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第100話 メイドの活躍

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

この作品もとうとう100話まで到達しました。

毎回イチャコラしてるだけですが、物語も少しづつ前に進んでします。

 公園で散歩をしていると、家に帰る途中のマラクスさんと偶然出会い、そのまま家まで来てもらうことにした。三人で手を繋ぎながら門の前についたが、家を見たマラクスさんはやはり驚いているようだ。



「なんだか新築みたいな家だけど、高かったんじゃないのかい」


「ここは郊外だし、こう見えて古い家だったから、自分たちの手持ちの資金で買うことが出来たよ」


「こうやってしっかり補修して売るのは、さすが白銀(はくぎん)土地建物商会だね」



 確かに掃除や手入れも行き届いていて、とてもいい状態で売ってもらっている。しかしその後に家の妖精が二人宿ってくれたので、外観も内装も新築同然までリフォームされた。



「ただいまイコ、ライザ」

「ただいま戻りましたイコさん、ライザさん」

「ただいまイコちゃん、ライザちゃん」

「ピピッ!」

「お邪魔します」


「お帰りなさいませなのです、旦那様、コール様、ヴィオレ様、ヴェルデ様」


「お帰りなさいませですよ、皆さま」



 この二人は敷地内に誰か来たら感知できるらしく、いつも真っ先に玄関で待っていてくれる。



「そちらの女性はお客様なのですか?」


「ようこそですよ、お客様」


「あの、リュウセイ君? 僕ちょっと自分の姿に自信がなくなってきたんだけど……」


「イコちゃんとライザちゃんは家の妖精だから、私と同じであなたのことも気づくわよ」



 普通にしてれば本当にイケメンだから心配は無用だと思う、とにかく相手が悪すぎるだけだ。



「この人は以前旅の途中でお世話になったマラクスさんだ」


「私は家の妖精のイコなのです、よろしくお願いしますなのです、マラクス様」


「同じく家の妖精のライザですよ、よろしくお願いしますですよ、マラクス様」


「妖精が二人も増えた!?」



 厨房にも話し声が聞こえたようで、真白が玄関ホールに出てきて、一緒についてきたバニラが俺の胸に飛び込んでくる。知っている人物が出てきたからか、マラクスさんの顔もホッとした表情になっていた。



「キュキュー」


「バニラただいま」


「キュー」


「お兄ちゃんお帰りなさい、それにマラクスさんじゃないですか、お久しぶりです」


「突然お邪魔してしまってごめんね、マシロちゃん」


「マラクスさんなら大歓迎ですよ、いま晩ごはんを煮込んでますから、食べていってくださいね」



 晩ごはんという言葉と漂う匂いのおかげで、マラクスさんの顔にも色が戻ってきた。今夜は思う存分カレーを楽しんで欲しい。



「リュウセイ、みんな、お帰り」


「ただいまソラ」


「リュウセイ分の補給」


「えっと、こちらの女性と白い動物も紹介してもらって構わないかな」



 ソラが真白みたいなことを言って抱きついてくる、それよりまだ靴も脱いでないから、家に上がってちょっと落ち着こう。



「玄関に立ちっぱなしで話を続けるのも何だし、みんなでリビングに行こう」


「マラクスさん、この家は野営で使った小屋と同じように、靴を脱いで上がるのでお願いします」


「わかったよ、それじゃあ、お邪魔するね」



 全員で靴を脱いでリビングに向かおうとした時、イコとライザから待ったがかかる。



「旦那様、不審者を捕まえたのです」


「塀のすみっこにコソコソ隠れていたですよ」



 玄関の扉を開けると、目立たない色の服を着て目の部分以外を布で覆った、見るからに怪しい人物が二人、結界魔法で捕縛されて転がされていた。何か話をしているみたいだが、音を遮断しているので全く聞こえない。



「あー、えっと、ごめんね、その二人は僕の護衛なんだ」


「それは失礼しましたのです、すぐ結界を解除するのです」


「大変申し訳なかったですよ」


「見つからないように魔道具で姿を隠してたはずなんだけど、妖精って怖い」



 二人の結界内に侵入すると、何をやっても感知されるみたいだしな。妖精に対して変なトラウマが残らないと良いんだが……



「とーさん、バニラちゃんただいまー」


「あるじさまー、いっぱい走ってきたよー」


「今夜はカレーをたくさん食べられそうです」



 捕縛した二人の結界を解除していた時、外に走りに行っていたライムとクリムとアズルが帰ってきた。



「マラクスおにーちゃんもいる、いらっしゃい!」


「ライムちゃん、久しぶりだね」


「そこに寝てるひと、服をうってくれたおねーちゃんと、お肉をくれたおにーちゃんだけど、どうしたの?」


「そうなのか? ライム」


「うん、ふたりとも見たことあるよ」



 顔はほとんど隠れているが、ライムには誰かわかってしまったらしい。

 凄いなうちの娘は。


 とりあえず場が混沌としてきたので、護衛の二人も含めてリビングで話をすることにした。



◇◆◇



 簡単に自己紹介をしたが、護衛の二人に関しては名前は秘密ということだった。色々と事情がありそうだし深く聞くのはやめて、とりあえず【男護衛】【女護衛】とでも呼ばせてもらおう。



