五八 全ては、貴方の責任です
私は駅へと歩きながら、弥生から手渡された手紙を開く。
そこには、懐かしい几帳面な文字が並んでいた。嘗は三行以上は書かれていなかったが、今回の手紙は比較的長文だった。手紙は、前置きもなく唐突に始まっていた。
私が嘘をついていたことは、既にお伝えしました。
しかし、塚下さんは捉え違いをしていることでしょう。
私はあえて、あの時にそれを否定することはしなかった。
何故なら、それはもう終わってしまったから。
もう、修正はできないのです。
私は以前、西上を殺さなければ、世界中に殺人ウィルスがばらまかれ、人類は滅亡すると伝えました。
ここが嘘です。
殺人ウィルスなんて、どこにも存在しません。
本当のことを言っても、きっと貴方は信じてくれなかったでしょう。
だから、私は嘘をつきました。
もし本当のことを話していれば、違った未来があったのかもしれません。
でも、全ては終わったことです。
ではなぜ、またこうして貴方に手紙を書いたのかというと、貴方への恨みを伝えたかったからです。
貴方は、恨まれる筋合いなどないと思われるでしょう。
しかし、全ては貴方の責任です。
貴方を恨んでも、なんの解決にもなりはしませんが、私は恨まずにはいられない。
自分を抑えることができません。
西上を殺すことは、必要なことだったのです。
バタフライ効果という言葉を知っていますか。
西上を殺すことは、蝶の羽ばたきだったのです。
あの羽ばたきがあれば、こんなことにはならなかった。
全ては、貴方の責任です。
それだけを、私は知って欲しい。
もう時間がありません。
後悔しながら、その時を待っていてください。