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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第2章 妹がやってきた

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第12話 パーティー結成

 出会ったばかりなのに、すっかり打ち解けて仲良くなった真白とライムの話が落ち着いたところで、受付けへと三人で向かう。真白のまろやかな触感が気に入ったのか、ライムはずっと抱かれたままで気持ちよさそうに顔を埋めている。



「おはようございますリュウセイさん、ここまで聞こえてましたが妹さんなんですか?」


「お兄ちゃんの妹兼、お嫁さん兼、ライムちゃんのお母さんになった真白といいます」


「俺とは時間がズレてしまったみたいで、昨日この世界に飛ばされてきたらしい」


「私にも兄がいますが……リュウセイさんとマシロさんは、すごく仲がいいですね」


「お兄ちゃんは私の理想の男性ですから!」


「まぁ、真白が大切な存在なのは間違いないな」


「とーさんとかーさんが仲良しだと、ライムもうれしい」



 俺の半歩後ろで重なるように寄り添った真白を見ている受付嬢は、今まで見たことのない表情をしている。



「やはり兄妹で仲が良すぎるのはおかしいか?」


「いえ、そんな事ないですよ。マシロさんくらいの年齢になっても、こうして素直に気持ちをぶつけられるのは、少し憧れてしまいます」


「真白も十五歳だから、ここだともう大人だな」


「そうなの? ならお兄ちゃんと正式に結婚もできるんだ」


「兄妹で結婚は難しいかもしれませんが、年齢的には問題ありませんね」


「やはり結婚は無理みたいだぞ、真白」


「大丈夫だよお兄ちゃん、前例は作ればいいだけだから」



 非常に前向きな思考は好感が持てるが、全く違う環境に来てしまったストレスなのか、真白のリミッターが外れてしまっている気がする。そんな姿を受付嬢は微笑ましそうに見ているので、変な子に思われていないみたいで幸いだ。



「ギルド長とクラリネさんに真白を紹介したいんだが、時間をもらえるだろうか?」


「はい、すぐ聞いてきますね。

 それと……今日の癒しを補充させてもらってもいいですか?」


「そうだったな……

 真白、ライムを抱いたままでいいから、こっちに来てここに座ってもらえるか?」


「うん、いいよ」



 上目遣いにお願いしてきた受付嬢の言葉で、いつもと違ってライムを膝に抱いていないことに気づいた。真白を椅子に座らせると、受付嬢は嬉しそうにライムの頭を撫でて、癒し成分を補充している。しばらくそうしていたが席を立ち、「二人の予定を聞いてきます」と言葉を残して奥の方に入っていった。



「ライムちゃんすごく人気があるよね」


「この子がいてくれるから、俺も他の人と話がしやすくなって助かってるよ」


「みんな優しいからすき! それに、とーさんの役に立てるのがうれしい」


「やっぱりすごくいい子だなぁ、ライムちゃんは」



 椅子に座って膝の上に乗せたライムの頭を撫でる真白の顔は、今まで見たことがないほど緩みきっている。どうもこの子には、こうして人をダメにする能力が備わってるようだ。一度寝転がると起きる気力を失ってしまうソファーがあったが、それと同じように触れた人間を虜にする魔力を秘めているのかもしれない。



◇◆◇



 二人の都合がついたらしいので、何度か入っている小さな応接室に案内された。いつものようにソファーに座り、クラリネさんの淹れてくれた少し甘いお茶を飲む。俺と真白の間に座ったライムもこのお茶が好きなので、少しずつ飲みながら嬉しそうな顔をしている。



「私がアージンの冒険者ギルド長を務めているタンバリーだ」


「私は秘書のクラリネと申します」


「真白は昨日この世界に来て、今朝目覚めてからシスターに冒険者ギルドへ行くよう言われたらしい」


「本日はお時間をとらせてしまって申し訳ありません、私は兄と同じ世界から来た真白といいます。さっき聞いたのですが、流れ人(ながれびと)と呼ばれる存在だとか」


「リュウセイ君と兄妹という話だが、喋り方はずいぶん違うんだね」



 最初に会った時に変な話し方になったことを思い出したのか、笑いを我慢するような変な表情でギルド長はこちらを見る。あの受け答えは自分でも少し恥ずかしかったから、そろそろ忘れてほしいんだが……



