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色彩魔法 ~強化チートでのんびり家族旅行~  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第10章 北へ行こう、ランララン

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第122話 新たな目的

誤字報告ありがとうございます。

名前の取り違えも多い(汁;


◇◆◇


この章の最終話になります。

 緑の精霊王バンジオを心配して、緑竜のグンデルが会いに来てくれた。挨拶や自己紹介をして色々話を聞いたが、グンデルは精霊との相性がいい竜らしい。


 スファレのように姿として捉えられないが、気配は感じられる。その感度は一般的なエルフと同じくらいだが、竜族だけあってかなり広範囲のことがわかるようだ。



「それじゃあ、赤の精霊王と青の精霊王も気配が見つからないのか」


『あたいはまだ地脈の小さな(よど)みしか直せなくてさ、結構あちこち行くからじーちゃんたちの気配を感じるたびに挨拶に行ってたんだよ。でも、去年から三人とも気配を感じなくなって、凄く心配してたんだ』


『結界を張るのにかなり力を使うのでな、その影響で気配が希薄になっておったのだろう』


「つまり邪魔玉(じゃまぎょく)、他の場所にもある可能性高い?」


『もしどこにも気配を感じんようなら、儂のように結界に力を使っておるやもしれんな』



 邪魔玉の発生や悪魔の呪いも、去年の夏頃に集中している。それは俺がこの世界に転移してきた時期と一致するし、世界の意志がその解決を望んでいたのなら、力を貸してあげたい。



「お兄ちゃん、私たちがこの世界に呼ばれた理由って、これに関係してないかな」


「真白もそう思うか?」


「偶然にしては出来すぎだもん、それにたとえ関係なくても浄化はしてあげたい」


「とーさん、ライムも助けてあげたい」



 これが何かの意図があって引き起こされているなら原因の根本から絶ちたいが、手がかりが全く無い今は対処療法的に当たっていくしかないか……



「俺もできる限り協力したいと思うが、みんなはどうだ?」


「リュウセイさんたちが私にそうしてくれたように、誰かが困ってるなら助けてあげたいです」


「ピピピーッ」


「私も邪魔玉って嫌いだし、あるじさまに何処までもついていくよー」


「あの感じは不快ですから、もちろん私もご主人さまにお供します」


「邪魔玉、この世界にあるの良くない、無くす手伝いしたい」


「どこかが聖域と同じような目にあってるなら、なんとかしてあげたいわね」


「精霊の存在を脅かしとるなら、見て見ぬ振りはできんのじゃ」



 やはり誰からも反対意見は出なかった。俺たちがここに飛ばされた事情や、この世界の思惑に巻き込んでいるかもしれないのは申し訳ないと思うが、本当にいい仲間が集まってくれた。



「みんなもこう言ってくれてるし、もしどこかでバンジオと同じように邪魔玉を封印し続けてくれているなら、その苦労を終わらせたいと思う」


『儂らのためにすまんな、感謝するぞ』


『じーちゃんが祝福を与えたっていうのが良くわかったよ、みんな本当にいい人たちだね』


「問題はその場所をどうやって探すかだよね」


「確かに真白のいうとおりだな。今回みたいに、偶然通りかかかった時に精霊の存在に気づくような幸運は、そうそう訪れないだろう」


『それは儂の方で精霊たちに協力してもらう、お主たちは普段どおりの活動をしてくれれば良い』


『あたいも他の竜族に聞いてみるから、何かわかったら伝える方法を考えるよ』



 こうして俺たちは、残る二人の精霊王の行方を探すことになった。



◇◆◇



 グンデルと別れて街道に戻り、荷台を取り出して馬を繋ぎ全員で乗り込んだ。思いもかけないイベントだったが、竜族に会えたり精霊王に出会って祝福をもらえ、更に一緒に旅をすることになるという、目まぐるしい展開を体験できた。



「二人もやっと落ち着いてきたねー」


「私たちだと話ができますから恐怖はあまりありませんけど、あの大きさで上から見られたら怯えてしまうのも無理ありません」


恐慌状態(パニック)になって逃げ出さなかったのは、近くにクリムとアズルが付いていてくれたおかげだ」



 御者台に座った二人の頭を撫でると、嬉しそうにしっぽを動かして俺の体にそっと触れてくる。よく並走したり手綱を持って先導したりするので、二頭の馬はクリムとアズルに一番懐いていた。そんな二人が顔や頭を撫でてくれていたので、落ち着いていられたのは間違いないだろう。



