その2
「………」
あまりの光景にフリーズしてしまった。
えっ、何、これは俺が悪いの?
カプセル開けたというより、触っただだよね?
「いやいやいや、女の子なんか居なかったし、ミンチの詰まったカプセルだったし(焦り)」
「おい、正義、何やってんだ?オラァ?補習の時間終わってないじゃないか!?」
「うわっ!?」
怒気をはらんだ声の方を振り返るとそこには、自分の高校の担任である、池田草二郎がいた。この先生は言葉は荒っぽいが、ご○せんに憧れているようで俺の苦手とする熱血系生物教師である。クラスのみんなは裏では馬鹿にしており、呼び捨てで呼んでいる。
「正義、お前適正テストで最下位だったのによくもまあこんなところで、油を売ってられるな。」
「先生…っ、あのこれは…」
ばれないことを祈りつつ、言葉を絞り出すがしりすぼみになっていく。
「先生はなぁ、お前の将来が心配だよ。別に無理に大学なんて入らなくていいが、そんなんじゃ正義。就職したっておんなじだぜ。学校っていうのはなあ…くどくど…くどくど…」
「……」
ふう、危なかった 。
池田は、俺が補習をサボっていることを説教するのに夢中で、俺の心配していた後ろの惨状に気付いていなかった。
いつも終礼でする長ったらしい説教もこの状況下では逆にありがたい。俺は反省するポーズをとる。
「…わかったか」
「っ!はいっ!」
うわの空で何も聞いちゃいなかった。嫌な汗をかいたが、なんとか切り抜けられ…
「ん?なんだ、それ?」
たはずもなく、バレてしまった。
「正義、まっ、まさかそれ…」
「違うんです。これはそういうのじゃなくて」
「何が違うんだ?これは…」
もう、池田を押し倒してでも逃走しようかとも思いつめて、
「骨格標本じゃないか!正義、お前いくら金がないからといって、そんなことしたら、人として終わってるぞ!」
「えっ!なんでバレなかったんだ?」
「ん?何か言いたいことがあるなら、俺の顔を見ていえ!」
僕は、池田に胸ぐらを掴まれながら、池田の顔からそっぽを向くかたちで、
後ろを振り返った。
果たして、赤い絨毯の上に白骨遺体らしきものがあった。
「ギャーーーー 」
「うるさいぞ、正義。こっちを見ろ!」
「池田!やばいってやばいって」
胸ぐらを掴まれながらも必死に池田に訴える。しかし、
「先生を呼び捨てにすんな!先生をつけろ先生を」
「ぐぇっ」
胸ぐらを掴む力が強くなっただけだった。息苦しくなる中、しかし、僕の思考はとめどなくクエスチョンマークを量産していた。
何故、氷塊が落ちてきたかとか
何故、この教師がこんなにキレているのかとか
―何故、彼女はカプセルを開けた途端
溶けたのか―