第14話
翌日、僕はいつもの場所でナスと昼飯を食べていた。
すると、
「ギルド屋とはお前たちのことか?」
と僕に声をかける人がいた。
「「ギルド屋」とはお前たちのどちらかなんだろう。おれがおまえたちに依頼をしてやる」
と勝手に話を始めようとした。
なので僕は慌てて
「言わなくて結構です。依頼は受けません」
すると相手は目を険しくさせ
「お前たちは依頼を受けその報酬で生活をしているのだろう。俺は貴族だぞ。ありがたく依頼を受けるべきだろう」
と強い口調で言う。僕はため息をつきながら、
「あのですね。ギルド屋をしているのは僕ですが、なにも絶対に依頼を受けないと生活をしていけないということはないんです。あえて受けるにしても平民専門なんです。貴族専門の方は貴族棟にいますよ」
と説明した。しかし、相手はより居丈高になって、
「ちっ。にしてもだ。貴族の俺がわざわざ足を運んでやったんだ。普通は受けるだろ。この底辺が」
しかし僕は依頼を受けないようにかわす。
「そのとおり。底辺の私では、とても依頼を受けることは叶いません。路傍の石のようなもの。どうか見捨ててくださいませ」
僕はナスと目配せで合図し、一目散にその場を走り去った。
「あ、おい。ちょっと待て。こら」
と言う声を背中に僕たちはそのまま午後の授業へと向かった。
翌日。
ナスと昨日とは別の場所で昼飯を食べていた。すると「やあやあ」と声をかけてくる者がいた。
またかと思って顔を見ると昨日とは違う顔だ。
しかしその後ろには昨日声をかけてきた貴族がいた。その貴族はこちらを見て睨んでいる。
僕は声をかけてきた人に、
「何かご用ですか。それともそちらのお連れ様が昨日、私に依頼しようとした内容と同じ依頼をしたいということでしょうか」
と言って逃げ出す準備をする。ナスもこっそり逃げ出す準備をしている。
「いやいやちょっと待ってちょっと待って。話ぐらい聞いてもいいんじゃない」
最初に声をかけた人物が穏やかな口調でこちらの出方をうかがっている。しかし、それとは反対に昨日の貴族は激しい口調で、
「そうだぞ貴様ら!!本来なら貴様らごときが口をきける方ではない。あんまりこちらを侮辱するならお前たちが依頼を受けられないようにしてもいいんだぞ!!」
とケンカ腰だ。しかし、その言葉を制止して、
「ナルガ、辞めろ!!お前のその態度のせいで私が直々に顔を出すことになったんだぞ」
「もういい。お前がいては計画が崩れる。私の側近には不適格だ」
そこまで言って、ようやくナルガという貴族は、くやしそうに、
「グギギィ。も、申し訳、ありません」
と言って大人しくなった。
「やあ、気分を害して悪かったね。彼も悪いやつではないんだ。とにかく依頼をしたいので、話を聞いて欲しい」
と申し訳なさそうな表情をして依頼内容を言い始めた。
内容は、荷物の運搬。夜に、ある場所から荷物を受け取り指定の場所へ持って行って置いてくる。それだけ。
ナルガと言う貴族の態度は良くないが、ナルガに注意をした人物は普通に話ができる人のようだ。
しかし、身分や名前を明かすことはしなかった。
依頼主が身分や名前を明かさないのは多少問題がある。
しかし僕はこの依頼を引き受けることにした。
夜。
依頼の時間が近づいた。特に難しい内容ではないが妙に胸騒ぎがする。
ナスから、昼間会った依頼相手はグレープ王国の者だろうと教えてもらっていた。
「制服についてる紋章がグレープ王国の紋章だ。隠していたんだろうが風が吹いたときにチラッと見えた」
何にせよ、名乗らないのは怪しいのである。
しかし、依頼を引き受けた以上は言われた通りにするつもりだ。僕は、時間までに指定の道路で待機していた。
あとは馬車がやってくるのを待ち、その馬車で指定の場所までいけばよい。
夜だから、音が響く。
耳を澄ませていると、馬車の車両の音が遠くから聞こえてきた。
その音をきいてそろそろ馬車が見えてくるころだろうと考えていたら案の定馬車がやって来た。
馬車が僕のもとで止まった。御者が僕に声をかける。
「旦那。依頼の馬車だぜ。この馬車で旦那は町外れの一軒家まで行き、2時間ほどその場で待機だ。わかってんだろうなあ」
御者の態度はガラが悪い。言葉だけでなく目つきも悪い。
変だなと思いこの御者をよく観察してみると・・・・・ん、身のこなしがただ者じゃない。これは暗殺を専門にしている者の身のこなしだ。
少なくともこの男は対人戦闘のプロといえる。
なんでそんな人が馬車の御者なんかやっているんだろう。
暗殺者と言う職業をかくして誰かを殺す気か。もしくは僕を始末するとか。
でも僕にそんな価値あるかなあ。あ、ノワールとガーネットの信奉者たちから命を狙われているんだっけ。
しばらく思案しているとその御者の男に
「早くしろ!」
と怒られた。
「は~い」
僕はぼやきながら御者台にのぼり、馬車を動かそうとした。
男はそのまま馬車の中に入ろうとする。そのとき、
「お待ちになってください!」
というノワールの声がした。ノワールが待ち合わせ場所にきてくれたのだ。
実は今回の依頼、妙に胸騒ぎがするのでノワールに来てもらうようお願いしておいた。
さらに合流するときは少し様子を見てからとお願いしておいたのだ。ノワールはお願いした通りに動いてくれた。
しかしノワールがけげんな顔をしている。
「なぜ馬車の荷台の中にキャロット・アプリコット令嬢が捕まっているのですか?」
ノワールは男をにらみながら言う。
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僕は意味が分からなかったが、男は馬車に入るのをやめ、武器を取り出した。
「てめぇ、なぜわかった!?」
え、本当なの。
馬車の中にはでかい箱があるだけだから。その箱の中にキャロット様が閉じ込められていると言うのか。
つまり、誘拐。
「お前がキャロット様を誘拐したのか」
「ククク。ばれちまったらしょうがねぇ。依頼通りおまえたちを殺すまでだ」
と言った瞬間、フッと男の姿が消えた。
消えたように見えるぐらい早い動きだ。
やはり男は対人戦闘、特に暗殺を生業としているプロのようだ。
キャロット様のことがばれたら、僕を始末するのが目的なのだろう。
男のナイフが僕の首を正確に狙う。しかし、僕は男の攻撃する軌道ををしっかり見切っていた。
何故そんなことができたかというと、すでにノワールが支援魔法をかけており僕の動体視力と反射神経が数倍にも上がっていたからだ。
お返しとばかりに僕が男に反撃をしようと振りかぶると、すでにノワールが拘束魔法で男の手足を縛った後だった。
「グゥッググッ・・・・」
動けないことを確認した僕はすぐ馬車の荷台の中身を確認する。
荷台の中にはキャロット様が縛られた状態でいたのですぐに助け出した。
幸いにも命に別状はなく、顔色は悪かったが身体に問題はなかった。




