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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第13章 ソーレソレソレ、お祭りだー

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第155話 大道芸

 妖精王エコォウが、小人族の中に流れる妖精の血の力を引き出してくれた。ソラは人類で初めて妖精王の祝福を受けた、歴史上の人物になった訳だ。



「リュウセイ嬉しい、この力もらえたの、みんなのおかげ」


「ソラの持ってる感知魔法と、妖精の血が持つ力はすごく相性がいいと思う」


「君たちといると驚くことばかりだね」


「私たち歴史の生き証人になってしまったわ」


「……何だか凄すぎて、リコちゃんと一緒に夢を見てるみたいです」



 ソラはあれから嬉しさのあまり、俺に抱きついたまま離れてくれない。祝福をもらった他のメンバーも同じ感じだったし、このまま好きにさせてあげよう。



『妖精王の祝福とは、面白いものが見られたな』


「妖精女王には別の形で与えているから、目にした事があるのはここにいる者だけだ」


「私の時は目の前に光る玉が現れたのよ」


「それを受け入れられた者が女王の資格を持ち、力と格が成長する」


「そんなの見たことないのです」


「私たちも見てみたいですよ」


「お前たち二人には、足りんものが多すぎる、若い妖精なのだから諦めるがいい」



 仮にイコとライザが女王になれる資質を持って生まれていたら、一緒にお風呂には入れなかったからな。真白を越えるまろやかなものを携えて混浴を迫られたりしたら、円周率を何万桁唱えようと理性を保つ自信がない。



『イコさんとライザさんは、そのお姿が一番似合ってましてよ』


『女王ってなぁ一人しか()れねぇんだし、おめぇらは姉妹妖精でいいじゃねぇか』


「それもそうなのです、さすが精霊王様は思慮深いのです」


「私たちは二人一緒が自然な姿ですから、変わらなくて良かったですよ」


「お互いの力が共鳴する妖精など、私も知らなかったからな」



 ケーナさんたちは、どう反応していいのかわからないような顔でこちらを見ていて、ちょっと申し訳ない気分になってしまう。この家にはレアな存在が集まり過ぎだと思うが、少しずつ慣れていった俺たちと違い、急に全てを見せられると反応に困るのは仕方ないだろう。


 だが、こうした珍しいものはリコにとって良い刺激になるはずだ。聖域が心身に良い影響を与えるという理由の他に、この家が持つ特殊な環境はきっと彼女の目覚めを早めてくれる、そう思ったから遠慮するケーナさんを少し強引に誘っている。



「あっ、そうだ。今度ケーナさんの得意料理を教えて下さい」


「私の作る料理なんて、マシロさんのものと比べると、味も見た目も大したこと無いですけど」


「私、この世界の料理ってあまり知らないから、家庭料理は特に知りたいんです」


「それなら母から教えてもらったものを、いくつか教えてあげられると思います」


「ホントですか! 是非お願いします」


「明日のお出かけの時に、必要な材料も買ってしまおうか」



 この世界にはレシピ本なんて売ってないから、何か覚えようと思ったらこうして誰かに聞くしかない。作り方や材料をケーナさんから聞いている真白は、とても楽しそうだ。


 しばらくそうして話をしていたが、リコとライムがウトウトしだしたので、その日はそれぞれの部屋に戻って眠ることにした。




―――――・―――――・―――――




 翌朝、出かける前にリコを連れて、庭にある花壇へと向かう。レンガで区画を作った場所には色とりどりの花が咲いているが、聖域と精霊の力を借りているので、他の場所で育てるよりも長く楽しめるのが利点だ。



「リコおねーちゃんどう? すごくきれーでしょ」


「・・・・・」


「昨日は少ししか見られなかったけど、改めてここに来ると凄いですね」


「これはさすが聖域と言うべきなんだろうな」


「開花時期のずれている花が一斉に咲いているなんて、ここでしか見られないわね、あなた」



 ライムに手を引かれながらゆっくりと花壇の前まで歩いて行ったリコは、反応こそしないものの目線は花に釘付けだ。



「コールちゃんに私の好きな花をたくさん植えてもらったから、リュウセイ君がいない時はここが癒しの場所なのよ」


「他の花妖精は来ていないのか?」


「時々遊びに来るんだけど、私に遠慮してすぐ帰っちゃうみたいね」



 同じ妖精の(しゅ)だと、ヴィオレが女王だとわかってしまうらしい。上下関係は無いに等しいと言っていたが、この場に留まっている存在という特殊な事情が影響しているみたいだ。



「ほかの妖精さんも、いっぱい遊びにきてくれたらいいのにね」


「そうねライムちゃん、ここを妖精たちの社交場みたいに出来たらいいわね」


「妖精王もしばらく滞在してくれるし、案外実現するかもしれないな」


「そうなったら、この家もますます賑やかになるね、お兄ちゃん」



 しばらく花を眺めてからリコを抱き上げ、中央広場に向かって出発する。今日は近道をせずに、まずは真っ直ぐ広い通りに出て進む、一番覚えやすいルートを選んだ。



「ずっとセミに住んでいて他の街に来るのは初めてなんですが、王都ってやっぱり広くて人も多いですね」


「さいしょは迷子になりそうになったんだよ」


「今でも知らない道に入ると、迷いそうになるよ」


「俺もまだ商業区の周りにある住宅街は自信がないな」


「あそこは地元の住人でも迷ってしまうからね」


「ずっと王都ぐらしの私たちも、行ったことのない場所が多いのよ」



 歩きながらリコの様子をうかがってみると、行き交う人たちを見たり真白に抱っこされているライムを見たり、視線はゆっくりと動いている。


 自然な状態で眠れるようになったおかげで、顔色は劇的に良くなり生気も感じられるようになった。それはケーナさんも同様で、真白に治療してもらってきれいになった肌は、みずみずしい輝きを取り戻しつつある。


