04話 馬とカエル
借家を追い出されたアインとゲロ助は、重い家財道具を背負いつつ再び酒場へやって来ていた。
「ゼイゼイ…ようやくついた。早いとこ依頼を受けて金を稼がなきゃ、」
「ゲロゲロ…ア、アイン。そんなこと言っていなで早く中に入ろう。強い日差しで炙られて、のどがカラカラだ。私は水が不足すると皮膚呼吸ができなるのだ。もう息が…苦、苦しい…。」
(大丈夫ですか!?ゲロ助さん。)
「…大変だな、カエルってのは。」
アインは息も絶え絶えなゲロ助に手を貸してやると、酒場の入り口をくぐる。酒場には張ったアインはそのままカウンターに一直線に向かい。バーテンダーの男に話しかける。
「とりあえずコイツに水をくれ。あと実入りがいい依頼をくれ、簡単な奴。」
アインに言葉にバーテンダーはゲロ助を見ると突端に嫌そうな顔をする。
「お客さん…亜人の方はちょっと…。」
「なんだよ、差別するのか!」
「他のお客さんが嫌がるんですよ。亜人族はみな魔王軍の配下ですからね。お客さんみたい人間に協力的な亜人がいることも知ってはいるんですが…。申し訳ないですがご遠慮してもらえますか。」
「仕方ないか…。ただ水はくれよ。コイツ水がないと死ぬそうなんだ。」
「外に馬小屋に水のみ場がありますので、そこならご自由にどうぞ。」
「だとさ、よかったなゲロ助。」
「ア、アイン!?貴様はこの私に馬と並んで水を飲めというのか!そのような屈辱を味うくらいなら、私は死を選ぶぞ!」
「そっか、寂しくなるな…。それでオッサン依頼の方は…。」
「ま、待てアイン!?いいのか?私が死ぬんだぞ?これからの冒険はどうするつもりだ。私抜きで戦えるのか!」
「だって嫌なんだろ?無理すんなよ。で、おっさん依頼の一覧を見せてもらえるか?」
アインの言葉にショックを受けたのかゲロ助は、驚き固まる。しかしそんなゲロ助の様子をアインは気にした様子もなくバーテンダーの男と何やら言い合いを始めるのだった。
ゲロ助はしばし逡巡した様子を見せていたが、やがてあきらめたようにがっくりとうなだれるのであった。
「…少し席を外す。」
「ごゆっくり。」
(ゲロ助さん…。)
ゲロ助は、力ない足取りでそのまま酒場から出ていくのであった。