第45話 帰還
一旦この話で物語は完結させていただきます。
もし、続きを書いてそれとなく纏める事がありましたら、続きを投稿させて頂きます。
グリフォン達に跨り空を駆ける。風を切り進むグリフォンの背から、森を抜けた位置にいる冒険者達を見つけた。
「彼処カ?」
俺が肯定するのを確認し、全身に傷を持つグリフォンが飛ぶ速度を徐々に緩めていく。そして、その後方を飛ぶ2匹のグリフォンも又、飛ぶ速度を緩める。
「シカシ、マルデ別人ダナ」
初めて聞いた者は、本能的に恐怖してしまうような威圧が込められた声だが、群れの長ともなれば当然だろう。
「そうか?」
何だ、藪から棒に。
「数日前ニ会ッタ時ハ、危ウサヲ感ジタガ、ドウヤラ己ナリノ答エヲ見ツケタカ」
「いや、答えはまだ見つけてない。でも、やっと一歩を踏み出せた気がする」
俺の答えを聞いたグリフォンの長は、「ムム?」と唸り出した。
「……良ク分カランガ、今ノトウヤニナラ協力シテモ良サソウダ」
「泣き虫なカイルスも言うようになったな」
「ナッ、昔ノ事ヲ娘達ノ前デ言ウナッ!」
俺を背に乗せたまま、暴れ出すグリフォンのカイルスの体にしがみ付き宥める。歳を取っても、グリフォンの長であるカイルスの羽毛は、幼かった頃のように肌触りは良い。
「オイ、失礼ナ事ヲ考エナカッタカ?」
鋭い奴だ。
「歳をとると勘も鋭くなるのか?俺は、羽毛の肌触りが昔と変わらない、と思っただけだ」
「カモナ……ッ、オレハマダ若イ!」
カイルスが、視線を一瞬、後方の娘達に向けたのを俺は見逃さなかった。
「そう言う所が、おじさん臭い」
その後も空中で、カイルスを揶揄いつつ高度を下げてもらう。その過程で、冒険者達の視線が俺達に集まっている事に気付き、視線をそちらに向ける。
勝手な行動をしたから、怒られそうだ。
カイルスが地面に舞い降りると、バルザックが数人の冒険者を連れ、こちらに歩いて来る。
探す手間が省けたな。
俺は、カイルスの背から跳び下りる。
「勝手な行動を取って、すいませんでした」
「その事に付いては追求しない。だが……先程の魔力は、君の物で間違いないか?」
「……さぁ、どうでしょう」
バルザックの目、俺を疑っていると言うよりギルドマスターとして心配してくれているように感じる。だからこそ、肯定も否定もしない。
卑怯だと思われるかもしれないが、認めるとそれはそれで面倒事は避けられない。
「……そうか」
バルザックは、溜め息を吐く。
「ギルドマスター、俺にできる事はありますか?」
「では、グリフォンに乗って周囲の探索及び、村に残る冒険者達に戻るように伝えてくれ」
「分かりました」
俺は再度アルフィに跨る。
「申し訳ないんですけど、ヴィルヘルム達を何処かで休ませていて下さい」
「分かった。君も無茶はするな」
俺は、バルザックに向かい頷く。そして、ヴィルヘルム達を乗せていたグリフォン達が、地上へと舞い降りる。
「あれ程のグリフォンを呼び出すとは、全く驚きを超えて呆れてしまうな」
飛び去って行く全身に傷を持つグリフォンを眺めながら、呟くバルザック。その言葉は、舞い降りた2匹のグリフォンの足音に掻き消され、誰も聴くことはなかった。




