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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第14章 密林の死闘!地下に沈む魔境の謎を追え!!
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第164話 それぞれの道

新しい章の開始です。

章題は某探検隊風に(笑)


◇◆◇


この章から更新頻度が落ちてしまいます。

年度替わりに向けてのゴタゴタが落ち着いたら、またペースを戻せると思いますが、隔日や数日おきになる可能性がありますので、ご了承下さいませ。

 リコやケーナさんと暮らす生活は楽しく、あっという間に日々が過ぎていった。


 ケーナさんは王都に引っ越すと決意してくれたが、仕事を探して自分たちで生活していくと決め、自活に向けてビブラさんやマリンさんの協力を得ながら頑張った。もちろん、裏ではシェイキアさんが協力してくれている。



 母親が王族だったこともあり、ケーナさんは読み書き計算が得意だったので、就職先は老夫婦が経営する小さなお店に決まった。リコもそこでお手伝いをするらしく、あの明るい子なら看板娘になれるだろう。


 面接の時に道案内も兼ねて真白と一緒に付き添ったが、以前王都へ来る時に船酔いで介抱した人が会長を務める商会傘下の店で、何となくシェイキアさんの影がちらついたのは秘密だ。


 俺たちのことを覚えてくれていた会長は、筆記試験と簡単な面接だけで即座に採用を決めてくれたうえ、支度金まで出してくれている。



 住む場所はトラペトさんの白銀(はくぎん)土地建物商会にお願いし、アパートのような家を借りられることになった。保証人はビブラさんが務め、引っ越しはセミの街でケーナさんが住んでいた集合住宅にあったものを、俺が全て収納して新しい家まで運んでいる。


 足りない家財道具はシェイキアさんを通じて、格安の中古品を紹介してもらった。中古と言っても俺たちの家にあったような、引越し先に運べず手放したようなものばかりで、品質はものすごく高い。明らかに値段不相応だったのは、お察しだろう。



 家族同然に暮らしていた人と別れるのは寂しいが、同じ王都で子供の足でも行き来できる距離にあるアパートだから、会いに行くのは容易い。二人の新しい門出を盛大に祝い、俺たちは今までと同じ日常生活に戻っていった――




―――――・―――――・―――――




 その日リビングでくつろいでいると、頭の上にいたヴェルデが俺の左手をつつきだした。以前こんな事があったのはクリムとアズルに出会った村で、その時に強化魔法が二倍に変化している。



アビリティー( 能 力 )オープン(開示)



 自分の左手に浮かび上がった魔法の一覧が[収納|色彩強化×3|魔法枠制御]に変化していた。あれからだいぶ時間が経っているので、もうこれ以上強くならないと思っていたが、三倍強化にパワーアップしている。



「リュウセイさん、ヴェルデがそうしてるってことは、魔法に変化があったんですか?」


「あぁ、強化魔法が三倍になってる」


「ふぉぉぉぉー、さすが流れ人のリュウセイは凄い」


「今度はどんな変化をするのじゃ?」


「ちょっと待ってくれ」



 新しい呪文が必要なのは確実だから、奇をてらわずにスタンダードにコマンドワードを選ぶ。



トリプル(3倍)カラー(色彩)ブースト(強化)



 すると“収納”だった紫の魔法が“空間[収納|縮地|転移|召喚]”に変化する。空間魔法で転移の更に上位は何になるのか予想できなかったけど、別の場所から呼び寄せる召喚なのはちょっと納得だ。


 空間を分断してどんな物体でも切ってしまう次元断や、あらゆる物を消し去ってしまう空間消滅みたいに危険な魔法じゃなくて良かった。



「何か呼べるんだよね、お兄ちゃん」


「どんなもの呼べるの? とーさん」


「ちょっと試してみようか」



 まずは危険のないもので、壊れたり無くなったりしても大丈夫なものがいいだろう。物置部屋においてある様々なものを思い浮かべながら、そのうちの一つに決めて呪文を唱える。



