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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第11章 湯けむり創製事件、乳白色の湯殿でメイド妖精は見た!
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第128話 山あいの道

誤字報告ありがとうございます。

古代エルフの名前がゴチャ混ぜになって、自分で自分の名前を言ってた……


◇◆◇


ちょっと軽いBL妄想があります。

 ベルさんのアドバイスを受けながら準備を整え、いよいとピャチへ出発する日が来た。段位の自分たちが国から指名依頼を受けたというのは冒険者ギルドで驚かれたが、メンバー構成が特殊すぎるのでみんな納得してくれた感じだ。



「マラクスおにーちゃーん!」


「おはようライムちゃん、今日からよろしくね」


「おはよう、マラクスさん」


「おはようございます」


「おはようリュウセイ君、マシロちゃん、それにみんなもよろしくね」


「ライムちゃんにあんなに懐かれてるなんて、さすがマラクス様ね」

「ああして子供を抱き上げているお姿は……」

「「「「「(とうと)い!!!!!」」」」」



 冒険者ギルドで待ち合わせをしたが、さすがマラクスさんは受付嬢たちに大人気だ。

 他のメンバーとも挨拶を交わしているが、今日から仕事がらみの付き合いになるので、男性として扱うことにしている。みんなしっかり切り替えはできているようだし、俺もうっかりボロを出さないように気をつけよう。



「マラクス様と一緒に移動なんて羨ましい」

「あの中で誰が本命だと思う?」

「マシロさんと一番親しげに話している感じよ」

「でも彼女ってリュウセイさんの奥さんでしょ?」

「「「「「禁断の恋ね!!!!!」」」」」



 プライベートでも付き合いがあるから全員が和気あいあいと話をしているが、やはり料理が大きなアドバンテージになってる。そのせいで真白と一番親しげに見えてしまうのは、仕方がないだろう。しかし、あの笑顔は美味しいご飯を食べられる喜びなのだと、誰も気づいていない。



「でも、リュウセイさんとマラクス様もありだと思わない?」

「「「「「ありかも……」」」」」

「どっちが主導権を握ってるのかしら」

「リュウセイさんって顔つきは精悍(せいかん)だけど、かなり優しいわよ」

「いつもの凛々しいお姿と甘いお声で迫るマラクス様を見てみたいわ」

「戸惑いながら頬を染め、マラクス様を受け入れるリュウセイさん……」

「「「「「きゃーーーーっ!!!!!」」」」」



 何やら受付の方が変な方向に盛り上がってしまっている。ハンカチで鼻を押さえている人もいるが、大丈夫だろうか?

 それより、背後に上司っぽい人が立って睨んでいるんだが……



「リュウセイ君、そろそろ行こうか」


「仕事の邪魔をしてもまずいしそうしよう」


「それじゃあみんな、行ってくるね」


「「「「「行ってらっしゃいませ、マラクス様!!!!!」」」」」



 一斉に立ち上がって手を振る受付嬢たちに見送られて冒険者ギルドを出たが、扉をくぐる時に背後から大きな怒鳴り声が聞こえた。



◇◆◇



 ピャチの街はV字型につながった山脈の底に位置し、周辺で良質な鉱石が採れるために鍛冶が盛んだ。今回取り除く予定の岩も鉱石としての価値があるみたいなので、街の近くまで運んで引き渡す手はずになっている。



「一つ気になってるんだけど、リュウセイ君の頭の上に乗ってる緑色の物体は何かな」


「そういえば紹介を忘れていたな、この人は緑の精霊王でバンジオというんだ」


『お主のことはこの者たちに色々聞かせてもらっとる、よろしく頼むぞ』


「えっと、精霊王って創世神話に出てくるような存在だよね?」


「見たことある人まずいない伝説の存在、今はうちの家族、一緒に住んでる」


『この者たちにはとても世話になっておってな、今回の旅の目的は他の精霊王に会うためなのだ』


「一緒に住んでるって……

 他の精霊王に会うって……

 怖い、やっぱり流れ人って怖い……」



 マラクスさんの表情が抜け落ちてしまったので、クリムとアズルの二人に手を引いて歩いてもらうことにする。精霊王といっても、うちでは普通におじいちゃん扱いしてるし、一緒に旅を続けていれば慣れてくれるだろう。



