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第13話

「ここにはあの忌々しい魔法使いはいねぇ。支援魔法は期待できねぇぜぇ。このクソ野郎が!!」


と憎々しい声で剣聖ヘーゼルは言う。


どうでもいいけど王子のくせに言葉悪いなぁ。家庭環境が良くなかったのかな。


「支援魔法は必要ないよ。このままで君を倒す」


と静かに僕は返す。


「はっ、舐めやがって。最初から全力だ!!」


言うがいなや、フッと消えたように見えるほど速く攻撃をする。縮地だ。


「縮地にくわえ、居合切りの連携技だ。くらいやがれーーーーー!」


自信満々の剣聖ヘーゼルだが、カキン、という金属音が響くのみで手ごたえを感じない。


傷一つなく剣を構えている僕を見て、信じられないと言う表情をしている。


剣聖という称号を送られた者が持つスキルの中には相手を秒殺できるものが数多くある。


その代表的なスキルが「縮地」と「居合切り」の2つだ。


「縮地」は尋常でない脚力でワープしたかと錯覚するほど相手との距離を一瞬で詰めるスキルだ。


そして「居合切り」は剣を鞘におさめて刀身をみせずに素早く相手に切り込む技である。


剣聖ヘーゼルはその2つを同時につかったのだ。相手は斬られたと感じる間もなく死ぬはずだ。


なのに僕は生きている。


何なのだこいつは。という思いが剣聖ヘーゼルの顔に出ていた。


対して僕は、剣聖の本気の一撃をかわしたことでいま身に付けているペンダントの効果のすごさを実感していた。



実は、王宮内に行く前に僕はエクレアたちに一人で行かせてくれと頼んでいた。


もちろんエクレアは僕の言葉に従ってくれたのだが、せめてこれだけはつけて行ってほしいと言って渡されたものがある。


それはなんの変哲もないペンダントであった。


しかしこのペンダントには付与魔法が施されていた。


いわゆる魔道具と呼ばれるもので、このペンダントに付与された効果が化け物級だった。


付与効果こそ反射神経と動体視力をあげるだけの効果しかないが、対象者のそれらをなんと100倍にまで上げる効果をもつものだった。


さすがにそれを聞いたときは信じられなかったが、さきほどの剣聖ヘーゼルの一撃をよけることができたのでその効果は信じるしかない。


余裕とは言えないが自信をもってかわすことができたからだ。


僕はこの反射神経と動体視力を活かして剣聖ヘーゼルと打ち合った。



打ち合いが始まり結構な時間が経つ。


もう数十合は打ち合っただろうか。


打ち合う中で、相手の長剣をほぼすべてかわす僕と少しずつ怪我を増やしていく剣聖ヘーゼル。


少しずつヘーゼルは顔色を悪くしていった。


互角のようにみえて互角ではない。


紙一重の差で相手の剣をかわすさまは達人が到達する領域だ。


卓越した技量をもつ剣聖ヘーゼルだからこそ自分と相手との圧倒的な差を感じることができたといえる。


僕は剣聖ヘーゼルがよりどころにしてきた剣技という分野において圧倒的な差を見せつけることで相手の心をへし折ることに成功した。


ついに剣聖ヘーゼルは力尽きた。心もか体も力尽きたのだ。


止めに僕はヘーゼルの武器を破壊し決着をつけた。


自分の長剣をつぶされた剣聖ヘーゼルは完全に心が折れたのか床に倒れてしまった。


もちろん息はある。


僕はそれを見届け、部屋にあるもう一つの扉をあけた。


その部屋には、ブラウン王国の王女が軟禁されており僕を見て駆け寄ってきた。


「ああああ、私を助けに来てくださった白馬の王子様はあなた様でございますのね。姫はうれしゅうございます。お礼に私と結婚を、あ、あれ?」


余計なことを言ってくる王女を華麗にかわし、ぼくは捕えられている人の拘束を解いていった。


ひととおり拘束を解き終わると僕はその場の人に質問した。


「先日、プラチナ帝国の帝都でカバンを盗まれたといって騒いでいた文官さんはこの部屋にいますか?いたら名乗り出てほしいです」


周りは????と変な顔をしたが、そのうちの一人がおずおずと手を挙げた。


「あ、それ、多分私のことです。気づいたら、私が持っていた茶色の四角いバッグがすり替わっていたんです。あの中には魔石工場に関する書類も入っていましたので絶対にとりかえさないといけなかったんです。」


