第17話
ここからはメアリーから聞いた内容だ。
8年前のエメラルド子爵家には性格の荒々しいゴドー・エメラルド子爵(当時27歳)と派手な服装と性格の悪い事で有名な奥方マリエッタ・エメラルド(当時25歳)がいた。
そのマリエッタは旦那の目を盗みしょっちゅう浮気をしていた。屋敷に引っ張り込むので使用人全員が知っていたが誰も何も言わなかった。
2人のあいだには子供がいた。双子の兄弟だ。どちらも母親に似てか顔がきれいであったが兄のほうがより奥方に可愛がられていた。
そして当時7歳になったときに、2人とも早々に婚約者を決めることになった。
貴族の子供としては決して早くはない年齢だ。そして兄のほうの婚約者がローリア・アクアマリン伯爵令嬢である。
しかし、兄のほうはなぜか自分の婚約者をいじめ、弟の婚約者と仲良くした。
3年後、ともに10歳になったときに、弟は弟の婚約者から婚約を破棄してほしいと言われ、兄が代わりに婚約を結んだ。
兄の婚約者ローリア・アクアマリン伯爵令嬢は婚約破棄をされていた。
ローリア・アクアマリン伯爵令嬢は当然ショックを受けたが弟のほうも同様である。しかしまだ10歳で母親から疎まれており、耐えるしかなかったという。
かわいそうにおもったのだろうか。
ゴドー・エメラルド子爵は非道なふるまいをした兄を後継ぎから外し弟を子爵家の正式な後継ぎにした。
そして双子の10歳の誕生日のパーティのとき、エメラルド子爵家に、
「かつてシルバー王国に仕えていたがエメラルド子爵家の次期後継者に仕えるためにこの家へ参りました」
といって訪れた人がいたそうだ。
メアリーたち使用人には名前を伏せられていたが、当主や奥方は目を丸くして非常におどろき、喜んでいたそうだ。
なんでもシルバー王国の超大物だそうだ。
その大物一人がいればこのプラチナ帝国すら揺り動かすほどで大魔導士イオニーア様にも匹敵するほどの人物だと旦那様は言っていたが、それほどの大物がなぜか双子の弟のほうに忠誠を誓うと言ってきたらしい。
それを知った元弟の婚約者はそれなら兄を捨てて弟のほうがいいと言い出した。弟はその婚約者の様子を知ってものすごくショックを受けた。
兄は兄で自分のほうが本来なら後継者になるはずだと考え、弟の地位と婚約者を再度奪ってやろうと企んだ。
母親のマリエッタは兄のほうを好いており弟のほうは好きではなかったので兄のたくらみに協力したらしい。
これは性格や相性の問題だろう。
母親のマリエッタはこっそり毒薬を弟に飲ませ、弟を病気にさせた。
「このままでは子爵家は途絶えるので兄を後継ぎにしましょう」
そう言って夫のゴドー・エメラルド子爵に頼んだそうだ。
毒を飲まされたことを知らないゴドーはそれを承諾したが、シルバー王国の大物という人物は毒を飲まされ病気で死にそうになっている弟を連れて屋敷から出たそうだ。
ゴドー・エメラルド子爵は事の次第を知り、マリエッタに激怒した。
毒を飲ませたことではなく、シルバー王国の大物を逃したきっかけをつくったことに対してだ。
(ここからはメアリー視点)
私たち屋敷の使用人は1階におりましたが、旦那様たちは屋敷の2階に住んでおり、いつも大きな声で喧嘩をしていましたが、その日はとくに違いました。
旦那様が魔法を使った音がしたのです。
さらに奥さまの悲鳴と金切り声がいつもより大きくて、これはただ事ではないと気づいた私たちは、使用人総出で2階の旦那様の部屋へ行きました。
部屋の中は、大きな火災で燃えた跡があり旦那様も奥さまも大坊ちゃまもいなくなっていたのでございます。
関係者全員がいなくなったエメラルド子爵家に対して帝国の皇族が調査を入れ、のちに正式に取り潰しとなりました。
その家にいた使用人はすべて散り散りになったのでございます。
これでメアリーの話は終わった。
メアリーはふぅとおおきくため息をつき、憑き物がとれたように表情が晴れ晴れとしている。
壮絶な話だが少しホッとした。
なぜなら全員が死んでいるからだ。弟も毒を飲まされ病気になっている。生きてはいないだろう。
メアリーが、
「しかし、見れば見るほどあなたは小坊ちゃまによく似てます」
「私たちは小さいころから知っているので他の人には見わけがつかなくても兄の大坊ちゃまと弟の小坊ちゃまの見分けはつきます」
「でも、これでいいのかもしれません・・・・・」
と寂しそうに言う。最後に
「もちろんあなたが小坊ちゃまとは思いませんが、何かの縁です。こちらの方からも話を聞いてもらえませんか。エメラルド子爵家の最後を看取るつもりで」
とお願いされた。
手にはメモがある。そこには住所と名前があった。住所は平民区の娼館である。
男の人と女の人が会うところだ。僕はまだそこへはいったことがない。
だけど、メアリーさんの妙な気迫にまけて、行ってみようと思った。
乗り掛かった舟だ。聞いてほしいと言うのだから聞いてみよう。
昼のど真ん中の時間帯に娼館の並ぶ地区へ向かった。
うう、こんなところにいることがほかのみんなにばれないようにしたい。
そう考えながらメモにある住所の店へ向かった。
そこの娼館に入り、僕はメモにかいてある名前の人がいるか聞いた。店のボーイは胡散臭い目をむけ、
「坊や、まだ営業時間じゃないんだ。それにその娼婦はだいぶくたびれていてお前みたいな坊ちゃんの手には負えない。やめておいたほうがいいぜ」
と言ってくる。
そうじゃなくて話を聞きに来ただけなんですと必死で説明して呼んできてもらった。
「私に用があるっていう坊やはどこだい」
といいながら出てきた女の人は30代ぐらいでずいぶんだらしない服装をしている。
化粧はしていない。
匂いがきつい。香水かな。僕には苦手な匂いだ。
その娼婦は僕の顔を見るなりハッとして、
「エメラルド子爵家のことを聞きに来たのかい?」
とニヤリと笑って言ってきた。
僕の顔をみて何か思うところがあったのだろう。
僕はその娼婦からさらに衝撃的な話を聞かされた。




