五月一日
五月一日。晴れ、時々曇り。
僕の時計には時針がない。
だから、 僕は今日も時間が分からない。
代わりに僕は日めくりカレンダーを破いて、紙飛行機を作った。
紙飛行機を飛ばして明日へ。
ほら、マザーグースみたいにさ。
風が、彼方へ運んでくれるかも。
五月一日。曇りのち、雨。
僕の時計には秒針しかない。
秒針だけ、時間を刻み続ける。
だから、僕は時間が進んでいることだけは分かる。
秒針だけが、時針を置いて先へ進み続ける。
いっそのこと、秒針も止められたらよかったのに。
秒針もなかったら、きっとずっと時間は止まったまま。
時針を見つけるまでの時間稼ぎが出来たのにさ。
五月一日。雨。
僕の時計には、分針がない。
だから、僕はいつまで経っても時針に追いつけない。
代わりに僕は、時計の螺子だけをぐるぐると回してみる。
針なんてどこにもないのにさ。
五月一日。
今日も僕の時計は動かない。
僕の時計には、時針がない。
秒針はあるのに、分針がない。
時間だけが僕をとり残すように、先へ進み続ける。
秒針だけが、ぐるぐると狂ったように回り続ける。
五月一日。
誰かこの狂った秒針を止めておくれ──。