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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第11章 湯けむり創製事件、乳白色の湯殿でメイド妖精は見た!

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第123話 シェスチーの街

誤字報告ありがとうございました。

元になるテキストファイルは修正してたのに、投稿のほうが直ってないという現象が!

もし同じ報告を二度してくださっていたなら、多分こちらの操作ミスです。お手数をおかけして申し訳ありませんでした。


◇◆◇


新章の開始になります。

妹ちゃんは相変わらずですが、今回は主人公もやらかします(笑)

お楽しみに。

 緑の精霊王バンジオが結界に閉じ込めていた邪魔玉(じゃまぎょく)を浄化し、一緒に旅をする事になってからはトラブルもなく、いよいよ北部地域にある最大の街シェスチーにやってきた。



「街が見えてきたぞ」


「日本の温泉街みたいに、周りは山ばかりかと思ってたんだけど、ぜんぜん違うね」


「すごく大きいよ、とーさん」


「ここはお湯の湧き出す源泉があって、そこから川のように流れてるんだ。それに沿って街ができてるから、すごく細長いらしい」


「お湯の川とは面白いのじゃ」


「お湯が流れてるなんて暖かそうです、今度は冬にも来ましょう、ご主人さま」


「ここからでも湯気が見えるし、寒い時期は真っ白になりそうだねー」


「そんな風景も幻想的だろうし、絶対見に行こうな」



 蒸気機関が発達した世界で、街はいつも水蒸気に覆われているみたいなシチュエーションは、映画やゲームっぽくて良いかもしれない。探偵とか居たりするんだろうか?



『水が豊富で精霊たちも多いようだ、みな元気そうに飛び回っとる』


「温泉に棲み着く妖精はいないはずだけど、一度ゆっくり散策してみたいわね」


「なんだか変わった匂いもしますけど、これも温泉のせいですか?」


「多分、温泉に含まれてる薬効成分の匂いだろう」


「お肌がツルツルになったり、保湿効果があったりするから、のぼせる寸前までお湯に浸かろうね、コールさん」


「ツルツルになったリュウセイの筋肉、存分に堪能する」



 ソラはそっちに興味があるのか。微妙に筋肉フェチみたいなところがあるが、アージンの街にいたマッチョ治癒師に会わせたら、どんな反応を示すだろう。あの濃いキャラクターだと、人見知り気味のソラにはキツイかもしれないが……



◇◆◇



 入場手続きも無事に終え馬車の返却に行ったが、長旅を終えた後とは思えない馬の状態に、店の人が驚いていた。毎日清浄魔法をかけてブラッシングを欠かさなかったと告げると、一枚のカードを渡してくれた。


 なんでも優良顧客に渡しているメンバーズカードのようなもので、利用回数や実績に応じて割引などの優遇措置が受けられるみたいだ。この先旅を続ける時に助けになるので、ありがたく受け取らせてもらった。


 二頭の馬も名残惜しそうにしていて後ろ髪を引かれる思いだったが、別れを告げて街へと繰り出す。


 湯気の上がる川の両岸に建物が並び、対岸に渡る橋の数も多い。全ての宿が川からお湯を引き込み、湯船にためて排水路に流すという、源泉かけ流しになっている。



「大浴場付きの宿ばかりじゃな」


「そのせいか大きな建物ばかりですね」


「川の水がまっしろだけど、だいじょうぶなの?」


「これは体に良さそうな成分が入ってる証拠だよ、ライムちゃん」



 川の水は入浴剤を入れたように真っ白で、いかにも効能が高そうな感じだ。濃度もそれなりにあるみたいなので、首まで浸かってしまったら、変に意識しなくても済みそうなのはありがたい。



「あるじさまー、水着みたいな服を売ってるお店があるよ」


「どこかで泳げるんでしょうか?」


「あれはお風呂に入る時に使う湯浴(ゆあ)みという服だから、共同浴場とか露天風呂があるんじゃないか?」


「なにそれ最高すぎだよ! 今すぐ探しに行こう、お兄ちゃん!!」


「あらあら、マシロちゃん大興奮ね」



 アージンのギルドにいた北部出身の受付嬢は、この街に住んでいたわけではなかったので、グルメ以外の詳細な情報は聞けなかったが、現地に着いてからの楽しみが増えて、かえって良かったかもしれない。


 街の案内板を確認すると大きな共同浴場が三ヶ所あり、そのうちの一つが混浴になっているみたいだ。川下にある一番大きな所が、河原を利用して湯船を作った露天風呂と書かれていた。


 貸切温泉のある【白煙(はくえん)秘湯(ひとう)】という宿は上流の方にあり、その更に先には源泉の湧き出す場所があるようだ。


 導かれるように共同浴場に行こうとする真白を引っ張りながら、まずは源泉の湧き出す場所に行ってみることにした。



◇◆◇



 その場所は大きな崖になっていて、壁の裂け目から勢いよくお湯が湧き出している。あまり人の来ない場所なのか俺たち以外に誰もいないが、コンコンと湧き出すお湯を高台から見学できるようになっていた。



「湧き出してるお湯、あまり白くない」


「ソラおねーちゃん、向こうにいくと、どんどん白くなってるよ!」


「地中にあったお湯が外に出ることで、空気に触れたり圧力が変化したりして、色がつくみたいだな」


『このような自然現象に関心を向けることはなかったが、なかなか(おもむき)があって良いではないか』


「あなたは大地を司っている精霊だものね」


『水を司っとるのは、モジュレだからな』



 緑の精霊王が大地を司り、青の精霊王は水を司っていて、赤の精霊王は大気を司ってるんだったな。ここは水場だし、バンジオがあまり興味を向けてなかったのも仕方ないだろう。



