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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第11章 湯けむり創製事件、乳白色の湯殿でメイド妖精は見た!

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第134話 ピャチで買い物

誤字報告いつもありがとうございます。


◇◆◇


序盤は精霊王たちの視点で書かれています。

 全員が寝静まった後、緑の精霊王バンジオと青の精霊王モジュレが、窓際に並んで佇んでいる。二人が出会ったのは七百六十八年ぶりだが、こういった形になるとはお互いに想像すらしていなかった。



『あなたとわたくしが、こうして並んで話をする日が来るなんて、思いもしませんでしたわ』


『儂とて今の文明が途絶えぬうちに相まみえるとは思わなんだよ』


『不思議な(えにし)に導かれたかのようですわね』


『お主はあの者たちをどう見ておる?』


『何故か心惹かれるものがありますわ』


『それは儂も同じだ、でなければ共に行動などせぬ』


『それに、面白いという感情など忘れておりましたが、あの子たちが思い出させてくれましたのよ』


『儂らの知らぬ、あるいは忘れてしまった感情を、あの者たちは引き出してくれるな』



 二人は窓の外に向いていた体を反転させ、ベッドを並べてひと塊になって眠る龍青たちをじっと見つめる。



『わたくし達に知られること無く訪れた流れ人、一体誰が招いたのかしら』


『それは儂にもわからぬ、ただ一つ言えるのは今の世界には彼らが必要ということだけだ』


『わたくし達二人が祝福を与えても良いと思ってしまうのだから、きっとその通りですわね』


『赤の精霊王も探し出して、巻き込んでやらねばいかんな』


『あなた、あの子たちに感化されすぎているんじゃないかしら』


『かもしれんな……』



 互いに顔を見合わせると、体を震わせながら愉快な感情を表に出す。二人がこんな気持になるのは、龍青たちに出会うまで無かったことだ。



『海に行くのが楽しみですわ、わたしの精霊魔法の凄さを披露いたしませんとね』


『海も良いがお主は温泉に入ったことはあるか? あれは実に良いものだったぞ――』



 バンジオは龍青たちと出会ってからの体験を語りだし、モジュレはそれを興味深そうに聞き入っていた。その話は尽きることがなく、夜が明けるまで続くのだった。




―――――*―――――*―――――




 朝、目が覚めると真横に黒い影が横たわっていた、それは進化して体の大きくなった状態で寝ているネロだ。みんなでベッドに入ろうとした時に俺の横にスッと横たわったので、そのままネロを挟んだ向こう側にマラクスさんが寝ている。


 抱き枕のようにネロにしがみつきながら熟睡しているマラクスさんの顔は、とても幸せそうに見える。きっとこれをしてあげたくて、大きな姿のままで寝ることにしたんだろう。青の精霊王の祝福をもらえるだけあって、この二人の仲もかなりいい。



「にゃう」


「おはようネロ」


「ごろごろごろごろ」



 じっと見つめていることに気づいたネロが、短い鳴き声を上げてくれたので顎の下を指で撫でる。ヒョウを思わせるような体の大きさになったが、こうして甘えてくる姿はネコそのものだ。