「面目次第もございません……」


「突然何かに捕らわれ、身動きが取れなくなってしまいました……」


「問答無用で捕縛して申し訳なかったのです」


「手加減を忘れてしまったですよ」


「二人ともこの家を守ろうとしてくれていたんだし、あまり落ち込まないでくれ」



 二人をそっと抱きしめて頭を撫でるが、落ち込みが激しいのは二人の護衛の方だ。ソファーの下で正座して、マラクスさんに頭を下げ続けている。



「二人とも頭を上げて構わないよ、僕たちが妖精に勝てるわけないんだし、ここは聖域で守護者までいるんだ、人の力でどうこう出来る場所じゃないよ」


「あの、このことをお館様には……」


「おしおきは嫌です……」


「心配しなくても、お母様には僕の方から説明するよ。それより、ここにいる限り護衛の必要は無さそうだから、ご飯を食べて帰ることを家に伝えてくれないかな」


「承知いたしました」


「我らにお任せ下さい」



 言うやいなや、護衛の二人は窓を開けて外に飛び出した。いつもの癖なのかもしれないが、玄関で靴を脱いだのだから、そのまま外に出ると危ないと思う。



「旦那様、さきほどの二人が玄関に戻ってきてるのです」


「ドアをノックするのを躊躇(ためら)ってるみたいですよ」



 申し訳無さそうに玄関扉の前に立つ二人に靴を渡し、再びリビングに全員集合した。



◇◆◇



 ソラを膝に乗せてソファーに座り、両脇にはクリムとアズルが寄り添っている。マラクスさんはライムを膝に乗せて向かい側に座っているが、ちょっとお疲れ気味だ。公園で再会して以降、色々なことが立て続けに起こってるしな。



「僕たちが出会って半年経ってないはずだけど、どう反応していいかわからないよ」


「まだそれくらいしか経ってなかったんですね、私としては一年や二年くらいに感じてました」


「それくらい濃密な時間を過ごしてたかもしれないな」


「だからリュウセイたちと一緒、とても楽しい」


「確かにそうよね、私も今までにない体験をさせてもらってるもの」



 マラクスさんと出会ったのが黄月(きのつき)の終わりの方で、今が緑月(みどりつき)だから、紫と黒と白を通過して緑もほぼ終了なので、一年が八ヶ月のこの世界では確かに半年くらいだ。



「妖精とか聖域もそうだけど、色々問いただしたい気持ちでいっぱいなんだけどね」


「マラクスおにーちゃん、きょうはライムのお家に泊まったら?」


「それならいっぱい話ができますね」


「いやいや、さすがに着替えもないし、そこまで迷惑を掛けるわけにはいかないよ」



 着替えの問題はあるが、別に泊まってもらうのは構わない。もう性別は全員にバレてるんだし、ここなら気兼ねなく過ごしてもらえるはずだ。覗き見も不可能だし会話も外にもれない、完璧なセキュリティーを誇る家だからな。



「それよりマラクスさんって、お嬢様なのー?」


「護衛が必要って国の要人なんでしょうか」


「あぁ、うん、そのことは当然疑問に思うよね。君たちなら大丈夫だと思うんだけど、こればっかりは僕の一存で話せないんだよ」


「その点についてはご心配に及びません」


「お館様より外泊の許可も頂いております」



 いつの間にかリビングに、ついさっき帰ったはずの二人が入っていた。公園を歩いていた方向からして、マラクスさんの家は貴族街にありそうだが、一体どんなスピードで移動してきたんだろう。それに息一つ乱れていないのは、さすが護衛のプロだ。


 先程までつけていた頭巾のようなものも取り、服も普段着になっているので俺にもわかったが、行商の女性と高級なお肉をくれた男女パーティーのうちの一人だった。



「先程のお二人が戻ってこられたので、ここにお通ししたのです」


「今度はちゃんと門から入ってくれたですよ」


「ありがとう二人とも」



 護衛の二人を案内してくれたイコとライザの頭を撫でると、嬉しそうに微笑んで厨房へと戻っていった。こうして客人が来ることになって実感したが、二人は本当に優秀だ、メイドの鏡と言ってもいい。



「お召し物はこちらにご用意しております()()()()()


「ご身分に関しましても、()()()のお心のままに」


「相変わらず、お母様は先手を打ってくるわね」



 護衛の二人に“お嬢様”と呼ばれ、名前もマラクスではなかった。つまり男性の格好をしている時は、偽名を使っているということだろうか。


 口調も変わっているし、また謎が増えてしまった。


姉妹メイド妖精が万能過ぎる件。

次回は月と水晶の力でメイクアップです(嘘


◇◆◇


最初は妹の手を握りに行くのにも葛藤があった主人公ですが、今では自然に手を取りにいけるようになった辺り、妹の教育の成果ですね(笑)

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後日談もよろしくお願いします!

色彩魔法あふたー
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