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02話 神獣カエル男とこれまでの話

 俺が神の力を手にしたのは、魔王軍による人間世界の侵略が開始されて間もないころだった。


 次々と亜人たちを支配下に置く魔王に対し危機感を抱いていた人類は、それに対抗するため多くの若者を徴兵し、魔王に抵抗するための軍を編成していた。かくいう俺のその一人であったのだが。


 当時の俺は魔王軍に対して侮るような気持ちはなかったものの、それほど脅威を感じてはいなかった。これでも暮らしていた村では腕が立つ方で、軍の訓練でもなかなかの好成績を残せていたからだ。


 魔王軍が攻めてきてもなんとかなる。そんな俺の楽観は魔王軍の所詮で呆気なく崩れ去った。


 戦場は狂気で満ちていた。魔王軍の奴らは自らの命を顧みることなく、腕を切り落とされようが、胸を突かれようがまるで意に介さず襲いかかってきたのだ。


 文字通り死に物狂いで襲いかかてくるその凶行に、人類軍は完全に飲まれてしまった。魔王とのそれほどまでに恐れる存在なのかと。


 恐怖に駆られた人類に勝ち目はなかった。オーク、ワーウルフといった力を持つ種族はもとより。人類より力が弱いゴブリンですらまるで恐ろしい怪物であるように見えてしまったのだ

 もともと徴兵で無理やりあつめられた士気の低い民間人で構成されている軍は、想像以上にもろく、開戦から1時間と待たず我先に逃げ出す烏合の衆と化していた。


 俺?もちろん戦ったよ。勇敢にな!逃げ惑う人たちを救うため、殿としてやたら臭い息を吐くカエル男と3時間にわたる死闘を繰り広げたからな。


 へ、カエル男とか弱そうだって?…バッカ!何言ってんだよ!相手はカエルだぞカエル!カエルなめんな!


 …いや、まじで強かったんだよ。なにせ俺の光速を超える剣戟を一撃で見切ったんだからな!カエルの恐るべき身体能力と人類を超える英知を宿した驚異の怪人だったんだよ!あとやたらと息が臭かったし…。


 …まあ、そんな神の領域に片足を突っ込んだ恐るべきモンスターとの死闘の結果は、俺はカエル男と相打ちになった。


 奴の神々の作り出した武器にも匹敵するであろう鋭い舌は見事に俺の心臓を貫き。俺の剣は奴の肛門に深々と突き刺さっていた。


 …言いたいことは分かるけど、少し我慢をしてくれ。俺だってそんなところに刺したかった訳じゃないんだ。肛門以外にまったく隙がなかったんだ。信じてくれ。



 …話がそれたな。まあ、そんなわけで俺は命を落としたわけなんだが、薄れいく意識の中美しい声が聞こえたんだ。世界を救って欲しいというアルトセリアさんの声がな!


 なんでもアルトセリアさんはこの世界を生み出した神々の一人らしく、魔王によって支配されようとしていた世界を救うための救世主を探していたらしい。


 おそらくカエル男の死闘を見ていたアルトセリアさんは。俺の潜在的な英雄の素質を見出し、救世主として選んだのだろう。いや流石は神だね!数多くの人類の中から俺を選び出すとはお目が高い!まいったね、こりゃ。


 …ちょっと待って。おいアルトセリアさん!今アンタから何か悔やむような感情が流れ込んできたんだが…気のせいだよな?


 神の力を一部譲り受けるため、アルトセリアさんは俺の精神に融合を果たしたのだが、それ弊害としてアルトセリアさんの考えていることが何となくわかるようになってしまった。


 大抵は何かを憐れむような、後悔するような感情なんだが…まあ神っていうくらいだし、下界のアホな人間どもに何か思うところがあるのだろう。まったく、他のダメ人間どもは勇敢で聡明でカッコいい俺のことを少しは見習うべきだろう。


 まあそんな感じで、神に選ばれた俺は蘇り、アルトセリアさんの情報をもとに魔王軍四天王の一人ゴクアークと戦い見事に打倒した。


 魔王軍の統率を担当していたゴクアークが死んだことで、魔王軍の指揮系統は乱れ散り散りになって逃げていた。あとアルトセリアさんの情報によると四天王を簡単に倒した俺のこと魔王はかなり警戒したらしく。人類への侵攻を先延ばしにして、俺のことを調査しているとのことだった。まいったね、魔王完全に俺のこと意識してるよ。


 そんな経緯で魔王軍と人類は現在休戦状態となっているのだ。

 …なんで魔王を早く倒さないんだって?俺だってそうしたいよ!これには訳があるんだ。

 アルトセリアさんからもらった力で俺はめちゃくちゃパワーアップした。魔王軍四天王とかいうやつでさえ、一撃で肛門を貫いたぐらいだ。…誤解するな。別に貫いた場所に他意はない。ただ装甲が薄い場所を狙っただけだ。


 四天王を倒した俺はアレこれ魔王なんて余裕なんじゃない?浮かれてしまった。今思えばそれが悪かった。


 四天王の仇を打つべきと背後で弓を構えたゴブリンの存在には気が付いてた。気が付いていたが、調子に乗った俺はこう思った。いまさらゴブリンの攻撃などかわす必要などないと。

 上位者の余裕の笑みを浮かべたまま、ゴブリンから放たれた矢が、俺の尻に吸い込まれるように消えるさまを俺は黙って見過ごしてしまったのだ。次の瞬間俺は、今までに体感したことのない未知の感覚に悶え苦しんだ。


 …。

 …。

 …すまない。今でもあの感覚を思い出そうとすると頭がうまく回らなくなるんだ。まるで理性がそれを受け入れるのを拒んでいるかのようにな…。


 …あとから聞いたのだが、アルトセリアさんの目的は異なる種族が共に手取り平和に暮らすことだそうで、俺がアルトセリアさんからもらった力を悪用しないよう、魔王と関係が薄い相手には力が弱まるように設定したとのことだった。


 なんせ魔王四天王相手ですら与えられた力の5%も発揮できないようになっているらしい。それどころか魔王軍の下っ端のゴブリン相手じゃ、下手すると俺本来の力よりマイナスされているかもしれないらしい。


 それを聞いた俺は、アルトセリアさんにそんなことでどうやって魔王を倒せばいいかすぐに尋ねたのだが…。あれから五年。いまだアルトセリアさんからその質問に対する回答をもらっていない。


 ときおり思いだし改めて尋ねるのだが、そのたびにアルトセリアさんは急用を思いだし。しばらくの間姿を隠してしまうので、最近はあまり話題にしないように心掛けている。


 そんなこんなで束の間の平和を取りもだした人類は、魔王軍への再度の侵攻に備えいろいろな対策をした。冒険者と職業が誕生したのもその一環だ。なんでも、魔物を倒すスペシャリスト育成したかったらしい。


 本当のところ、長期間の徴兵による軍が維持するのが金額的に無理だったとのうわさだが…。


 そんなわけで生死をさまよう重傷から回復した俺は、冒険者となり魔王討伐をめざし冒険を繰り広げているってわけだ。


 とりあえず重要そうなことは話したかな?まあ抜けてても後で補足すれば問題ないか。


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