「寒い時期はその大きさで添い寝してくれると、温かくて快適そうだ」


「にゃーう」


「こんど海に行ったときは、その姿で泳いでみような」


「にゃにゃー」


「……んっ…おはようネロ、リュウセイ君」


「起こしてしまったか?」


「昨夜はぐっすり眠れたから、自然に目が覚めたよ」


「それなら良かった」


「ネロ……ちょっと、くすぐったいからやめて」



 顔をペロペロ舐められたマラクスさんが、微笑みながらネロに抗議している。



「今日王都に戻る予定だけど、マラクスさんはどうする?」


「僕は夕方までに家に戻ればいいし、コールちゃんの防具を見に行ったり、マシロちゃんが欲しがっていた香辛料を買ってから帰ろうか」


「それならギルドに挨拶した後にみんなで買い物だな」


「出張でこんなにのんびりしてていいのか、ちょっと不安になるね」


「帰りの行程が全部省けるんだし、もっとゆっくりしていい位だけどな」


「このままだと僕は、君たちと一緒じゃないと旅ができなくなりそうだよ……」


「にゃーぅ」



 苦笑気味にこちらを眺めるマラクスさんとしばらく話をして、みんなが起き出してから朝食を食べた。



◇◆◇



 帰る前に冒険者ギルドに行き竜人族の目撃情報を聞いてみたが、昨日行った滝の近くでそれらしい人影を見たというものだった。水も豊富だしあまり人も入ってこない場所なので、竜人族が逗留(とうりゅう)するにはいい場所かもしれないが、滝まで歩いた道に洞窟がありそうな地形は見当たらなかった。


 昨日入っていった滝の裏にも生活の跡のようなものはなかったし、モジュレにも聞いてみたがこの辺りにはいないだろうということだ。


 一つ新しい事実がわかり、山脈の向こう側に広がる大森林は、昔から竜人族が多いという噂があるらしい。今はもう廃れてしまったが、この街では子供の(しつけ)をする時に、“悪いことをすると山の向こうから竜人がやってくる”と脅かしていたそうだ。



「面白い話を聞けたね、お兄ちゃん」


「ライムは誰かをたたいたりしないよ」


「ライムが優しい子なのは、父さんも母さんも知ってるから大丈夫だ」



 日本でも悪いことをすると鬼が来るとか、お化けが出るなんて言われることもあるが、それと同じ感じなんだろう。類似の対象にされてしまった竜人族には、少し同情してしまう。もしかすると、こういった話として伝わるような出来事が、大昔にあったのかもしれない。



「大森林の中を闇雲に探すのは現実的ではないのじゃ、もっと情報を集める必要があるのじゃ」


『森の中なら儂の方でも精霊たちに聞いてみよう』


『水場ならわたくしにお任せくださいな』


「みんな頼もしい、森の中じっくり探検してみたい」


「やることが次々出来て楽しいわね」


「まずは海水浴だねー」


「海水浴に行って、赤の精霊王さんを探して、竜人族も探して、全部頑張りましょう」


「精霊王さんの力を個人的に使ってもいいんでしょうか……」


「みんな楽しそうにしてるし、大丈夫だと思うよ、コールさん」



 王都の家はかなり住心地がいいみたいだし、邪魔玉(じゃまぎょく)の浄化に協力しつつ、それ以外はゆっくりくつろいでもらって、時々手を貸してもらうくらいなら問題ないだろう、きっと。



◇◆◇



 この街で一番有名な鍛冶屋だと紹介されたのが、ギルド長の弟フェイザさんだった。店舗と工房を兼ねた店に行くと、所狭しと剣や防具が並べてある。



「おう、お前らよく来たな」


「前衛の使う防具が欲しいんだが、色々相談に乗ってもらえるとありがたい」


「今はどんなものを使ってるんだ?」


「えっと、今はこれを使ってます」



 コールがずっと愛用している籠手(こて)を取り出した。使い込まれていて所々修理の跡もあるそれは、ドーヴァの街でパーティーを組んだ時に購入したものだ。


 出会う前は防具を買う余裕もなく、ずっと自分の体を盾にして魔物を狩っていたと聞き、遠慮するコールを説き伏せて購入した。それ以降、宝物のようにずっと大切にしてくれている。



「大切に扱っとるな、こいつも喜んどるわ」


「思い入れのある防具なので」


「だが、籠手だと遠距離攻撃の防御が心もとない、これを使ってみたらどうだ?」



 カウンターから出てきたフェイザさんが店の一角に行き、そこから持ってきたのは盾が付いた籠手だった。盾の部分は中心に突起のある楕円になっていて、手の甲から肘のあたりまでカバーできている。籠手より広範囲の攻撃を防げるし、中心部分を刺せば魔物にダメージも与えられるだろう。