雄大(ゆうだい)な眺めでいい場所だね」


「お湯が出てくる所だけ白くなってるけど、あれはどうしてー?」


「何かがくっついてる感じですね」


「あれはお湯に含まれている成分が固まったからだな。俺たちの国で使っていた言葉だと、お湯に植物の花と書いて“湯の花”と言うんだ」


「まあまあ、お湯なのに花が咲くなんて面白いわ」


「リュウセイとマシロ、本に載ってない事いっぱい知ってる」



 日本の温泉地だと、あれを粉末にしたものを入浴剤として売っているが、この世界ではどうなんだろう。後で雑貨屋とか覗いてみよう。



「この世界にこんな素敵な場所があったなんて、ちょっと感動してしまいます」


「ピピピー」


「われも森で引きこもっておったら見られなかったものを、次々体験できて嬉しいのじゃ」


「他にも綺麗な風景や美しい自然はあるだろうから、色々なところに行ってみような」



 景色に見とれているコールとスファレの頭にそっと手を置くと、嬉しそうな顔でうなずいて寄り添ってくれる。俺たちはしばらくの間、この風景を眺め続けていた。



◇◆◇



「お兄ちゃん、これからどうする? 混浴? 露天風呂? それとも貸切温泉?」


「落ち着くんだ真白、どの選択肢もお風呂に入ることだぞ」


「温泉にかけるマシロの情熱は、凄まじいものがあるのじゃ」


「このこだわり、見習いたい」



 ソラも好奇心が振り切れると暴走するし、あまり変なことは見習って欲しくないんだが……



「さっき確認したら、この場所に転移できるようになってたから、どこかでお昼を食べて家にいるみんなを誘って泊まろうと思うんだ」


「バニラちゃんもいっしょに泊まれるの!?」


「前に会った白蛇も少しくらいなら聖域を離れても大丈夫だったし、調子が悪くなるようだったらすぐ家に帰れるから、連れてこようと思ってる」


『霊獣を聖域の外に連れ出したいのか?』


「一晩だけでも外泊させたいと考えているんだが、問題が発生しそうか?」


『聖域の力を十分蓄えておれば問題ない。どの程度離れても大丈夫かは、儂が見てやろう』


「助かるよバンジオ、よろしく頼む」


「ありがとう、バンジオおじーちゃん」



 さすが大地を司る精霊王だけあって、心強い言葉を聞くことが出来た。イコとライザは、王都程度の広さなら単独で家から離れても問題ないし、俺たち家族が一緒なら遠方でも限定的に力を行使できる。バニラを誰かの守護獣として紹介してしまえば、泊まるときも文句は言われないだろう。


 少し遅めのお昼を食べるために、近くにあった麺料理が有名だという食堂に入って、おすすめの料理をいくつか注文してみた。



「あるじさまー、この細長いのってどうやって食べたらいいのー?」


「私の方は平たくて長い麺が入ってます」


「一度に多く取りすぎないようにフォークで持ち上げて、スプーンの上でくるくる巻いてひと塊にすると食べやすいぞ」



 二人の前に運ばれたのは、元の世界にもあったようなロングパスタだった。クリムのほうが細麺で作ったナポリタンのような料理、アズルのほうが平麺に濃厚なクリームのかかかった料理だ。



「ライムのはスープに中に、いろんな形をしたのが入ってて面白いよ」


「われの料理は幅のある輪になっておるから食べやすいのじゃ」



 ライムはいろいろな形をしたショートパスタと野菜の入ったスープ、スファレには茹でたリング状のパスタを肉や野菜と炒め合わせたような料理が運ばれてきた。



「私の麺はすごく太いんですが、モチモチしてて美味しいです」


「俺たちの世界にあったうどんより太いな」


「さっき少し食べさせてもらったけど、ニョッキに近い感じかな」



 真白によるとイモと小麦粉を混ぜ、麺状に伸ばして作っているようだ。パスタより太さはあるが柔らかく、それを少しづつ口に入れて美味しそうに食べている姿が可愛らしい。



「俺のは焼きそばって感じの料理でなんか懐かしく感じるよ」


「私のはスープパスタというより、ラーメンみたいな料理だね」



 俺の前に運ばれてきたのは、焦げ茶色のソースが焼けて香ばしい匂いがする麺料理で、真白には細いストレート麺が入ったスープパスタが運ばれてきた。澄んだ色のスープに麺が沈み、上に具材が乗っているので、ラーメンみたいというのは(うなづ)ける。



「この街で色々な麺を買って帰ろうね」


「かーさんのめん料理たのしみにしてるね」


『毎回食事でこうも盛り上がっとるのを見ると、儂もなにか食べたくなってしまうな』


「私も蜜以外の味がわからないのを、残念に感じることが多くなったのよ」



 バンジオには口がついてないから仕方ないと考えていた時、ふとクリオネと同じ捕食シーンが浮かび慌てて頭から追いやった。いくら形が似てるといってもアレはないな、二度と思い出さないように封印しよう。


 日本とは違う麺料理を存分に堪能し、一度王都の家へ帰ることにした。


ソラが好きなのは細マッチョで、ガチムチは嫌いです(笑)

筋肉ヒーラーが来たらきっと逃げ出すでしょう。


この世界ではショートパスタもロングパスタも、まとめて麺料理と呼びます。

筆者も茹でたロングパスタに、焼きそばソースをぶっかけて具と一緒に炒めたりします。案外美味しいですよw

(パスタを茹でるときに重曹を入れると更に焼きそばっぽくなりますが、無くても十分焼きそばもどきです)

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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