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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第11章 湯けむり創製事件、乳白色の湯殿でメイド妖精は見た!

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第131話 瀑布

 鑑定してもらった巨岩はアダマス鋼の含有率が高いようで、喜んだ鍛冶組合の会長が夕食をごちそうしてくれた。テーブルにこの街名物の辛い料理が運ばれてきた時、コールやスファレはすかさず目を逸らしていたが、あの凶暴な色合いでは仕方ないだろう。アズルは匂いでギブアップしていたしな。


 なんでも山岳地帯でしか栽培できない品種があるらしく、辛さより痛みの方を強く感じたので大量摂取は危険な予感がする。


 真白とクリムも少しだけしか口にできず、俺とソラの二人で食べきることになったが、いい汗をかけた。


 唐辛子と同じで、ダイエットに効果あるんじゃないだろうか……



◇◆◇



「おみやげで貰った分を家でも使ってみたけど、あの入浴剤って本当にいいものだね」


「なぁーぅ」


「マラクスさんはシェスチーの街に行ったことあるんですか?」


「何度か行って温泉にも入ったことがあるけど、あの真っ白のお湯が家でも楽しめるなんて驚いたよ」



 お風呂から上がったマラクスさんは出張中なので口調も服も男性用だが、胸を締め付けるインナーだけは外してもらっている。国の施設は防犯がしっかりしている事と、精霊たちに誰かが来たら教えてもらえるようにお願いしているおかげで、安心して過ごしてもらえるからだ。


