13話 明かされた真実
ティアに酒場から強引に引きずり出されたアインは、そのまま店の裏側まで引っ張られると、ディアに襟首を掴まれ、アインは強引に立たされる。
「いてえな、何するんだよ!」
「何をするだと!?それはこっちのセリフだ!貴様は!なんてことをしてくれたんだ!」
怒りのままティアに揺さぶられるアインは、背中を壁に激しく打ち付けるのだった。
「八つ当たりはやめろ!俺は有りのままの事実を伝えただけだ。」
(アインさん…。)
「何が事実だ!ゴブリンに襲われていたのは貴様だろうに!!」
「そんな馬鹿な!?言いがかりは止めてもらおうか!」
(いえ、ティアさんの言う通りですよ。アインさん。もう忘れてしまったのですか?)
「そ、そう言えばそんな気がしてきた。俺がゴブリン相手に華麗な剣技を披露していたら、この女が余計なちょっかいを出してきたんだっけか?」
(だいぶ近づきましたが、まだ事実と大きな乖離がありますよ。アインさん。もう少しです、頑張って。)
「いいかげんにしろ!貴様がゴブリンの足を泣きながらしゃぶっているところを、私が助けてやったんだ!」
ティアの剣幕に圧倒されたアインは、やや自信なさげな表情をうかべると、首をひねり過去の状況をもう一度思い返してみた。
「そう言えば…確かにこの女の言う状況に近いともいえないこともなかったかもしれない…。いや、それは素人目線の浅はかな判断で、俺がゴブリン如きに命乞いをするわけが…。」
(アインさん…。大丈夫ですよ。私はそんなことでアインさんを軽蔑したりしません。受け入れましょう、現実を。)
「…命乞いをしたのか?この俺が…?ゴブリンの足を泣きながら舐めて…?そんな…なんて浅ましいんだ、俺は…。」
全てを思い出したアインは力なくうなだれる。
「ようやく思い出した。いや、いまさら遅いのだが…。」
そんなアインを見たティアは呆れたとばかりにため息をつくと、掴んでいたアインの襟首から手を離す。
支えを失ったアインはそのまま地面へと崩れ落ちるのだった。
(ア、アイン!?大丈夫ですか?気をしっかり持ってください!…すこしくらいの失敗は誰にでもありますよ。これから挽回すればいいのです。大丈夫です、失敗は取り返せます!)
「それもそうだな。」
そう言うなりアインはすくっと立ち上がると、膝についていた土を手で払った。
「気持ち悪いほど立ち直りが早いな。お前は…。」
「ああ、アンタの悪質な誹謗中傷に付き合うことの無意味さに気が付いたからな。」
(アインさん…。その…いえアインさんがそれでいいなら、私はもう何も言いませんが…。)
「…もういい。私ももうキサマの戯言には付き合い切れん。しかし、まいったな…。事実ではないとはいえ、あのような醜態を見られては、この町では仲間を募るのは無理そうだ。このまま静岡に戻ったほうがいいのだろうか?」
「なんだか知らんが早く帰れ、目障りだ。」
「キサマ…。」
アインの言葉に、ティアは苛立ったようにアインを睨めつける。再び険悪なムードに突入しようとしていたが二人だったが。それを妨げるようにアルトセリアが
(ま、待ってくださいアインさん。いまティアさんが言った言葉を思い出してください!ティアさんは仲間を探していて、静岡に戻るって言ってますよ。これはアインさんの目的と一致しませんか?)
「俺の目的?貯まっている家賃とゲロ助の尻の治療費をこいつが払ってくれるとでも言うのかよ!」
「キサマは突然、何をバカなこと言いだしているんだ?」
アルトセリアの声が聞こえないティアは、当然何もない方向を向いて一人でしゃべりだすアインを胡散臭いものを見るような視線を送るのだった。
(違いますよ!思い出してくださいアインさん。アインさんは依頼を達成するため、静岡へ一緒に行ってくれる仲間を探していたじゃないですか。ティアさんなら適任じゃないですか?)
「なるほどな、おい、ティアといったな?仲間を探しているといったが、俺もちょうど静岡に用があるところだ。仕方ないから仲間になってやろう。」
(ア、アインさん!?お願いですからもっと言葉を選んでください!!)
「…なんで私はこんな奴の命を助けてしまったのだろう?」
アインの横暴ともいえる態度を見たティアは頭が痛いとばかり、頭を抱え込むのであった。