ウォーカーさんと少年A
トンネルを抜けるとそこは、空想都市は無かったが不思議な事は起きていた。
確かに広がる場所は空き地なのだが・・・
「ウォーカーさん、今何時ですか?」
「現世?さぁ、現世は何時か分からないな。あ、学校なら心配ないから安心して。」
いや、そういう問題じゃないです。おそらく現世と言われている僕の世界はまだ夜だ。
「どう考えても、夕方・・・だよね。」
楽観的に考えたらこれは、朝方に見えなくもない。僕の親が夜勤明けの時よくその現象があるからだ。
昼寝をしてもその現象は多いにある。だけど、これはどう見ても夕方だ。
「いやー良い夕暮れ時だな。」
そして、もうウォーカーさんが夕暮れと言っている時点でこの楽観的思考は使えなくなった。
「この夕方のもう帰らないといけない時間。でももう少し遊びたいこの時間。たまらないな!」
そういえば、さっき時間の歪みがとか話を聞いたな。これのことか。
あと、ウォーカーさんが言ったこの時間がたまらないのは凄く共感だ。小学生の頃5時という門限の中走ればあと少し遊べるとか思って遊んでいた。今思えば明日も遊べるのだから明日遊べば良いのにと思う。けど、あの時の僕はそれすらもどかしかった。
「あれ?和也、顔がにやけてるけどどうしたの?」
「え?あーなんだか低学年くらいの時を思い出して。よく遊んでいたんです。」
幼馴染のあいつともここで良く遊んだ。
あいつだけじゃなく、もう一人ええっと・・・
「あれ、確かもう一人ここで遊んだはずなんだけど・・・」
だめだ、覚えてない。なんとなく、帽子を被っていた事は辛うじて覚えているんだけど。
「青い帽子の・・・うぉっ!?」
腰の辺りに何か衝突した。痛くなかったが、ぶつかったものは反射で跳ね返った気がする。
「いてててて・・・」
振り返る前に、それは声を出した。
人?まさか、さっきのトンネルからついてきたんじゃ・・・
「ボク、大丈夫?」
ウォーカーさんが話しかけている。平気ってことで良いのかな・・・
僕も振り返ると、幼稚園くらいの男の子がしりもちをついていた。ちょっと大きめの青い帽子を被っている。そうそう、なんとなくだけどこんな帽子を被っていたと思う。
「へ、平気・・・?」
もう一度いうが、僕はコミュ障だ。誰に対してもだ。
というか、今にも泣きそうなんだけど。これ、僕が完全に悪いよね・・・
「へ、平気!今日は泣かないもん!」
やけに強がりだな。でもまぁ、泣かれるよりまっしか。
僕も小さい頃、転ぶくせによく走り調子に乗り転んで泣いていたな。
結構泣き虫だったはずだけど、最後に泣いたのは小学校の卒業式だったかな。そんな泣くほど良い式だったとは思わないけど何故か泣いたな。場の空気だろう。
「おーえらいえらい。偉いからお菓子をあげよう。」
ウォーカーさんはどこでも売ってそうな、市販のお菓子を男の子に差し出した。嬉しそうだ。
「和也はごめんね。あげると、本当に帰れなくなるから。」
「あ、はい。」
なんか、あの世の食べ物ってことかな。まぁ、得に喉の渇きとかもないしお腹も空いていないし良いかな。
「ねぇ、まだ誰もここに来た人いないよね?」
「う、うん。僕達以外誰も来ていないよ。」
男の子・・・改め少年Aにしよう。Aの問いかけにうなずくと嬉しそうに息を漏らした。
「よし!ボク、いちばん!」
誰かと約束しているのだろうか。確かに、1番に到着するのはうれしい。
こうなんとも言えない優越感と待ってるときのドキドキ感がたまらない。
「こんなとこで待ち合わせか?もう、日が暮れるぞ。」
ウォーカーさんの言う通りだ。僕のいた世界と少しずれていても、この場所は日が暮れると真っ暗になる。僕が目を覚ました側のトンネルの方角には住宅地はない。だからきっと竹藪を抜けて向こうに帰らなければならないはずだ。
あれ、でもこの子僕たちの後ろから現れたよな・・・と言う事はあのトンネルにいたのか?