「防御範囲も広くなりますし、いいかもしれません」


「突起の部分は(鋭利上昇)(耐久上昇)の魔晶を配合しとるし、盾の部分は(軽量化)と青の魔晶だ。アダマス鋼も使っとる、自慢の逸品だぞ」


「装着してみても構いませんか?」


「違和感があったらすぐ調整してやるから、気が済むまで試してみろ」



 コールは籠手を装着して振ったり構えたりしているが、かなり気に入っている様子が伺える。



「これ、凄く軽いですし、今までと同じ感覚で使えそうです」


「ならそれを買おうか」


「よし、微調整をしてやるからこっちに来い」



 籠手の調整をしてもらっている間に、店内を回って後衛が使う護身用の武器を探してみたが、奥の方に巨大な剣があるのに気づいた。



「とーさん、すごく大きな剣だね」


「あれは鬼人族の男性や獣人族でも持てないんじゃないか?」


「熊人族とか虎人族は力持ちだけど、あれはさすがに無理かもしれないねー」


「刃も肉厚で幅もありますし、切るというより叩き潰す感じの武器ですね」



 ()の部分は俺でも握れるくらいの太さだが、刃が実用には程遠いほど大きい。厚みのある長方形の刀身に三角の切っ先をつけたような形は、ゲームに出てくるような大剣だ。



「お前ら、それを振り回せるならくれてやるぞ」


「ほんとー? ちょっと挑戦してみるー」


「私も試してみたいです」



 身体強化を発動したクリムとアズルが挑戦してみたが、少し持ち上がるものの振り回すのは無理だった。俺や他のみんなも試してみたが、全く歯が立たない。



「これは実用品なのか?」


「ワシの高祖父(四代前)が竜人族の戦士にもらったと言ってたらしいが、今となっては詳しいことはわからん」


「それが本当なら、お兄ちゃんとライムちゃんが同化すれば、持てるかもしれないね」


「大人数人がかりでやっと動かせる剣だぞ、そこの嬢ちゃんが竜人族といっても、まだガキだし無理じゃないか?」


「試しに竜人族の魔法を使ってみてもいいか?」


「面白そうじゃないか、どんな魔法かは知らんがやってみろ」



 竜人族が使ってたと聞いて、ちょっと興味が出てきた。真偽の程は定かではないが、俺とライムの力を試すつもりでやってみよう。



「挑戦してみるか? ライム」


「うん、やってみたい!」



《とーさんといっしょ!》



 ライムの呪文で肩車状態になり、二人の体が緑色に光る。少し離れてもらった精霊王の二人も初めてこの状態を見て、感心するようにつぶやきを漏らしていた。


 そして剣を両手で握って力を込めると、台座から離れて大上段の位置まで持ち上がる。二人が同化したパワーでも重く感じるが、振り回せないほどではない。



『かなり重いが、これくらいなら問題なく動かせそうだ』

『お店の中だと危ないね』


「こいつはたまげた! 裏に広い庭がある、そこで剣を振ってみてくれ」



 フェイザさんに案内されて裏庭に行き、いつもやっているような剣の型をなぞってみる。重量があるので多少ぶれてしまうが、剣を地面にぶつけたり落としてしまう失敗はしないで済んだ。



「さすが大陸最強、竜人族と人族の合体技すごい」


『流石にこれは儂も驚いたぞ』


『二人の力が一つになるなんて、衝撃的ですわ』


「さっき言っていた竜人族の戦士って話、本当かもしれないわね」


「今日はいいものを見せてもらった!! 約束通りその剣はお前のもんだ、遠慮なく持って帰って構わんぞ」



 店の名物を持ち帰っていいのか何度も確かめたが、剣や防具は使ってこそ輝くものだという職人の矜持(きょうじ)を聞かされ、ありがたく貰い受けることになった。


 籠手の他にも色々購入したが、かなり値引きをしてもらい、フェイザさんの工房を後にした。


大剣のイメージは、ガッツさんの持ってる「ドラゴンころし」みたいな感じ。


◇◆◇


次話でこの章は終了になります。

次章はいよいよ夏本番!

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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