 旅の間もずっとそうしてもらっていたし、俺たちが一緒の時は夜だけでも気を張らずに過ごしてもらえた方がいい。



「シェスチーでは試験販売が始まってるし、そのうち王都にも入荷すると思う」


「お母様がとても気に入ってて、王都でも絶対売ってもらうって張り切ってたから、雑貨屋に並ぶ日は近いと思うよ」


「シェイキアのやつ職権乱用しとらんじゃろうな」


「文官の家に実物を持っていくって言ってたから、あっちから手を回してもらうんじゃないかな」



 王国御三家のうち二つが動くというのは、かなり大事(おおごと)な気がするんだが……

 でもまぁ、流通経路の確保や課税で優遇してもらえると、お世話になった三人の会長たちも喜んでくれるかもしれない。



「私たちはご主人さまのおかげでー、温泉は好きな時に行けますがー、あの素晴らしさはもっと広まって欲しいですー」


「シェスチーに行く人が増えるかもしれないよねー」


「マラクスおにーちゃんも、こんよくする?」


「混浴は恥ずかしすぎるし、人目のある露天風呂には入れないんだよ、ごめんねライムちゃん」



 仕事上の立場や自分で決めた生き方は最大限尊重したいと思うが、性別を偽っているマラクスさんの場合は制約が大きすぎて、窮屈な思いをすることが多いんじゃないだろうか。



「それだと、海水浴も無理ですよね?」


「そうだね、コールちゃん、残念だけど海水浴は難しいかな」


「いっしょに砂の城、作ってみたかった」


「今年の赤月(あかのつき)になったら、シェイキアさんと一緒にチェトレの海岸に誘ってみようかと思ってたんだが、やっぱり一緒に泳ぐのは難しいか……」


「僕も砂浜で一緒に遊ぶくらいは出来ると思うから、お母様は誘ってみてもらえるかな」



 俺たちの家みたいに遊んでる範囲に結界でも張れれば人目を気にする必要はなくなるが、聖域でも家でもない場所でイコとライザに大規模魔法を使ってもらうのは無理だろう。



「みんな水着なのに、一人だけ服を着ているのも可哀想よね」


『水の精霊王が見つかれば、お主たちの望みが叶うやもしれんぞ』


「ほんと、バンジオおじーちゃん」


『海水浴は海で泳ぐ遊びだと記憶しておるが、水のある場所ならモジュレの独壇場(どくだんじょう)だからな、人目につかんようにするなど造作も無いだろう』


「それなら明日は一緒に滝へ行きましょうよ、マラクスさん」


「そうだな、もし予定がないなら一緒に行って、本人に会えたら直接聞いてみないか?」


「……マシロちゃん、リュウセイ君。

 わかったよ、明日はみんなで滝に行ってみようか」



 やはり外で気兼ねなく遊べる可能性ができたのは嬉しいようで、笑顔で同行の意思を伝えてくれた。目撃情報通り青の精霊王がいることを願いながら、その日は眠りについた。




―――――・―――――・―――――




 翌日になり、街の近くを流れる川を上流へとさかのぼっていく。道といっても、川の横にできた硬い岩盤層がその役割を果たしている、といった表現が正しいだろう。道幅も一定ではなく人の手はほとんど入っていない感じだが、十分に通り道として機能している。



「自然にできた道って感じだよね、お兄ちゃん」


「一応整備はされてるみたいだけど、へこんだ部分があったり小さな石が落ちてるし、気をつけて歩かないとダメだな」


「最近誰かがこの道を通ったような形跡はないね」


「滝って人気がないのー?」


「観光名所みたいになってないんでしょうか」



 この先にある見どころといえば落差の大きい滝くらいで、道も悪く距離もそれなりにあるので行く人は少ないみたいだ。元の世界だと、雄大な眺めとか美しい景色というだけで足を運ぶ理由になっていた。手つかずの自然が多いこの世界で、手間と時間をかけてでも見に行こうという人は少数派なのかもしれない。



「スファレとバンジオ、何か感じない?」


「精霊たちは普通に動き回っとるのじゃ」


『この辺りは流れの境目に位置しておるから、もう少し奥にいかんと知っとる者がおらんかもしれんな』



 精霊たちが超えられない大きな流れに阻まれて、情報の壁ができてしまっている感じか。そう考えるとバンジオに会えたのは、本当に運が良かったということだ。



「気をつけて進みましょうね、みんな」


「ピピッ」


「なぁー」


「ライムちゃん、手をつなぎましょうか」


「ありがとう、コールおねーちゃん」



 足元に気を配りながらしばらく進んでいると、スファレとバンジオが同じ方向に視線を向けた。



「ここに青の精霊王がおるのは、間違いないようじゃな」


『精霊たちが儂らの近くに集まってきおった』


「どこにいるかわかるか?」


『どうやら滝の中らしい』



 それは滝壺の中という意味だろうか、もしそうだとすればかなり難易度が高い。滝壺の中は対流が発生しているので、下手すると流れから抜け出せなくなってしまう。そんな危険地帯の底にあったとすれば、以前のように潜って回収するのは困難だ。



◇◆◇



 とにかく現場に行かないと詳しい状況がわからないので、滝のそばまで歩いてきた。


 少し開けた場所に到着すると、幅は狭いものの水量が多く高低差もかなりある滝の姿に圧倒される。滝壺の周りは少し高くなっていて、上から確認しても底の様子は全くわからない。