つまり・・・
「あ、あのさ・・・君ってもしかして・・・!?」
「あーなんでもないよ?うん、何もないよ!」
ウォーカーさんに口をふさがれた。
何も言われなくてもそのあとは分かる。その類だ。
「ところで、お兄ちゃん達は何してるの?」
Aが問いかけた。さて、この場合どうしたらいいものか・・・
「ん?俺たちは散歩中だよ。」
「こんなとこを?」
「そう、こんなとこをね。それより君の待ち人って?」
「えっとねー」
「おーい!おーい!」
Aが応えようとした瞬間、竹藪から声がした。
ちなみに竹藪と言っても道のようなものがあり、そこから夕陽に照らされて誰かが手を振っている。
そして、僕は目が悪いから遠くのものはぼんやりとしか見えない。
「あ!ずるい!また、トンネルの上の道を通った!」
Aは振り返ると、その影にそういった。
ふとトンネルの上を見ると確かに通れそうだ。そうか、思い出した。
僕が居た側の方角には道があった。奥はもっと竹藪で見えないくらいだけどそれを通れば近道になった。
おかしいな、いくらなんでも小学生の時の記憶を忘れるには早い気がする。
「へぇ、元気そうだ子だね。」
ウォーカーさんは目の上で手の傘を作り上を見ている。目がいいのかな。
「お兄ちゃん達も早く帰ったほうがいいよ!ここ、暗くなると何も見えないから!」
Aは道を走りのぼり待っていた人の場所へと行く。
二人の影には結構身長差があった。待ち人は影からして小学生くらいだと思う。
「いやぁーよかったねぇ。」
しみじみと言うウォーカーさんの顔は少しなんとなくだけど、寂しく思った。
ウォーカーさんだって元人だと言っていた。だったら、家族がいたのかもしれない。
あるいは、高校生くらいだし彼女がいて・・・リア充か。
「ウォーカーさんって彼女いましたか?」
「な、なんだよ!唐突に・・・」
いやいや、そこははっきりさせておかないと。別に恨みはないよ、恨みは・・・ただ壁がほしくなるだけで。
「ないない!むしろ、壁がほしいくらいだった。」
あぁ、同志だった。さっきよりもかなり親近感がわいた。
「あれ?もしかして俺、しんみりしてた?」
「うん、ちょっとだけ。」
素直に頷くと、ごめんごめんと笑いながら謝りもう影がない竹藪を見つめた。
「弟がいたんだよ。って言っても、本当の弟じゃないよ。勝手に俺が弟の様に可愛がってた子がいてね。」
「あー思い出したんですね。」
そう聞き返すと、頷きが返ってきた。
「泣き虫で、すぐ転んで、何時か見てろよなんていつも言ってる子だったなぁ。虐められるのを分かって人を助けようとするんだもん。ほっとけなくてね。」
なんだろ、すごい自分の事を言われているようで・・・だけどその子の気持ちは十分にわかる。
つまり、調子乗りなんだ。僕もそうだから。
「一体何を思って、そんなことをしてたのか。でもそのおかげで、そいつの事好きになった子がいたけどね。」
ほう、じゃその弟は勝ち組か。羨ましいぞ、ウォーカーさん弟よ。
「もう一度、会いたいですか?」
なんて、空気の読めない質問だと自分でも思った。
だって、死者にそれを聞くのは最悪な質問だろう。だからあえて僕は聞いた。
死者の気持ちなんて、一生の中で一度しかないだろうから。
「どうかな。会っても、ただの迷惑だろうし。きっと、怒るだろうね。」
自嘲気味に笑うと気合を入れなおすように、よしっと呟き竹藪を指さした。
「和也、ちょっとだけ寄り道をしようか。」
「は、はい?」
ウォーカーさんは本当、何を考えているかわからなかった。けれど、会ってまだ一時間くらいしか経ってないのにとても安心できて、楽しい。
そしてどこか懐かしい気分になった。
書き溜めってのもなかな大変だなぁと思います。
この日にこの時間に投稿しますっ!って投稿している方を尊敬します。
ここまで当時のストックがあったのですが、次回から設定だけあったのでそれを参考に書いていきます!
よろしくお願いします!