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四九 単なる幸運だ

 帰りの電車の中では、落着きを取り戻すことができていた。

 この一連の出来事が全て仕組まれた詐欺行為であることを、私は認識しなければならない。

 空席の目立つその電車内で、私は考えをまとめてゆく。


 私はあのパンダ目メイクの女子高生に案内され、弥生のアパートへとたどり着いた。

 そして弥生は、私が西上を殺さねばならない状況に陥れる。

 西上は少女売春の常連であり、トラブルを抱えてた。

 パンダ目メイクの少女は、売春リストに載る存在だった。

 最後に、繋がらなくなった携帯。


 以上の情報から導き出される結論はひとつ。

 トラブルメーカーである西上を排除するための駒として、私が選ばれたということ。西上は女の子に暴力を振るったこともあると言っていた。その恨みが動機であろう。

 もちろん、弥生のチカラ、予知能力は全くのイカサマだと考えていいだろう。

 弥生の仲間とは、即ち売春斡旋の組織であると推測できる。

 もし私が、彼らの期待通りに西上を殺していたならば、私は殺人者として警察に追われることとなる。あのテナントビルも一時的な仮の拠点で、売春組織の証拠は一冊のファイルのみ。それさえ運びだせば、組織を追うことはできなくなる。警察は私の証言に耳を貸さないだろう。世界を救うために西上を殺しただんなて供述は、精神を疑われるだけだ。

 そうして弥生の仲間たちは、自らの手を汚すことなく、目的を達することができたわけだ。


 しかし、幸運にも私は直前に気がつくことができた。

 バットを振りかぶったとき、私は明らかな殺意を抱いていた。手元が狂わなければ、西上の頭を西瓜のように叩き割っていたことだろう。裕樹の声に救われたのだ。


 では、なぜその役目に、私が選ばれたのだろうか。

 答えは直ぐに見つかった。

 私の母は、占い師に騙され全財産を失った。そして失意のまま死んでしまった。

 その顧客情報が、裏の世界で流れているのではなかろうか。

 母親が騙せたのならば、その息子も容易に騙せると、奴らが考えたことは想像に難くない。

 学生時代の友人が、身長が伸びるという謳い文句の高額な教材セットを買ったことがある。その後友人には、ありとあやゆる怪しいDMが送られてくるようになった。視力回復、持つだけで幸運を呼ぶ石、ダイエット食品に速読術、英会話学習セット等々。無論、友人の身長は伸びなかった。

 私も奴らからしたら、そうした馬鹿な客に見えたのだろう。

 そして、私は見事に嵌められた。

 殺人者に至らなかったのは、単なる幸運だ。


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