09話 新キャラか…名前考えないとなあ
「なんだ…?た、助かったのか…。俺、生きてるのか?」
(通りすがりの冒険者の方が助けてくれたみたいですよ。ゲロ助さんもどうやら無事みたいです。良かったですねアインさん。)
「通りすがりの冒険者…?ゲロ助も無事なのか?」
アルトセリアの言葉に、徐々に落ち着きを取り戻したアインは自分が逃げ去ってきたほうを振り返る。そこには口から泡を吹き、尻にこん棒が突き刺さったゲロ助の姿があった。
「いったい何がどうなればあのような哀れな姿になるのか想像はつかないが…激しい責め苦を受けたようだなゲロ助…。」
(い、生きているんだから、もう少し喜んであげてください!)
「そうか?…そうかもしれないな。心なしか嬉しそうな表情をしているみたいだし。もう少しあのままにしておいてやるか。」
(そんなことはないですよ!!…たぶん。は、早く助けてあげてください!)
「わ、わかったよ。」
アインはゲロ助に近寄ると尻に突き刺さったこん棒を力いっぱい引き抜くのだった。
「あふん!?」
「なに、気持ち悪い声を上げているんだゲロ助。」
(あ、アインさん!?もっとやさしく抜いてあげてください!!)
「アルトセリアさんは注文が多いな。…わかりましたよ。優しくですね。おいゲロ助、こん棒を戻すぞ?いいな。」
「お、おう?…大丈夫だ。アイン。どんとこい。」
(やりなさなくていいんですよ!!ゲロ助さんも何を言っているんですか!?それよりアインさん。助けていただいた方にお礼がまだです。早くお礼をしましょう。)
「それもそうだな。」
アインは手にしたこん棒を力いっぱいゲロ助の尻にねじ込むと、助けてもらった冒険者に向き直る。
(ゲロ助さん!?アインさん何をしてるんですか!)
「危ないところを助けてもらってありがとな。正直助かったよ。」
そういってアインは冒険者に握手を求めるように手を差し出す。しかし、冒険者は決してアインの手を握ろうとしなかった。
「なんだよ…。感じが悪いな。」
「カエルの肛門に出し入れした手を差し出すお前よりはましだと思うがな。」
(…正論ですね。)
「ちょ、直接手を出し入れしたような表現はやめてもらえないか!?」
アインは手を引っ込めると、助けてもらった冒険者の姿をまじまじと見る。フードで隠れてよく見えないが、冒険者は整った顔つきをしているように見えた。体つきもほかの冒険者に比べ、どこか華奢な感じがした。
「もしかして、あんた女なのか?」
「ふん、それがどうした。女だと思って見くびっているのか?これでも、ゴブリン相手にみっともなく命乞いをする男よりは出来るつもりだ。」
「な、なんだと!?」
「よく見れば、その冒険証…お前Cランクの冒険者か?ならば先ほどの痴態も理解できる。」
「おい、同じ冒険者に向かってなんて口のきき方だ!」
(アインさん落ち着いてください。喧嘩はダメです!)
「同じ冒険者?Aランクの私と、Cランクのお前が?Cランクなどお情けで冒険者にしてもらった屑どもばかりだ。そんな奴らと一緒にされてはたまらないな。…いったいどんな依頼を受けたが知らないが、自分の身の程を…おい待て、お前なんでベッドと箪笥なんか持ち歩いているんだ?お前、一体どんな依頼を引き受けたんだ?」
「し、静岡までお茶を買いに行くところだったんだ。」
「静岡までお茶?箪笥とベッドを持って?」
「わ、悪いかよ。」
アインの言葉に女冒険者は頭が痛いとばかり眉間を手で押さえる。
「…よくわからんが、ともかく。お前のような情けない奴に冒険者を名乗られるのも不愉快だ。お前は早々に冒険者から足を洗え。親切な私がわざわざ忠告してやったのだ。よく考えるといい。…しかし、無駄足だったかもしれないな。この町の冒険者がこの程度とは。」
アインの言葉を待たず、女冒険者はアインに背を向けアインたちが出発した町のほうへと歩き出すのであった。
女冒険者の後姿を悔しそうに見送りながら、アインはゲロ助の尻に刺さったこん棒をそっと引き抜くのであった。