第6話
「ねぇ、アベル。託宣の巫女様は何て言ってたの?」
可愛らしい声で聞いてきた女性は俺の恋人であり頼れるパートナーでもある弓騎士シャンディ。
彼女は若く見えるが御年150歳。俺の10倍は年を取っている。エルフ族だから長命なのだ。
俺の名は勇者アベル。
魔王を倒す宿命を背負っている。
しかしその宿命のため勇者は孤独なのだ。そのつらさは皆にはわかってもらえない。
そんなを俺を唯一癒してくれるのがエルフ族のシャンディだ。
俺の運命の相手といえるだろう。
俺の仲間はほかに、剣聖ヘーゼルがいる。剣聖というだけあって剣の腕前はとびきりすごい。
剣の腕は俺に迫る勢いだな。
まあ、剣聖の称号を持つぐらいだから俺よりすこ~しだけ上かもしれないかな。
剣聖ヘーゼルは現在母国にもどり勇者の役に立ちそうなものを取りに行くと言って俺の元を離れている。頼れる仲間なので早く帰ってきてほしいものだ。
そして俺はというと、シルバー王国の託宣の巫女様に次の行動の方針をきいてきたところだ。
託宣の巫女様がいうにはプラチナ帝国の帝都プラチナムへ行けと言う。
そこで俺の運命の仲間がいるとのことだ。
これは迎えに行かずばなるまい。
・・・・・・・・・・かわいいこだったらいいな。えへへ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ねえねえ。あれみてあれ大きいね~。大きい建物~~~。ふぅ、それにしても人が多いよね~~なにかのお祭りがあるのかな??」
可愛い声をだしているのは俺の愛しい愛しいシャンディだ。
150年も生きているのに幼さの残る言動が可愛くって仕方ない。
これでいて魔物を相手にすると凛々しい姿で仕留めるんだ。そのギャップが萌える~~。
え~とそんなことを考えている場合じゃない。
俺たちは運命の仲間を見つけるためにわざわざプラチナムへ来たんだから。
だけどどんな人かわからないな。
こんなことならその仲間の身体的特徴でもきいておくんだった。
そう考えていると、警察の人がむこうからやってくる。
治安を守るためのパトロールだろう。たしか帝都警察隊という組織だとか。
うう。何も悪いことをしていないのに、警察ときくだけで身構えてしまう。
構えている隣でシャンディは興味深そうに警察のほうを見ていた。
すると、一人の女性が俺の隣を通り過ぎる。
その瞬間、ビビッときた。本当に電気が流れたようにビビッときた。
相手の女性もこちらを振り向いて驚いていた。
え、なに、もしやこの人が俺の運命の仲間?
えー警察関係者?
やだなあ。
そうおもいながらも俺は意を決して自己紹介と勧誘をした。
「あ、あ~その~。すいません。実は俺、勇者をやっています。・・・はは、まいったな。ねぇ運命って言葉を信じる?俺、あんたに運命を感じたんだけど。俺と一緒に来てくれないかな?」
相手の女性は目を見開いて驚いていた。「それってプロポーズ?」とつぶやく。
「ちがうちがうちがう。言い方が悪かった。ごめん。俺が言ったのは仲間として勇者の俺の力になってくれないかという意味なんだよ」
と慌てて訂正する。
「そうなんだ。ちぇっ。残念」
彼女の名はパンジー・マリーゴールドというらしい。
この国の貴族で子爵位を持つ貴族だという。
現在は帝都警察隊の第4小隊長を務めているとか。
だが、特筆すべきはその魔力だ。
魔力の強さは俺ですら及ばない。魔力量も桁外れだ。
これはすごい。魔法使いとしてパンジー・マリーゴールドは非常に優秀といえるだろう。
・・・・・・・・・・見た目はそこそこだが。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いま、僕はノワールとガーネットの邸宅で身体を休めている。
でも、心は休まらない。
というのも、この邸宅に来客があり応接室で話を聞こうとしているのだが、この客がただものではないのだ。
精悍な顔つきと太い腕、目はギロリとこちらを見据えている。
