その3
2028年、世界中で人口問題とそれに伴う食糧難に直面していた。
コンピュータ産業は、単なる計算機としての面では、コンピュータ自体が自己進化を遂げるということで毎年、指数対数的にその機能を向上させている。
そしてもう一方、AIの方面では、人間の感情を再現するという段階で、世界各国の研究者が頭を悩ませているのが、現状だ。
しかし、それだけが原因で研究が遅れているのではない。
各国政府のほとんどが、自国の国家予算を食糧難打破の為に各国立大学、研究機関、大手企業にまで、大枚をはたいているからだ。
そう言った傾向の原因の一つに国連では農業意識改革を方針とした、《2030年計画》が2019年に採択されたことがある。
我が国の政府はその計画をうけ、日本の公立の小中高学校では、それぞれ「生物学」について興味を持つように刷り込み教育を2020年オリンピック開催に合わせて開始した。
例えば、小学校では入学とともに各学校が設定したトマト、キュウリ、オクラ、サツマイモなどの農作物の中から一つ選び、土壌形成から収穫、来年度のための種作りを先生からサポートを受けながら学校隣接の畑で行う。特にエリート校では鶏、子豚などの小動物の飼育もカリキュラムに含まれる。
中学校では、小学校よりも詳しく、科学的な観点から生物の発生、成長、その外部環境に至るまであらゆることを学ぶこととなる。
高校では、大きく分けて普通系、畜産系、生命システム系の三つがある。
畜産系に進むと、農家の道に進むことになる。そこの生徒は、勉強が苦手なやつがほとんどを占める。
逆に勉強のできるやつは、生命システム系に行く。
生命システム系は、品種改良、外部環境の整備、食品加工開発など、専門は多岐に渡る。
普通系は総合的に工学や言語学など生物に関係ないことでもそれに特化して学ぶことが出来る。
しかし、生物は必須科目であり、選択の余地なく誰しもが生物を学ぶ。
僕の通う、この学園は普通系と生命システム系の二つのコースを持っている。
ちなみに僕、須藤正義は普通系に通っている。
また、大学適正テストとはその名の通り大学進学制度の一つであり、毎学期ごとに行われる。センターというものが廃止されてから、この制度になった。
と、変に説明風な走馬灯は終わり、気付くと真っ白な天井が上の方にあった。
「ここ、どこだ?」
「おい、大丈夫か?」
「いk、先生、ここは?」
「おい、今呼び捨てにしようとしたな!」
「すいません。先生。つい癖が抜けなくて…」
すると、池田は拳を固く握ったことがわかるくらい、肉を軋ました。
「はぁーー。まあいい、良くはないが、なんであんなのを運んでたんだ?」
ビクンッと僕の心臓が跳ねた。そういえばさっき、ここに来るまでに何かまずいことがあった気がする。ミンチ?うーん?なんのことかな?
「うちの骨格標本じゃなかったが、あの骨を代わりに飾ってもいいか?」
ん?なんのことを言ってるんだろう?
「おい、正義。あの骨をしばらくかりていいか?」
「……はい」
とりあえず、何が何だか分からなかったが、首肯する。
「実はなあ、今日生物準備の骨格標本が何者かに盗まれてな。」
あぁ、なんの話をしているのだろう?
「そこに骨の持ったお前がいたから、つい疑ってし待ったんだ。」
「!」
そこで思い出した。そういえばさっき、美少女と会ってそれから…
骨とミンチになったんだ。
「池田!その骨は…」
「なんだ?あの骨がどうした?」
「いや、なんでもないです…」
「やけに今日は歯切れが悪いな。どこか悪いのか?あと俺のことは、先生と呼ぼうな。(怒り)」
「すいません」
おかしい。あんなスクラップ状態の何かを見ておいてこの反応はおかしい。
「ミンチ…」
「ん?ミンチがどうした?」
「いや、なんでもないです」
「正義、今日のお前なんかおかしいぞ。今日はもう帰れ。いや、送ってやろうか?」
「いえ、大丈夫です。一人で帰れます」
そう言うと僕は保健室のベットから出て、空の学生カバンを持ち、保健室を後にした。
そういえば、何故意識を失ったかも思い出したけど、あのバカ教師の馬鹿力によって落ちたんだった。
なにが、送ってやろうか、だ。
そんなことで許されると思っているのだろうか?
「まあ、そんなことより、まずは、」
そう、しなければならないことがある。それは、
「あのヒロインの素を回収しなければ!」