「それより肩車しようか、ライム」


「わーい、とーさんありがとう!」


「今日も一か所険しい道があるんだよね、お兄ちゃん」


「マラクスさんがこの状態だから詳しくはわからないが、事前に聞いた情報では狭い山道を歩くことになる」


「辛かったらリュウセイにお願い、していい?」


「抱っこでも肩車でもするから、遠慮なく言ってくれ」



 ソラも平地は頑張って歩くみたいなので、山道に差し掛かったら抱っこして運ぼうと考えてる。それまでは、またみんなの肩車をする事になりそうだ。



「最近、立て続けにお出かけできるから、すごく楽しいよー」


「三人目の精霊王さんも、私たちの行ったことのない場所にいるといいですね」


「われも広い世界を見てみたいと思っとったし、みなと一緒になってからとても充実しておるのじゃ」


「お風呂に入れないのは残念ですが、私の生活魔法が役に立つのはちょっと嬉しかったりします」


「みんなのその前向きな姿勢は素敵ね」


『儂らの都合につき合わせておるが、そう捉えてもらえると嬉しいものだな』



 今回はマラクスさんも同行することになって、みんなもこの旅を楽しみにしていた。話したいことも沢山あるだろうから、早く現実世界に戻ってきて欲しい。


 クリムとアズルに手を引かれるまま歩き続けるマラクスさんの方に、そっと視線を投げかけてみた……



◇◆◇



 しばらく歩いているうちにマラクスさんの表情も元に戻り、お昼を食べた後は完全にいつもの調子を取り戻していた。やはり真白の料理が一番効果が高い、さすがだ。


 そして今日の難所の一つである、細い山道をみんなで歩いている。俺たちは直前までシェスチーにいたので知らなかったが、この道で落石が発生したのは周知されていて、他の通行人は誰もない。



「ご主人さま、もっとくっついてもいいですか?」


「遠慮しないでしがみついて構わないからな」



 ソラを抱き上げた腕と反対側にアズルがギュッとしがみついてくると、ほんのりまろやかなものに包まれる。



「アズルちゃんは高い場所が苦手だったんだね」


「この世界に来る前のまだ仔猫だった頃に、高い場所から川に落ちかけたんです」


「私も一緒だったんだけど、アズルちゃんだけ苦手になっちゃったんだー」


「でもこうしていると全然怖くありません、ご主人さまのおかげです」


「アズルの顔は楽しそうにも見えるのじゃが……」


「そんなことないですよスファレさん、今にも倒れてしまいそうです」



 いま歩いている道は、人が三人くらい並んで歩ける幅があって、当然ガードレールや手すりのようなものは付いていない。標高は徐々に高くなっていて、落ちたら無事ではすまないような場所まで来ている。



「この高さまで来ると、道の端には行きたくないですね」


「掴まる場所も無さそうじゃし、落ちたら下まで一直線なのじゃ」


「うぅ~、スファレさん、あまり怖いことを言わないでください」



 さっきまでは大丈夫そうだったが、落ちるという言葉を聞いて身震いしている。腕を少し曲げて手招きするように動かすと、その意図を察したアズルは手を繋いでしがみついてきた。



「アズルおねーちゃん、大丈夫?」


「ご主人さまに手を繋いでもらったから、もう大丈夫です」


「すまんすまん、脅すつもりはなかったのじゃ」


「私とヴェルデちゃんは飛べるから大丈夫だけれど、ネロちゃんは怖くないかしら?」


「ピピピ?」


「なぁーう」


「ネロも高い所は問題無さそうだな」



 マラクスさんの心が復帰してから呼び出してもらったネロは、俺の肩にぶら下がってのんびりした鳴き声を上げた。こうして呼び出したまま旅をすることは無かったみたいだが、何となく楽しんでくれている感じがする。



「この道って崩れたりしないのかな?」


「今までそんな事故はなかったから、安心しても大丈夫だよ、マシロちゃん」


『危なそうな場所は精霊たちに直してもらうので、安心して進んで良いぞ』


「われにも精霊の気持ちが伝わるようになっとるし、二人で気をつけておれば大丈夫なのじゃ」


「この道を選ぶ人は大抵同じことを思って不安になるんだけど、このパーティーだと全く心配いらないのが凄いよ……」



 存在自体が伝説級の精霊王と、その祝福を受けた歴史に名を刻むほどの人物が付いてるから、道中の安全性がかなり高くなっている。アズルもかなり平常心を取り戻してきているし、こうして何度も経験すれば少しづつ慣れてくるかもしれない。



「この道はどれくらい続くんだ?」


「もう半分以上過ぎてるから、直に下りになるはずだよ」


「平地に付いたら野営の準備をしようか」


「かーさん、今日のばんごはん何?」


「今夜はカレーパンだよ!」


「私が収納してるから、出来たてを食べられるわよ」


「やったー! ありがとう、かーさん、ヴィオレおねーちゃん」


「このパーティーとの旅に慣れてしまったら、僕はこれまで通り仕事を続けていけるか、不安になってしまうね」



 食べることと休むことには全力だからな、うちのパーティーは。その点に関しては持てる力を全て使って、決して自重しないようにしている。


 野営用の小屋も、中のベッドをイコとライザに部屋の幅いっぱいまで拡張してもらい、大きなテーブルと排他的に使うようにしている。おかげで前回訪れたシェスチーへの旅は快適だった。



「ヴィオレさんのおかげで色々な作りおきが食べられますから、存分に楽しんでくださいね、マラクスさん」


「僕を逃げられないように、しようとしてないかい?」


「大丈夫、もう手遅れ」


「ソラちゃん!?」


「ベッドもイコとライザに作り変えてもらった一点物だし、美味しいものを食べてぐっすり休んで諦めてくれ」


「リュウセイ君までそんな事を言いだしたら、僕の味方は居なくなってしまうじゃないか」


「深い沼に引きずり込まれているようね」


「護衛を置いてきたのは失敗だったかも……誰か助けて」



 王都に来てから二度も泊まりに来ているし、こうした冗談を言い合える間柄になったのは嬉しい。今度の旅も楽しくなりそうだ。


今回の旅で食事時に誰かとすれ違う事はありません(笑)

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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