第4話
あのあとの調査でわかったことがある。
一つ目は、賊が襲撃した邸宅とは、ノワールとガーネットの住む邸宅だった。
しかし20人を超える大規模な盗賊が襲撃したらしいが、あっという間に瞬殺されてしまったそうだ。
あまりの実力差にリーダー一人だけが逃亡を図り、隠れて様子を伺っていたところをアカエール様が斬ったということになる。
果たして盗賊たちはノワールとガーネットを狙って襲撃したのだろうか。
いや、僕のカンは違うと言っている。
ノワールとガーネットでなかったとしたら誰を狙ったのか?
・・・・・リリかもしれない。
仮に、盗賊は邸宅に匿われたリリを狙ったとしよう。
なぜ盗賊はリリを狙う必要があったのか。
背後にブラウン王国がいたとしても文官の持ち物を盗まれたからってそのはらいせに盗賊を雇って襲わせるだろうか?
いや、しない。
ということは、盗んだものを取り返そうとした?
リリのおとうさんが盗んだと思っててそれをリリが持っていると思ったからそれを取り返そうとして襲ったのかもしれない。
この考えは僕の中で一番しっくりきた。
でも・・・・・。
リリの持っている荷物はお父さんのお気に入りの茶色の四角いバッグしかない。
謎は深まるばかりだ。
もう少し調査をすればわかるかもしれない。
さしあたって賊が逃げたというブラウン王国の大使館を調査する必要はあるだろう。
ここで問題がある。
大使館はたとえプラチナ帝国傘下の国とはいえ治外法権で守られている。
プラチナ帝国は法治国家だ。たとえ帝都警察隊といえど、調査のために入れてくれないだろう。
そのことはパンジー・マリーゴールドも同じことを考えているようだ。
う~~ん。こればかりはノワールでも難しいし、ガーネットも専門外。
ほかに僕の知り合いはいないし。どうしよう。
僕はそう考えていたが、ふと思いついたのだ。
外国の大使館に顔が利きそうな人物のことを。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕たちは、いまブラウン王国の大使館のなかにいる。
僕とアカエール様、帝都警察隊のパンジー・マリーゴールド、そしてキャロット・アプリコット次期公爵様だ。
あ、キャロット様の護衛のカナイ様と侍女のマナ様もいる。
あのあと、僕はキャロット様に助力を求めたのだ。
アプリコット公爵家は内交をつかさどり、傘下の国はすべてアプリコット公爵家によって序列を決められている。
なので、次期公爵様が大使館を訪問したいといえば、嫌とは言われない。
権力ばんざい。
僕とアカエール様は護衛の服装で、パンジー・マリーゴールドは帝都警察隊の服装ではなく侍女の服装で来ているので怪しまれないだろう。
キャロット様は、突然の僕のお願い、ブラウン王国の大使館に入りたいと言う僕の願いをこころよく聞いてくださった。
本当におやさしい方だ。
ちょうど用事があったのでなんて気を使ったことまで言ってくださった。
こうしてアプリコット家による非公式ながらも次期公爵様の大使館訪問という隠れ蓑を使って、僕たちは大使館調査に踏み込むことができた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ブラウン王国の大使が僕たちを出迎えた。たしかブラウン王国の伯爵位を持つ貴族だと聞いている。
キャロット様の顔を見ながら少し不安な様子だ。
なにか都合の悪いことを言われるのかとびくびくしているようにも見える。
「本日はキャロット・アプリコット様直々に我が国の大使館のお越しくださいまして誠にありがたき幸せにございます」
と優雅な態度を作りあいさつをする。キャロット様も
「急な訪問をしてしまい申し訳ありません。ですが、これもアプリコット家による抜き打ち試験だとおもってください。最近の貴国は非常に優秀な外交得点を得ており何か不備な点でもみつけませんと序列を上げなければいけませんので」
と言いながらふふふと笑みを浮かべている。
「なるほど。これは大変名誉なことですな。それでは、序列をあげる名誉を浴するべくこの大使館の総力をあげてこの試験を乗り越えてみせるとしましょう」
とパッと喜色をうかべた表情だ。
大使自ら正門扉へ案内すると、そこからキャロット様は廊下をすたすた歩きだした。
大使は予定外の行動をとられても驚きをおくびにも出さずそのままキャロット様の後をついていった。
最初は応接室へ、つぎに資料室、そして2階へあがり、大使の執務室、最後に大使館の大広間へとキャロット様は歩を進めていく。
大使である伯爵はキャロット様の後ろにつきながら歩いている。僕たちはそのさらにうしろについている。
これはすべてキャロットさまにお願いしていた通りの行動で、なるべく大使館の中を長く歩いてもらいたいと希望を伝えてあったのだ。
そのあいだパンジー・マリーゴールドが探査魔法をつかって怪しい人、怪しいものがないかを探る予定にしている。
ちなみにパンジー・マリーゴールドは半径30m以内の探査魔法を使える。これだけあれば大使館全体の捜索ができるだろう。
「あったわ。ここが怪しいわ」
とパンジー・マリーゴールドが僕とアカエール将軍だけに聞こえるようにいった。
僕はその言葉を待っていた。
そして打ち合わせに従って僕はキャロットさまに合図を送った。
合図をうけとったキャロットさまは大使に、
「大使どの。ブラウン王国の大使館はよく管理されているわ。でもまだ建物と設備を見ただけ。やはり大切なのは人物だとおもわない?」
「よって、いまからこの大使館で働く従業員の面談をおこないます。手の空いているものから大広間へ来るように伝えてください」
「大使殿の見ている前で面談を行いますので」
とキャロットさまはうまく大使館の従業員を一か所に集めようとしてくれた。
僕たち3人はその間に怪しいと判断された場所へと移動したのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここよ」
パンジー・マリーゴールドが指し示す前にはドアがある。
当然カギがかかっている。
しかし、パンジー・マリーゴールドは開錠魔法でドアを難なくあけた。
やはりこの人すごい。
開錠魔法はかなり高度な魔法のはずだ。うまれもった才能に加えて想像を絶するほどの時間を訓練に費やしたはずだ。
僕たちが中にはいると、中は物置のようだったが、「ヒィッ」という声が聞こえてきた。
あの賊だ。
「なんでお前たちがここにいるんだ!?」
と震える声で言う。
そして後ろを向き、地下への階段を下りて逃げて行った。
僕たちも賊を追って地下への階段を下りていく。
そこで僕たちが見たのは何かを作る工場のような景色だった。
そこで働いている人たちが僕たちをみて、敵が侵入したと認識した。
「こいつらはブラウン王国のものではないな。なら殺せ。見られてしまったからには生かして帰すな!!」
そういって襲ってきた。数は10名ほどだろうか。そこそこ強い。
僕はすぐに応戦しようとしたがそれよりも早くアカエール様とパンジー・マリーゴールドは応戦した。
アカエール様は瞬時に半数を切り捨てた。「あ、証人として残すんだった」とこぼしていたので、余裕が感じられる。
パンジー・マリーゴールドは魔力制御で魔力を縄のように形をかえ、その場の人間を拘束した。拘束魔法と呼ぶものだ。
この2人本当につよい。冒険者ギルドでも優にAランクの実力はあるだろう。
それはともかく、僕たちはこの地下工場を調査した。




