ウォーカーさんの特別講座
「あの・・・ウォーカーさん。聞いてもいいですか。」
このトンネルは不思議な事に歩いていると長く感じる。
「このトンネル・・・やけに長くないですか?」
それにしては、とても長く感じるのだ。
そして、やけにこう・・・この世のものでは無い声もする。そして見える。
どうしてか、この暗いトンネルの中で薄暗くそれらが見えてウォーカーさんだけが明るくはっきりと見える。
言っておくが、中二病を抜きでの話だ。
「まぁ、一応そういうトンネルだから・・・ね?」
ね?じゃないって。え、散歩ってあの世の散歩なの。というか、思い切りそっちの世界連れていく気満々ですよね、やっぱり寂しいから連れていくっていうやつですか。
「ここは和也のいた世界に似てるけど少し違う。時間の歪みもあるし景色も少し変わる。」
「異世界ってやつですか・・・?」
「うーん、俺もよくわからないな。特に知ろうと思ったこともないし。」
他のウォーカーさんも知らないのだろうか。幸い命は取られる心配は無いし聞ける情報は聞いて上手く情報屋として明日から活動できるかもしれないし聞いておこう。
まずはそうだな・・・
「ウォーカーさんって一体どういうものなんですか?さっき、もともと人だとか言ってましたけど・・・」
こっくりさんと同じような仕組みなら、降霊術だ。十円玉とか使ってないけど。
こっくりさんも間違えれば、悪い悪霊が来るとか言うから動物霊以外もありえるのだろうか。
「ウォーカーさんは、呼び出した人の願いを叶えたり助ける為のものだよ。」
「でも、命を取るウォーカーさんもいるって・・・」
「え?!じゃ、それきっと偽物だなぁ。最近、ウォーカーさん詐欺流行ってるから。ウォーカーさんも現世じゃ最近人気出てきたからなぁ。」
成程、詐欺なら仕方な・・・いのだろうか。
とりあえず、悪霊がやってくる場合もあるという事だな。今回のウォーカーさんは本物だろうか。
最後に僕を落としれる作戦かもしれないが今更言っても戻り方も分からない。あきらめるしかない。
「ただし、その願いにより何かを失う。それでも、叶えたいなら俺たちウォーカーさんはこうやって散歩をして考える期限を与える。それから願いをかなえるんだよ。俺たちだって、元は人だって言ったでしょ?生きている人はやっぱり羨ましいからほんの少し不幸をもらいそれを糧にする。人の不幸は蜜の味っていうだろ?」
人は自分より不幸な人間を見ると、自分の方がまだまっしと思い生きる。それの繰り返しだと、何かの本で読んだ。だったらなぜ、ウォーカーさんは人の願いを叶えるのだろうか。
「だったら、元から叶えなければよくないですか?」
その質問に前をずっと見て歩いていたウォーカーさんは立ち止まり振り返った。
ちょ・・・いきなり黙られると怖い。余計、辺りから恨めしい声やすすり泣く声が反共する。
水のし落ちる音はトンネルではよく響く。
「あの・・・」
もしや聞いてはいけないところまで聞きすぎたのか。ウォーカーさんに聞いてはならない話で聞くと本当にあの世に連れていかれるという・・・あれ、そんな話テレビで見たな。あの話作り話だったのだろうか。
「さてね。俺はまだまだ新人だし先輩ウォーカーさんが言ってたからよくわからないな。先輩の言う事は、大抵経験論であってるから。でもさ・・・」
こちらに向けられた純粋な笑顔。何故か背筋に悪寒が走る。
頬を掻きながら辺りを見渡すウォーカーさんがまた此方をみて話を続けようとする。
「その人の一番、幸せな顔を知っているから不幸になった時、蜜の味がするんじゃないのかな。よくわからないけど。」
このウォーカーさんは純粋すぎて怖い。
やっとこのウォーカーさんというものが、霊的なものと認識できた気がする。
「わっ!どうしよう・・・話すぎか。うーん・・・熱く自論を語ってしまった。まぁ、和也にだったらいいかな。でも・・・先輩怖いからここまでな!?」
先輩ウォーカーさん像がなんとなく見える。すごく仕事ができそうで上司に取り繕うのがとても上手そうだな。このウォーカーさんはノリと運で乗り切ってる感がすごくするけど安心できる。
いいな、俺もこんな感じになりたい。
「えぇーもっと聞きたいんですけど・・・」
発祥の地とか、初代ウォーカーさんの話とか、ウォーカーさんになった経歴とか資格とか。そもそもあの世があるのか。
「聞いてどうするんだよ・・・」
苦笑交じりにそう聞き返される。
「あ!まさか、それ現世でふりまくんじゃないだろな!?まくなら、ウォーカーさん詐欺にご注意くださいってやつだけにしてくれ!仕事増えたら有給使えないから!」
そういう、いらない情報がただ漏れだ。
これ以上聞くと、いらない情報だけが積もるだけだからこれくらいにして話を変えよう。
「ところで、ウォーカーさん。このトンネルいつ出口ですか?」
「もうすぐだよ。ほら、光見えてるでしょ?」
ウォーカーさんが指し示す方向には確かに小さな光が見える。あれを抜ければ、確か空き地が広がっていたはずだ。そこかから竹藪を通ってトンネルを抜けると出口だ。そこからだと家に近い。
案外早く願いがかなうかな・・・竹藪が長くないか心配だけど。
「それじゃ、行こうか。和也。」
ウォーカーさんがまた前を向いて歩き出す。
「はい!」
また僕も歩き始めた。
出口はだんだんと近づくにつれてトンネルに響く声も小さくなっていく。その変わり光は増していく。
――トンネルを抜けるとそこは・・・
4連勤でひたすら寝て起きる作業に没頭していました。
休みに書き溜めて更新頻度増やしていければいいなと思います。
タイトルは思い付きなので、その場のノリで決めます。