サモン(召喚)・湯の花》



 すると、倉庫の棚に置いていた白い塊が、リビングのテーブルに現れた。形や大きさも元のままだし、どこかが破損したりひび割れした様子もない。



「これは凄いのです!」


「忘れ物をしても、戻らなくて大丈夫になるですよ」


「相変わらずあなたの魔法って、でたらめな性能ね」


「ねぇねぇ、それって人も呼べるのー?」


「急に知らない場所につれてこられると、ちょっと怖いですね」


「誰かを召喚するのは危ないし、今はやめておくよ」



 この魔法を生きている人に使うのは危なすぎる、詳細な情報や安全性が確認できるまでは、控えておくべきだろう。



「次は私を強化してもらっていい?」


「真白の魔法は一番わかり易いだろうし、やってみようか」



 俺の右手と真白の左手を重ねて軽く握ると、嬉しそうな笑みを浮かべてくれる。この世界に来てからしょっちゅう腕を組んだり抱っこしたりしているが、こうして俺の方から手を取りに行くといつも喜んでくれるのが可愛い。


 呪文を唱えた後に表示された真白の魔法は[治癒+浄化+再生+蘇生]へと変化する。再生と同じようにタイムリミットはあると思うが、とんでもない効果が現れてしまった。



「これはあまり使いたくないね」


「万が一の保険にはなると思うが、それが必要になるような冒険は絶対に避けるべきだな」


「だれかが危ないめにあうの、ライムぜったいにいや」


「じゃが蘇生魔法が使えるとは、(いにしえ)の賢者と同じなのじゃ」


「英雄譚にも聖女でてくる、マシロにピッタリ」


「次は私たちもやってー」


「私もお願いします、ご主人さま」



 二人に三倍強化をかけると、クリムは[具現(耐性無視)【土】|飛翔(耐性無視)【土】]に、アズルは[障壁[物理](反射)【水】|障壁[魔法](反射)【水】|障壁[状態異常](反射)【水】]へ変化した。



「これって、どんな敵にも攻撃か効くってことー?」


「強い敵、耐性持ったの多い、それ無視できるの凄く有効」


「私の反射は、攻撃をそのまま相手に返すんでしょうね」


「状態異常攻撃を、そっくり相手に返すとか面白そうなのじゃ」


「次はヴェルデにお願いしてもいいですか?」


「ピピーッ」



 俺の右手に移動してきたヴェルデに強化魔法をかけると、[身体補助(支援)【全】]に変化する。今までは“支援”の部分が“強化”だったが、あまりに過剰な力は鬼人族の肉体でも耐えられなくなりそうだから、いい方向に強化されたと思う。



「支援ってヴェルデが助けてくれるの?」


「ピピー?」


「俺とライムが同化した時は、普段以上の動きができるんだ。それと同じで、強化された補助魔法の力を使いこなせるように、体の動きを援助(アシスト)してくれるんだと思う」


「魔法を使ってもらってもいい?」


「ピピピーッ!」



 ヴェルデに身体補助魔法をかけてもらったコールが、席を立って暖炉の前にある絨毯の上で軽く体を動かし始める。柔軟体操みたいな動きではよくわからないが、体のキレみたいなものは良くなってる気がする。



「体が羽のように軽くなって、頭の中で思い描いた通りの動きができます! ちょっと外に出て思いっきり体を動かしてきます!!」


「あっ、コールちゃん私も行くー」


「外で組み手をやってみましょう、コールさん」



 三人とヴェルデはリビングを飛び出し、庭を走ったり攻防切り替えながら拳を合わせ始めた。魔法の支援を受けたコールの動きは目で追うのも大変なくらいで、祝福を授かって主従契約が強化された二人と遜色ない動きをしているのが凄い。