「兄は昔から丁寧に話すと怖がられてたせいで苦手にしてるだけで、ちゃんと相手の人には敬意を払ってますよ」


「リュウセイ君の話し方は冒険者向きなのでむしろ好ましいんだ、つまらないことを言ってしまったね、気を悪くしないでくれ」



 そんな態度を俺の話し方が批判されたと勘違いしたようで、真白は少し語気を強めてギルド長に言い立ててしまった。元の世界でもそうだったが、こうして俺のことを思ってくれる気持ちは嬉しいので、手を伸ばして頭をそっと撫でる。真白は自分でも言いすぎたと気づき、頬を染めながらうつむいてしまう。



「すまない、真白は俺のことになると、少し感情的になってしまう事があるんだ。この世界に来たばかりで、まだ気持ちも落ち着いてないと思うから、許してやってほしい」


「大丈夫ですよリュウセイさん、マシロさん。この世界では自分の意見をしっかり伝えることが、とても大切ですから。それに竜の(ウロコ)と添い寝するような人には、思う存分言い返してやってください」


「クラリネ君、それはちょっと言いすぎじゃないかね……

 そうだ、マシロ君はどこかで竜の鱗を拾ったりしなかったかい?」


「いえ、私は教会の裏で倒れてたらしいので、何も拾ったりはしませんでした」


「そうか……それは残念だよ」



 ギルド長は本当に残念そうに肩を落とす。俺がたまたま竜の鱗を渡したので味をしめたのか、流れ人の真白にも同じ事を期待したみたいだが、そう簡単に拾えるようなら、あんな高価な買取金額はつかないだろう。


 クラリネさんとギルド長のおかげで場の空気が軽くなったので、真白がこの世界に来てからの経緯を説明して、ギルドカードも発行してもらう。



「しかし、収納魔法が発現したリュウセイ君に続いて、マシロ君が治癒の使い手とは驚いたね」


「過去の記録には記載されていませんが、流れ人は珍しい魔法が発現しやすいのかもしれませんね」


「あの、私はどういった依頼が受けられるのでしょうか」


「そうですね、マシロさんのような治癒使いは冒険者の間で引く手あまたですが、このギルドにも帰ってきた方々の怪我を治療をする場所がありますので、そこの依頼をお受けいただくのも良いかと思います」


「わかりました、ありがとうございます」



 流石に白は激レア魔法だけあって、受けられる依頼に困ることはなさそうだ。二人で働きだすと生活もより安定してくるだろうから、これから先どうやってこの世界で生きていくか、真白とも相談して決めていこう。



「二人はこれから一緒に活動していくんだね?」


「別々の依頼を受けることもあると思うが、共に活動していくつもりだ」


「どんな世界でも私とお兄ちゃんは離れたりしません」


「それでしたらパーティーを組んでしまうのが良いでしょうね」


「パーティーを組むと何か良いことがあるんですか?」


「まず一点は、依頼達成で入る貢献点を共有できることです。お二人で別の依頼を受けた際も、同じだけ点数が加算されますので、ランク上昇が同時になるという利点があります」



 ライムは保護者とその子供という扱いだったので、依頼達成のポイントを共有してくれていたが、真白と別の依頼をこなしていく場合はパーティーを組んだ方が良いだろう。



「もう一点は、パーティー共有の口座を開設できることです。リュウセイさんは収納魔法をお持ちなので貴重品を安全に保管できますが、マシロさんに必要なお金ができた際に多額の現金を持ち歩かなくても、パーティー口座からその都度引き出すことが可能になります」


「それは便利そうなので、是非お願いします」


「ライムも、とーさんとかーさんのパーティーに入れる?」


「もちろん入れますよ、三人で登録しましょうね」


「やったー!」


「……夫婦と子供のパーティーなんて素敵すぎる」



 真白の心の声が少し漏れていた気もするが、二人とも嬉しそうにしているし、このままパーティー登録してしまおう。


 ランクの違う者同士がパーティーを組んだ場合、全員が同じランクになるまで貢献点の割り振り方が変化するなど、注意事項を聞いた後に登録作業も終了した。俺の持っていた鱗の代金も、一部をパーティー口座に移し替えておく。


 そしてギルド長にはあんな風に言ったクラリネさんだが、今日も帰り際にライムの頭を撫でながら至福の表情を浮かべていた。



◇◆◇



 その日はギルドを後にして、まずは真白を保護してくれた教会に挨拶に行った。対応してくれたシスターは凄くおっとりしたお姉さんで、ほとんど説明しないまま真白を送り出した理由が、何となくわかってしまった。いま着ている服はそのまま使って良いと言われたので、学生服は回収して俺の服と一緒に収納にしまっておくことにする。