 ケーナさんの身長はクリムやアズルより若干高く真白よりは低いので、恐らく百五十センチくらいだろう。リコの状態が良くなって、心労からくる儚げな表情が消えれば、男なら放っておかないほどの美人だ。


 ただ、亡くなってしまった旦那さんのことをまだ愛していると言っていたので、変な噂を立てて悲しませることのないよう気をつけよう。



◇◆◇



 中央広場に出て、辻馬車の停留場でビブラさんたちと別れた。二人は王城に近い、北東ブロックの川沿いに住んでいるらしい。住所も聞いておいたので、これからはいつでも訪ねていける。


 広場は相変わらず人も多く、屋台や露店の他に大道芸や音楽演奏もしていて賑やかだ。抱きかかえているリコの視線もゆっくり移動していたが、ある場所でそれがピタリと停止した。


 その視線を追っていくと、顔に派手な化粧をした道化(ピエロ)のような人が、ボールやリングを使ってジャグリングをしている姿が目に入る。空中に放り投げるだけでなく、ボールが体の上を自在に転がったり、なかなか凄いパフォーマンスだ。



「リコが興味ありそうにしてるし、あそこでやってる芸を少し見ていかないか?」


「すごく面白そう、ライムも見たい!」


「ボールや輪っか(リング)が生き物みたいに動いてるね」


「あの……リュウセイさんは、どうしてリコちゃんが興味あるとわかったんですか?」


「あぁ、リコの視線とわずかな体重移動で、行きたい方向が大体分かるんだ」


「とーさんはライムの行きたいところに、いつも連れていってくれるんだよ」


「なっ、なんだか凄いです……私よりリコちゃんのことがわかってるみたい」


「いつもライムやソラを抱っこしてるから、その成果だな」



 しばらく抱っこしてみて気がついたが、リコも興味のある方向にわずかに身体を傾ける動きをしていた。それと視線の方向を見れば、行きたい場所や興味あるものは判別できる。



「さぁ、ここからどんどん盛り上がっていくよー! (まばた)きする暇も与えないから覚悟してね」



 ジャグリングをしている大道芸人の前に行くと、そんな口上が聞こえてきた。今までの技もかなり凄かったと思うが、それ以上のパフォーマンスというのは楽しみだ。ちょうど真正面のいい場所がとれたので、そこでじっくり見物させてもらうことにした。



「どんどん玉の数が増えていくから、小さい子は目を回さないように気をつけるんだよー」


「ライム、がんばってしっかり見てるね!」


「ありがとう、小さなお嬢ちゃん! みんなの応援があれば、もっともっと数が増えるよ」



 ライムの声援をきっかけにして、周りにいた子どもたちが集まりだし、大道芸人を取り囲むように人だかりが出来てくる。赤と青のボールを次々と取り出し、その数をどんどん増やしていくと、大人たちからも声援が聞こえはじめた。



「みんなの応援が嬉しくて、手持ちの玉を全部出してしまったよ!

 それじゃぁ、最後の大技とくとご覧あれー」



 トークを挟みながら多数のボールを次々捌いていたが、それを全て上空に放り投げる。その後に両手を横に伸ばすと、赤のボールは右の腕に青のボールは左の腕に、一つも転がり落ちることなく吸い付くように着地した。


 固唾を飲んで見守っていた人たちは、その瞬間に目を奪われて静まり返っている。そして、ゆっくりした動作で大道芸人が頭を下げると、広場全体に割れんばかりの拍手喝采が響き渡った。


 近くにあった入れ物に次々とお金が投げ入れられ、集まっていた人は満足そうな顔で離れていく。



「とーさん、すごかったね!」


「父さんもこんなに凄いのは初めて見たよ」


「最後の方は手の動きが見えないくらいだったね」


「王都ってやっぱり凄いです、ちょっと感動しました」


「リコもいいものが見られてよかったな」


「・・・・・」



 一瞬も目をそらさずじっと見ていたリコだが、演技が終わっても大道芸人の方を注目している。



「おや? そちらのお嬢さんは、僕の演技がお気に召さなかったのかな?」


「すまない、この子は病気の後遺症で、体は起きてるんだが心が目覚めてないんだ。まばたきを忘れて見入っていたから、とても気に入ってたよ」


「そうなのかい、ちょっと心がお寝坊さんなんだね。

 そんなお嬢さんにはこれをあげよう! 早く目が覚めるといいね」



 大道芸人がリコの前に右手を差し出して指を鳴らすと、そこに小さな花が出現した。この人はジャグリングだけでなく、手品も出来る人のようだ。



「良かったな、リコ」



 俺が頭を撫でるとリコの手がわずかに動き、手のひらを上に向けて物を受け取る仕草を見せた。その手に花をそっと握らせてくれた大道芸人は、一礼して道具の片付けを始める。


 リコが自ら何かを(ほっ)して体を動かしたというのは大きな出来事だ。ケーナさんもそんな姿を見て、口元に手を当てながら目をうるませていた。


 大道芸人にお礼を言って多めのチップを渡した後、買い物をしに店へと向かう。やはり色々なものを見せて刺激を与えることで、リコの状態はどんどん改善していくと確信できた。


 これから先の大きな希望ができたことは大収穫だ、一緒に出かけようと誘って本当に良かった。


いきなり未亡人やその子供と、一緒のベッドで寝たりしませんよ(笑)

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
― 新着の感想 ―
[一言] 後書き…マイスター冒頭…いや、最初は床の上でしたね、うん
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