 今はヴェルデが進化前の状態で魔法を使っているが、もう一段階力が引き上げられると獣人族を圧倒できそうだ。


 しかし、コールがあんなに激しい動き方をすると、目のやり場に困るな。そっと視線を外してソファーに戻り、スポーツ用のインナーをソラに作ってもらおうかと、少しだけ思案した。



「リュウセイ次、私やって欲しい」


「そうだな、ソラの魔法もどういった効果になるのか楽しみだ」



 ソラの左手を握って三倍強化をかけると、三つある感知魔法が[感知(結像)]に変化する。確かレンズを通して物を見る時のこの言葉を使うはずだが、感知魔法にそれが付与されるということは、透視みたいな感じだろうか。



「何か見えそうな感じ、実際試すの一番、やってみる」



 青の彩色石(さいしょくせき)を握って呪文を唱えたソラの顔が、一瞬で驚きの表情に変化する。なにか負荷がかかっているわけでは無いらしく、辺りをキョロキョロ見回しながら実際の効果を確認している感じだ。



「ソラおねーちゃん、なにか見えるの?」


「これ凄い、感知したもの、形わかる」


「感知魔法で私とライザちゃんが区別できるのです?」


「後ろに立って見てもらうですよ」


「そこまでわからない、大きさと人の姿してるのわかる、バニラ狐してる」


「キュキューン」



 感知した対象の姿勢もある程度わかるらしく、イコとライザが座ったり空中に寝たりしてみると、後ろを向いたまま全て正解していた。仲間やそれ以外の識別と、強さや大きさが判断できる情報に加え、形も判別できるのは大幅な性能向上だ。これからは遭遇する魔物の種類や、森の中にいる人と動物の区別がよりつけやすくなる。



「前みたいに森で迷子になった人を探す時とか、便利そうだね」


「うん、これならすぐわかる、魔物も同じと思う」


「ソラの感知魔法がますます便利になったのじゃ。

 さて、最後はわれの番じゃな」



 最後にスファレの魔法を強化すると、[付与+付与(永続)]に変化する。これはシンプルでわかりやすいが、かなり破格の強化だ。付与魔法は相手の強さに応じて持続時間が減っていく。同じ色の彩色石を二つ持てば、それを伸ばすことが可能ではあるものの、効果時間は有限だ。



「永遠に眠らせたり麻痺させたりできるのは、かなり戦術の幅が広がりそうだ」


「複数の敵を麻痺させて、ゆっくり倒していくこともできるのじゃ」


「麻痺した魔物、壁に使うのもいい」


「いつ目を覚ますか怯えなくていいのは嬉しいね」


「私の妖精魔法より強力になってしまったわ」


「ヴィオレおねーちゃんの魔法は、リコおねーちゃんやソラおねーちゃんを助けてくれた、やさしい魔法だからすき」


「うふふふ、さすがリュウセイ君とマシロちゃんの娘ね、凄く嬉しいわ! ライムちゃん」


「ヴィオレの使う魔法は、計り知れんほどの価値があるのじゃ」


「船酔いで倒れた時、死の淵から救ってくれた、救世主」



 許可された一部の魔法以外を他者に向けて使うのは重大な犯罪行為になるし、誰かを眠りに誘ったり気持ちを落ち着けるような行為はヴィオレにしか出来ない。召喚魔法も対象者に与える影響が大きすぎるから、使用には細心の注意を払わないといけないだろう。


 これでコールも四並列で生活魔法を使えるようになるし、家族の安全もより確保しやすくなる。一段と強大になった力だが、使い方だけは間違えないように改めて気を引き締めた。




 ちなみに、庭で模擬戦を始めた三人だったが、進化したヴェルデとコールの一人勝ちで終わったようだ。ヘトヘトになった獣人族の二人と、体を思う存分動かしてスッキリした顔の鬼人族という構図は、きっとこの家でしか見られない光景だな。


ケーナとリコがどんなお店に勤めているかは、次回明らかになります。

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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