第9話
「久しぶりですね。アカエール。・・・・どうしたのですか。ぼうっとして。もしかして私の素顔を初めて見て、ガッカリしているのかしら」
とシェラは妖艶な笑みをうかべアカエールに言う。
「い・・・いいえ、とんでもないことです。逆です。恐れ多くも・・・・母とも師とも思って来たお方の素顔を、初めて拝見し・・・・その・・・美しすぎて魂が抜かれるような思いです」
「ふふ、お上手だこと。アカエール坊やが言うようになったわね。・・・・・アカエール、本国にいるジングートに伝えなさい。私はご主人様とともにあると。そしてご主人様の邪魔を決してしないようにと」
シェラのその言葉にアカエールはうっとりした表情をあわてて取り繕い、
「ハハァッ」
とひれ伏した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「パンジー、5年ぶりかしら・・・・いえ、つい最近あなたが操る邪神をつぶしたときにプラチナ帝国の皇帝宮で会いましたね。ふふふ、私のいいつけどおり魔力制御を毎日訓練していたみたいね。偉いわ。よく頑張りましたね」
とイオニアが微笑みながら言う。
「素顔を初めて拝見しました。・・・・っ、す、素敵です。ポッ」
パンジーの頬がかあっと赤く染まった。
「コ、コホン。お褒めの言葉を頂けただけでこのパンジー、この身のすべてをイオニーア様におささげしても悔いはありません。どうか、どうか、ご命令をください」
「・・・・考えておくわ。それとまず勇者の仲間としての使命を果たしなさい。その後よ、あなたに命令を与えるのは。あ、それとご主人様の邪魔をしないように。私にとってご主人様は私のすべてです」
とイオニアはパンジーに言う。
神妙な顔でパンジーは
「ハハァッ」
と頷くのみだった。
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「ずいぶんと心配をかけたようですね」
ホーネットは惚けた表情のマホガニーに声をかけた。
「ハハァッ。あ、いや、その、初めて素顔を拝見したので、その、見惚れてしまい申した。それに、その。コホン。メイド服姿も大層お似合いで。いままでは執政服姿ばかりを見ていたので」
とマホガニーはしどろもどろで答える。
「ふふふ、あら、ありがと。褒めても何も出ないわよ。ところで神聖ゴールド聖教国とゴールデア女王陛下はお元気かしら?」
「もちろんでございます。それがしがいる限り神聖ゴールド聖教国は多少のことではびくともいたしません。聖教「六武威」がいるのだからなおさらです」
マホガニーの返答に対し、ホーネットは満足そうに、
「ふふ、頼もしいわね。そうよ。私がいなくても十分あの国はやっていけるわ。だってそのように私が創り上げたのだから」
「それにゴールデア女王陛下とあなたたち聖教六武威がいるのだし。ふふふ、あなたも早く聖教六武威筆頭の座をあの者、ナイルから勝ち取らないとね」
「うんんんん。そのようなことをおっしゃらないでください。・・・・それに六武威筆頭の座を勝ち取る算段はついております。もうあと200年ほど修行すればナイルの力を上回る予定です!!」
(作者に代わってエクレアからの一言メモ)◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ナイルもキャナリィも聖教六武威のメンバーです。
どちらも女性なのでホーネットとはよくしゃべる親しい間柄なのでございます。
そしてマホガニーは筆頭の座を目指して500年以上修行をしています。
500年前にナイルに筆頭の座を奪われてからナイルを超えるためにずっと頑張っています。
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すごいな・・・・僕のメイドたちは。3つの大国をそれぞれ代表するような大物相手に堂々と話をしている。
僕のメイドは思ったよりずっとすごいんだな。
そうしているうちに勇者様が僕に話しかけてきた。
「なんだかとんでもないことになっているようだ。でも探していた人物に会えたと思っていいんだろう。ならそろそろ、俺の用件もすませてもらいたいな」
そうだった。
本当は勇者様のために大賢者様に会いに来たんだ。
たしか、「勇者の真なる力」だっけ。大賢者様に会えばそれが手に入るという。
そこへ大賢者様らしき老婆が、
「あ、その件ね。わたし大賢者と言われているけど、そんな立派なものじゃないのよね。でも「勇者の真なる力」は授けられるから安心してね」
と軽い口調で話をする。
「勇者に力をわたす役目は、聖処女神エリューシオン様の領分で、私はその方から委任されているのです」
「勇者が現れたら、託宣の巫女と協力して勇者に試練を与え、最後に勇者の真なる力を授けることが務め」
と口調を変えて言う。
あれ、いつの間にか、老婆の姿から妙齢の美女になっている。老婆ではなかったんだ。
そして大賢者を名乗る美女がリューシェに向かい、
「聖処女神エリューシオン様」
「あなた様から与えられた権限を行使し、勇者へ力を授けます。よろしいでしょうか」
それに対しリューシェ、
「構いません」
と言う。それを確認した美女が勇者様にむかって呪文をとなえた。
ポヨヨン
「はい、おまたせ。これで「勇者の真なる力」が使えるようになったわ」
え、それだけ。なんかショボくない?
勇者様も微妙な表情でどう答えていいか困惑している。
というか、リューシェがエリューシオン様なの???
エリューシオン教会にいる聖女様たちに洗礼を与えるというあのエリューシオン様?
・・・・・・・・なんか僕のメイドって大物ばかりじゃないか?
なんか情報量が多すぎて頭がくらくらしてきた。気分が悪い。
大賢者を名乗る美女は僕のほうをむいて、
「ご主人様、実はわたくしもエクレア様に認めていただいた使徒でございます」
「改めてよろしくお願いします。わたくし、位階第137位のダスキーと申します。はぁ、ようやくご主人様にお仕えすることができて嬉しゅうございますわ」
「ちなみにノワールとガーネットもエクレア様の使徒でございますわ。あの2人はご主人様のお役に立てていますか?」
「使徒として契約を結ぶとその身に超常的な能力をさずかり、不老となって見た目も若返ります。そしてご主人様に永遠の忠誠と献身をささげることができるようになるのでございますわ」
後半はほとんど聞けてなかった。
頭がボーッとする。辛うじて聞けたのは使徒という単語だった。
使徒ってなんだろ?弟子みたいなものかな。
ノワールとガーネットもエクレアの弟子みたいに扱われてるし。
そしてその側で勇者アベルがつぶやいていた。
「なんだこの空間は。俺、勇者なのに、俺より目立ってやがる」