「竜族に会った馬なんて、きっとこの子たちしかいないわね」


「ピピーッ」


「この出会い、いつの日か、二人のいい思い出に変わる」



 膝の上に座ったソラは、歌詞に出てきそうなフレーズを口にしているが、本当にそうであって欲しい。馬車を引く二頭を見る限り、頭の上にヴェルデとヴィオレを乗せて機嫌よく進んでいるので、もう思い出に変わっているのかもしれないが……



「お兄ちゃん、シェスチーに付いてからの予定に変更はないの?」


「どこか転移できそうな場所を覚えられたら、一旦王都に戻ってみんなで温泉に行くぞ」


「楽しみだね、かーさん」


「たとえ世界の危機が訪れたとしても、お兄ちゃんとの混浴だけは諦めたくないからね!」


「その時は温泉どころではない気がするんですが……」



 コールのその気持は良くわかる、だが真白の情熱はそのくらいでは止まらないのも知っている。その意気込みをもっと別の方向にむけられないかと思ったこともあるが、元の世界にいた頃から俺にとってもいい結果をもたらしているので、好きにやらせておくのがベストだ。



『邪魔玉の件は儂らの都合に巻き込んでしまっておるのだから、たとえ流れ人としてこの世界に来た理由があろうと、責務に囚われすぎた挙げ句、お主たちの大切なものを(ないがし)ろにせぬようにな』


「われのように良き出会いに恵まれることもあるじゃろうし、気負いすぎずにやるのが肝要なんじゃろう」


「良い出会いという点では、既にもう達成してる気がするよ」


「ライムはとーさんやかーさんや、おねーちゃんと出会えてしあわせ」


「私もお兄ちゃんのいる場所に転移してもらってるし、今の家族に出会えたことって本当にその通りなんだよね」



 真白の言葉にみんなが同意しているが、何かの意志に導かれたのだとしても、結ばれた絆は本物だと断言できる。



「いくら世界の意志だとしても、人の心まで支配することは出来ないから、俺はみんなと出会えて良かったと、自信を持って言えるよ」


『リュウセイの言うとおりだ。お主たちほど強い信頼関係は、決して何者にも作れるものではない。それは、出会って間もない儂でもわかる。その点は努々(ゆめゆめ)忘れてはならん』


「妖精の私や精霊王の心も動かしてしまうなんて、なかなか出来ることじゃないものね」



 ソラが手綱を持つ俺の手に自分の手を重ね、クリムとアズルが左右から肩に頭を乗せてくる。

 日本にいたらまず手に入らなかったものを、この世界は俺にくれた。恐らく真白も同じようなことは思っているだろう。そんな世界のために役に立てるなら、できるだけ力を貸そう。



◇◆◇



 午前中に絆や縁の話をしたからだろう、お昼ごはんを食べた後はみんなで歩こうという話になった。すっと平地が続いているし景色もいいので、荷台を収納して馬を引きながらのんびり進んでいる。



「次はわれの番なのじゃ」


「私の代わりに、馬の背中に乗るー?」


「ありがとうクリム。そのまま馬、乗せ換えて」


「わかった、気をつけて乗り移るんだぞ」



 クリムが馬の背中から飛び降りたので近づくと、肩車をしていたソラが器用に乗り移る。それを確認してしゃがみ込み、(また)がってきたスファレの小さな体を持ち上げた。



「やはり肩車は外でやってもらうのが一番なのじゃ」


「王都でやると目立ってしまいますしね」


「コールの言うとおりなのじゃ、われもライムやソラほど背が低ければと、何度思ったかわからんのじゃ」


「小人族に生まれた意味、リュウセイの肩車にあった」



 ライムやソラをしょっちゅう乗せて歩いているせいか、家族全員が肩車に特別な思い入れを持ってしまっていた。やはりこれも午前中にした話の影響だろう、今は身長順に全員の肩車中だ。