「ここがお兄ちゃんの泊まってる宿屋なんだ」


「すごくいい宿屋で、とても快適に過ごせるんだ」


「ごはんもおいしいよ」


「この世界のご飯かー、朝はパンとミルクだけだったから、ちょっと楽しみだよ」



 三人で中に入ると、いつものようにシロフがカウンターの所に座っている。お昼には少し早い時間なので、今なら泊まる部屋の変更もお願いしやすい。



「ただいま」「ただいまー、シロフおねーちゃん」「えっと、こんにちは」


「お帰りなさいリュウセイ君、ライムちゃん。

 ……もう一人の女の子はお友達?」


「この子が妹の真白なんだ」


「ライムのかーさんになってくれたの」


「あなたがリュウセイ君の妹さんかー

 ほんとに凄く可愛いね、リュウセイ君が自慢するのもわかるなぁ」


「お兄ちゃん、どんなこと言ったの!?」


「優しくて可愛くて料理が上手な、自慢の妹と言ったくらいだぞ?」


「うぅ……そう思ってくれてるのは凄く嬉しいけど、やっぱり面と向かって言われると恥ずかしいよ」



 真白は恥ずかしそうに頬を染めて、俺の腕を抱えるようにしがみついてくる。久しぶりに感じるそのまろやかさに包まれると、妹と再会できたんだという実感が一層湧く気がした。



「それで三人で泊まれる部屋に変更しようと思うんだが」


「ベッドは一つと二つと三つの部屋がありますけど、どうしますか?」


「そうだな……二つか三つで――」「一つでお願いします!」



 真白が俺の言葉にかぶせるようにして、ベッドが一つの部屋を指定した。



「いくら兄妹でも一つのベッドはマズイと思うんだが」


「私たちはパーティー(夫婦)なんだし、全然問題ないよ」


「なんかパーティーの意味が違うように思えるのは気のせいか?」


「だってライムちゃんもいるし、寝るなら三人(家族)一緒のほうがいいよ」


「ライムも、とーさんとかーさんといっしょがいい」


「それに知らない世界に来たばかりでまだ不安だし、ダメ?」



 俺の腕に掴まった真白が、見上げるように懇願してくる。その瞳は不安に揺れて少し潤んでいる気がして、強引に断るという選択肢を粉砕するには十分の破壊力だった。



「わかった俺の負けだ、すまないけどベッドが一つの部屋をお願いしたい」


「やったー! お兄ちゃん大好き」


「ライムもとーさん大好き!」



 泣きそうに見えた顔が一瞬で笑顔になり、ライムと一緒に左右から抱きついてきた。ちょっとハメられた気がしないでもないが、知らない世界に来て一人で寝るのは不安という気持ちもわかるので、真白の好きにさせてあげよう。



「いつも冷静でしっかりしてるリュウセイ君も、妹さんと娘さんには激甘ですね」


「真白はあまりワガママを言わない子だから、昔からこうしてお願いをされると弱いんだ」


「んー、それだとベッドが一つの部屋かぁ……」



 シロフは顎に手を当てて、少し考え込むような仕草をする、もしかして適当な部屋が空いてないんだろうか。



「部屋が空いてないなら別にベッドが二つでも……」


「じゃぁ、こうしましょう!

 ライムちゃんはまだ小さいし、リュウセイ君とマシロちゃんを見てると本当の夫婦みたいだから、今の部屋のベッドでも十分寝られるはずです」


「確かに鬼人族の男性が基準だから、三人でも十分な広さがあるな」


「少しだけ差額をもらいますけど、今の部屋をそのまま使ってもらうなら、普通の三人部屋よりお安くしておきますよ」


「それでお願いします!」



 夫婦と言われて嬉しかったのか、真白が満面の笑みを浮かべながらシロフの提案に乗ってきた。こうして俺たち三人で、本来は二人用だった部屋を使うことになった。


受付けの女性も昔はかなりのお兄ちゃん子でしたが、一人で依頼を受けられる年齢になったら大人の仲間入りをする準備期間という、この世界の教育方針のため無理やり気持ちを抑え込み、想いを告げられなかったという過去があります(裏話)

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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