僕はそのときやっと気がついた。


リリのおとうさんが持っていたバッグとこの人が持っていたバッグの見た目が似ていたためどちらかが間違えて持って行ってしまったのだ。


ということはリリの持っていたあの茶色い四角いバッグの中に魔石工場の書類が入っているはず。


僕はすぐにその文官を担ぎ、ちかくに置いてあった茶色い四角いバッグを拾って部屋を出た。


王女はそれを見て、


「何よー。私よりそんなださいカバンのほうが大事だっていうの」


と一人ぷりぷりしていたという。


部屋を飛び出した僕は、すぐさま外で待機していたエクレアと合流した。


そしてすぐに転移魔法をかけてもらった。


転移先はノワールとガーネットのいるあの邸宅だ。


そこにはリリもいた。そしてリリの近くにはあの茶色い四角いバッグもあった。


僕が担いでいた文官がさけんだ。


「あ、あれは私のバッグ!」


やはりか。


僕は、すぐさまそのバッグも手に取り、転移魔法で移動した。


行先はプラチナ帝国の警察省にある留置場。リリのお父さんが拘留されている場所だ。


そこへ転移すると、僕は、


「リリのお父さんを釈放してください。リリのお父さんが無実であるという証拠と被害者の人を連れてきました」


と言って、留置場の役人を驚かせた。


留置場の役人は、


「たしかに、被害者のバッグがあり、被害者も窃盗の届を取り下げるといっています。ですが、だからといってすぐに拘置所から釈放するわけにはいきません」


と言う。


くそう、ここまで来たのにまだ時間がかかるのかとくやしく思った。


しかし、変に騒ぎ立てると余計に面倒になる。


どうしたのものかと悩んでいるとちょうどタイミングよくキャロット・アプリコット様が留置場に現れた!!


キャロット様は留置場の役人に向かって、


「私はプラチナ帝国の公爵のひとつアプリコット家次期当主のキャロット・アプリコットです。この者が釈放を求めている者を速やかに釈放しなさい」


と僕を指さし釈放する手続きを進めようとしてくれた。


「私には警察省長官のビスター公爵の委任状もあります。これで問題ないはずよ。さあ、はやく釈放して差し上げて」


と言う。


すごく助かった。だけど、タイミング良すぎない??


そう言えばあのとき軍がやってきたタイミングもすごく良かったけど、冷静に考えたら僕にとって都合が良すぎないか??


・・・・・・・・考え過ぎ??


それとも・・・・・・・・


僕にとって都合のいい展開ってすべて裏でエクレアが手を回してくれているのかもしれない。証拠はないけど確信はある。


ありがとうエクレア。


僕には本当にもったいない存在だ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


とりあえずこれでようやく、リリとお父さんを再会させることができた。


「いや~~本当にご迷惑をおかけしたようで、なんとお礼を言ったらいいのか」


とリリのお父さんからお礼の言葉を言われた。



あれから無事にリリのお父さんは釈放され、リリはおとうさんと再会することができた。


お互い笑顔で抱きしめあっている。


ああ、いいなあ、喜んでいる姿って。


こちらまでうれしくなってくるよ。


とくに親子での再会は胸にじ~んとくるものがあるね。


僕がそう考えていると、リリたち親子は一度村へ帰るつもりだと言ってきた。


リリも次の4月からは魔法学園に入学することが決まっているし、言うことなしだね。


僕は手を振りながら去っていくリリたち親子を見送りながらそう思った。


ここまで長らくお付き合いありがとうございます。


少しでも楽しい時間を送る一助になれれば幸いです。


次話が、この物語のラストになります。

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