『これは特別な儀式のようなものなのか?』


「みんなリュウセイ君に甘えてるだけだから、あなたが考えるような大それたものじゃないわよ」


『他の種族の考えることは、よくわからんな』


「見る位置が変わると、世界が変わるんだよー」


「ライムちゃんが魔法で同化する時もこの姿勢ですが、ご主人さまと一体化した感じがするので大好きです」


「抱っこも好きだけど、やっぱりかたぐるまのほうが好き!」


『儂にもお主たちのような体があれば体験してみたいところだが、このような(なり)では不可能なのが残念だ』



 スファレによると普通の精霊は光る球体に見えるそうだし、バンジオの体型はクリオネと同じで足がない。そんな人物がこうした行為を見ると、やはり不思議なことをしているように見えるみたいだ。



「どれ、次はコールじゃな。交代するのじゃ」


「もういいんですか? スファレさん」


「われは昨夜、リュウセイを独占してしもうたからな、その分コールは存分に可愛がってもらうといいのじゃ」



 スファレが肩から降りて代わりにコールが乗り、落ちないように少し足に力を入れてくる。スレンダーなスファレよりふっくらとした、太ももの柔らかさを感じながら歩き始める。



「やっぱりこの感覚は、なんど体験してもいいですね」


「御者台に立っても同じくらいの高さになると思うが、やはり違うものか?」


「伝わってくる振動も違いますし、何よりリュウセイさんのぬくもりを、直に感じられるのがいいです」


「今日のコールさんはちょっと大胆だね!」


「そうでしょうか?」



 肩の上に座ってるのだから、色々と思い当たるところはあるが、きっと真白は深読みしすぎだ。コールも徐々にスキンシップに慣れてきてるんだから、変に意識させるような事はしない方がいい。



◇◆◇



「思う存分体験させてもらいました、ありがとうございます、ご主人さま」


「とうとう私の順番だね、よろしくお兄ちゃん」


「別に疲れたりしてないから、いくらでもやってやるぞ」



 足と腰に力を入れて、(またが)ってきた真白を持ち上げる。女性陣の中で一番体格のいい真白だが、体重は驚くほど軽い。それでも肩や首に触れる感触は、最も女性らしい柔らかさがあった。



「かったぐるまっ♪ かったぐるまっ♪」


「かーさん、ライムと同じ歌だね」


「ライムちゃんがいつも楽しそうに歌ってくれるから、お母さんも真似してみたんだ」



 俺が抱っこしたりすると毎回はしゃいでいるが、今日はいつもよりちょっとテンションが高い。



「真白はお腹いっぱいご飯を食べてるか?」


「この世界で体重は測れないけど、日本にいた頃とあまり変わってないと思うよ」


「ちょっと軽く感じただけだから、ちゃんと食べて健康に問題がないんならいいんだ」


「この世界に来てから、よく走ったり剣の素振りをしてるから、きっとお兄ちゃんに力がついてきたんだよ」


「確かに水泳をしていた頃とは、筋肉の付き方がだいぶ変わったな」



 広い庭付きの家を手に入れてから、クリムとアズルやコールの前衛組と模擬戦をやったり、多目的ルームで剣を振ったりしているが、その成果が出てきたってことだろうか。



「われは他の種族はよくわからんのじゃが、風呂場で見た限り程よく鍛えられとったな」


「リュウセイさんが花の咲いていた聖域で泳いだ時は、少し見とれてしまいました」


「温泉ではじっくり観察しようね!」



 観察って何を言ってるんだ真白は、俺を研究対象みたいに扱うのはやめてくれ。



「温泉で抱っこしてもらう、筋肉直接触る」


「私もリュウセイ君の肩や胸に、直接寝そべってみようかしら」


「ヴィオレまで何を言い出すんだ……」


『お主たちは見ていて本当に飽きんな、集団で移動するのが楽しいと思ったのは初めてだ』



 バンジオも楽しんでくれているなら何よりだが、温泉の話が盛り上がりすぎて場が混沌としてきた。もう混浴の流れは絶対に止められそうもないし、今から覚悟を決めておこう。水着は着てもらうけどな。


新しい目的が出来ましたが、まずは温泉。

真白の野望がいま羽ばたく(とき)


◇◆◇


資料集のサブキャラ欄の竜族に緑竜グンデルを追加しました。

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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