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人間は基本的に働かないと生きていけない。
そうでもない人たちだって少数いるが、彼らも夜な夜な空き缶を回収する妖精になったりして苦労している。
都市型の採集生活と言うらしいが、それはもはや労働では無いだろうか。スタバにいるノマドよりノマドだ。
おれは会社を辞めた。とっぱらいの仕事を探した。仕方なく白タクを始めた。原付二種なので正確にはピンタクだ。
こう言うことをやってるから会社で居場所を無くした。おれはクソらしい。誰が何を言ってるのかよく分からなかった。
「いや、助かったよ。最近はタクシー捕まらないから」
タンデムシートに座ったサラリーマンが笑う。半ヘルの顎ヒモが外れているが、事故って死んだところでおれのせいじゃない。
いや、法律上はおれのせいだが知ったことじゃない。
「んじゃ、行きますよ」
タクシー待ちの行列を笑うみたいな音を出しておれのバイクが終電後のロータリーを出る。
「ありがとう。お代は?」
「……お客さん、後ろの荷箱に忘れもの無いですか?」
馬鹿が、ここで金銭のやり取りすんじゃねぇよと喉まで出かかった声を飲み込む。
サラリーマンは察したのか「ん、そういや忘れてたわ」と荷箱を開けて中にチャリンと小銭を放り込んだ。
「んじゃ、また」
おれは半ヘルを回収して来た道を戻った。
代金はいちいち確認しない。信用だ。裏切ったやつはそのうち不運と踊るだけだ。
しばらくバイクを走らせてから休憩する。確認すると荷箱には少し多めの小銭が入っていた。
「お得意さんになってくれっかもな」
あの客が口コミで他の客を付ける。
ヤバくなったら……まぁ素直に泣いて詫びを入れるか。ガキ相手に上納金もあるまい。
桜の代紋なら素直に従う。