 周りには白い飛沫(しぶき)が舞い上がり、夏本番が目の前の季節なのに涼しくて気持ちがいい。



「うわー、きれいだね」


「岩肌に沿って落ちてる滝じゃなくて、垂直に落下してるみたいだな」


「なかなか素晴らし眺めなのじゃ」


「僕もここに来るのは初めてだけど、こんな場所があるなんて知らなかったよ」



 みんながこの光景に見入っていて、コールたちは滝口の方を見上げたまま声にならないみたいだ。



『この滝の奥にモジュレがおるようだな』


「滝の裏ってどこにも入り口なんてないよー?」


「この流れの後ろってことでしょうね」


「滝の向こう黄色と紫反応、邪魔玉(じゃまぎょく)きっとある」


「んー、入っていけそうな隙間はあるけど、流れが速すぎて危険よ」



 ヴィオレが滝の近くまで飛んで流れの裏側を見てくれたが、隙間はかなり狭いみたいなので入るのは難しそうだ。



「バンジオにはこの流れを止めたり緩めたりは出来ないのか?」


『モジュレなら可能だが、儂と精霊たちだけではちと無理だな』


「ご主人さま、私が障壁魔法で受け流してみましょうか?」


「それも考えたんだが、失敗すると危険だし、あまりやりたくないんだ……」



 下手に水を巻き込んでしまうとそのまま流されるし、障壁魔法は移動しながら使うのが難しい。そんなリスクはなるべく避けるべきだろう。



「あっ、とーさん、向こうの方から青い竜がとんできてるよ」


「あらあら、本当ね」


「ピピピー」


「なぁーー」



 ライムや頭の上から聞こえてきた声で上空に目をやると、青くて大きな物体がものすごいスピードで近づいてきている。しばらく上空を旋回していたが、こちらの姿が確認できたらしく一気に下降してきた。



『おーーーい、キミたちがグンデル姉貴の言ってた流れ人だね』


『あやつはタムだな』


「ふぉぉぉぉー、青竜! みんなと旅すると竜三昧!!」



 あわや地上にぶつかるかという所でふわりと停止すると、滝の水が少し流されるほどの風が舞った。青竜のタムは確か二百歳くらいなので、元気が有り余っているという感じだ。



「タムにーちゃんは飛ぶの速いんだね」


『そうだよ、ボクに勝てる竜はいないのさ』


「どうしてここに俺たちがいるってわかったんだ?」


『姉貴に言われてボクも精霊王探しに協力してたんだ、水の多い場所をあちこち回ってたから、偶然見つけられたんだよ』


「まあまあ、あんなに高い場所から、私たちのことが見えたのね」


『ボクは目もいいんだよ、凄いでしょ』


「うぅっ、竜族と普通に世間話してるよ……

 このパーティー怖い」



 マラクスさんは竜族を目の前にして緊張しまくっているが、やはりこれが普通の反応なのか。竜は地脈の(よど)みを直す存在で、大地の守り神と呼んで神格化してるから、こうなってしまうのは仕方ないだろう。



『ボクなんてまだ二百歳くらいの子供だから、緊張しなくてもいいよ』


「われより年下なのじゃ」


『儂は竜族より遥かに長生きだしな』


「私もそこそこお姉さんよ」


「なんかもう、僕は年齢の規模についていけないよ……」



 シェイキアさんもタムより年上だが、あの人はおちゃめなお姉さんといった印象が強いからな。



『それより、もしかしてここに青の精霊王がいるの?』


「この滝の裏におるようなんじゃが、水が邪魔で入って行けんのじゃ」


「滝の裏に奥に入れそうな隙間があるのだけど、中に行かないと邪魔玉の浄化ができないのよ」


『それならボクの体で、滝の水を横に流してあげるよ』


「それは助かるよ、ありがとう」


『儂が中に行って、一時的にモジュレと封印を交代しようと思っておったが、これなら時間がかからず入れそうだな』



 タムが滝に近づいていき、羽を広げながら激流の中に突っ込んでいくと、水が大きく割れて裏側の地肌が見えるようになった。そこは細くて小さな入口が開いていて、奥の方へと続いていた。


 体の位置を調整して滝の水が一方にだけ流れるようにしてくれたので、その隙間を通って中に入っていくことにした。



「帰りは転移魔法で外に戻れるから、滝から離れてもらっても大丈夫だ、助かったよ行ってくる」


『うん、ボクはここで待ってるから、青の精霊王のことよろしくね』



 コールに照明魔法を発動してもらい、全員で暗い洞窟へと侵入した――


カプサイシンダイエット!


出会い系チート持ちの集団ですから、この辺りはご都合主義です。

(行く先々で事件に巻き込まれる探偵みたいなもの(笑))

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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