普通サイズの椅子では入りきらないのでソファに座ってもらっている、とても大柄な男性だ。
この男性は中央平原3強の一角、神聖ゴールド聖教国の軍を率いる「聖教六武威」の将軍の一人でマホガニーという。
ちなみに龍族らしいが、見た目は人族だ。
龍族。ドラゴン族ともいう。龍族は人知を超えた魔力と巨大な四肢をもち、心の弱いものだとその咆哮をきくだけで死んでしまうという地上最強の種族だ。
人族よりも遥かに昔から存在しており、創造神に最も近い種族とも言われる世界最古の生き物だ。
そして人族の姿に化ける力を持っている。
このマホガニーという龍族も龍の姿ではなく、人族の姿でいる。
とにかくやばい種族にはちがいない。僕はブルブルと震えている。
そんな僕のとなりにはアカエール様が座る。
そういえばアカエール様もシルバー王国の将軍だったな。
こんなところで将軍同士が座ってにらみ合っているよ。あはははー。
僕が軽く現実逃避をしていると、見かねたガーネットが助け船を出してくれた。
「それで、かの名高き「聖教六武威」閣下が今日は何の御用でプラチナ帝国に来られたのですか?」
「聞いたところによると神聖ゴールド聖教国もシルバー王国とプラチナ帝国との同盟に参加する予定だと聞いております。あなたはその護衛として参られたのではないですか」
へ~、そうなんだ。
現実逃避から戻ってきた僕はそんなことになっていたとは知らずにすなおにびっくりした。
そして、マホガニーという将軍がガーネットの言葉に反応して口をひらいた。
「・・・・・・・うむ。久しいな。クラ、ん、ごほん」
マホガニー様は「あ、やべ」という顔をしてチラッとガーネットのほうをみる。
ガーネットは一瞬にらむがすぐに視線をそらした。
「それがしがこの国にきたのは護衛のためという理由もある。しかし、もうひとつは調査のためでもあるのだ」
「その調査をどうやろうか皆目見当つかぬで困っていたところ、わぬし、シルバー王国第二将のアカエール殿がちょうど目の前を歩いているのを見かけたのでな。わっはっは。ついてきてしまった」
とあかるく笑っている。
いかつい顔をしているが面白い人なのかな。なんだか親しみが持てる。
そう思って聞いていると、アカエール様は、
「うそつけ。最初から俺を探知して接触するつもりだったくせに」
その言葉には答えずに、マホガニー様は急にまじめな顔をして、
「アカエール。長年、それがしと争ってきたお主なら、それがしがなんの調査をしに参ったか見当がついているのではないかな」
僕もアカエール様もドキッとした顔をする。
しかしマホガニー様は腹の探り合いは苦手なのかすぐに話をしてくれた。
「くっくっく。お互い、戦場でのかけ合いは得意だが、面と向かっての腹の探り合いは苦手であるな。なので単刀直入に言おう」
「近年、プラチナ帝国傘下の国が我が国の国民をさらっているという噂が流れておる。特に魔族をさらっているとか」
ずばり過ぎて僕もアカエール様もグゥの音もでない。
「がっはっはっは。何もそのことを責めているのではない。いまは、3国とも軍縮ムードで戦争をする気分ではない。それがしもそれを言い立てて騒ぎを大きくするつもりはない」
「だが、我が国の国民である魔族がひどい目にあっているのなら秘密裡に解決をしたいと思っている。わぬしらはどうか」
アカエール様は
「もちろんシルバー王国としても同盟国の不正を見逃すつもりはない。だからといって大ごとにするつもりもない。できれば俺も秘密裡に処理したいと考えている」
「・・・・協力してくれるか?」
「ああ。わぬしとなら協力してもいいだろう」
そう言って協力関係が成立した。
僕は置いてきぼりだけど、話がまとまったようだ。
しかし、すごいことになった。
僕の目の前でシルバー王国の将軍様と神聖ゴールド聖教国の聖教六武威の将軍様が手を組んだのだ。
この歴史的な瞬間を魔道具で記録できないのがとても残念だ。




