通するのは、他種族の異性を引きつける容姿だ。そのため、冒険者になってもパーティーは同族同士でしか作らない。


 俺たちがスファレと一緒に活動を開始するまで、他の種族とパーティーを組んだ例は、階位に一組のみ存在したそうだ。人族とハイエルフと鬼人族が集まって組まれたパーティーで、メンバーは男性だけらしい。



「一口にエルフ族って言っても、色々違いがあるんですね」


「そうなんだよ、マシロちゃん。体格も違うし文化も違うんだけど、エルフ同士は結構仲がいいんだ」


「違う種の結婚、本でもあまり出てこない、仲がいいのにどうして?」


「ソラちゃんの読んでる本って、エルフの書いたものが少ないから伝わってないだけで、エルフとハイエルフは結婚する子がわりと多いよ」



 種族同士で仲が良くても、やはり古代エルフは結婚に関しても保守的で、血縁を重んじていたようだ。里の祭りに参加してみた限り、閉鎖的な生活を続けながらでも十分栄えていたし、どちらが正しいとか優れているとは言えないだろうな。


 抱いていたライムがいつの間にか寝てしまっていたので、その日はおしゃべりを切り上げて眠ることにした。


C++の戦闘力以外は控えめなコールですが、スペックは無茶苦茶高いです(笑)


エルフとハイエルフが子供を作ると、どちらかの血が必ず現れます。この世界だと、同じ属でもハーフは生まれません。

(属が変わると子供は出来ない)


ヒト科-エルフ属-エルフ種

        Lハイエルフ種

        L古代エルフ種


みたいな分類。

ちなみに、獣人族(属)も同様です。

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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