②
煙草を空き缶に押し込んで顔を上げると、目と鼻の先に小さなお社が見えた。
あれを神社と呼ぶには小さいし、道祖神とかでも無いのは分かる。ただ何と言うのかは知らない。どんな神様もか分からない。
近くのコンビニまで行って買った酒をお供えして手を合わせた。
「明日も良いお客さんをお願いします!」
願うだけならいいだろ。
なんとなくそう言う気分だったし、初詣ついでだと思うと悪い気にならなかった。
神様も、忙しかった年明けから少し間を空けたおれの話を聞いてくれるかも知れない。
翌日の客は全員が酔客だった。
前後不覚で金は余分に払ってくれるものの、寝落ちしてバイクから転落しそうなので何度もヒヤヒヤさせられた。
荷箱にゲロ吐こうとしたヤツもいたし、降りる時にションベン漏らしたヤツもいた。
よくもまぁ巡回の警察に見つからなかったものだ。交通安全週間の前後は休んだ方がいいかも知れない。
最後の客は先日のサラリーマンで、やはりたぶんに酔っていた。
「今日もありがとな」
「お疲れっす」
サラリーマンは財布ごと荷箱に入れてから「冗談だよ、わはは」と笑って紙幣を置いた。たぶんマルが多いやつだ。
金払いが良いのは助かるが、こうも酔客続きだと精神的に参ってしまう。
おれは再び例のお社近くで煙草休憩を入れた。ぼんやりとした提灯の明かりが揺れる。
中の電球が弱っているのだろうか。蝋燭の訳は無いだろう。誰が管理するんだ?
それにしても効果覿面だった。
「まさかなぁ」
たまたまだろ、と自分に言い聞かせる。
年明けの金曜日だ。そろそろ労働のリハビリも終わって飲み会が始まるからな、そう言うこともある。
「偶然だよな」
本当に偶然かどうか、試してみりゃいい。荷箱の中には精算前の小銭がたくさんある。
煙草を空き缶に押し込んで、荷箱から掴んだ小銭をお賽銭箱にジャラジャラと入れた。
「明日は金払いの良い、でも酔ってないお客さんをお願いします!」
これで叶えば儲けものだ。
叶わなかったら、それはそれ。
儲けものだった。
スクラッチを当てたやつ、パチンコで勝った奴、カードゲームやプライズの転売がうまくいったヤツ。
どれも大勝ちと言うほどじゃないが、ホクホクした顔が半ヘルの下に光っていた。
悪銭身につかずと言うが、泡銭を使ってくれた方がこっちの都合は良い。
「んじゃ、また」
タンデムシートに乗せた客と定型の挨拶をして、おれは例のお社に向かった。




