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第10話

今度は貴族様からの依頼だ。


相手はピオニー商業国の第一王子。


余談だけど、ピオニー商業国はプラチナ帝国傘下の国で序列は2位。


内容はピオニー商業国の第一王子がエリューシオン教会の有力者との面談に行く際に僕に同伴してほしいということだった。


しかもそのときは僕と仲のいい「聖女」ノワールさまを連れてきてほしいというのだ。


怪しいし、貴族とは関わりたくないし、僕じゃなくノワール狙いだし「ギルド屋」の請け負える範囲を超えていると思ったので丁重にお断りした。


粘るかと思ったけど意外とあっさり引き下がった。


「そう、それは邪魔したね。気分を悪くしたら謝るよ。それではまた機会があったらよろしくね。今日はこれで失礼する」


と言って去っていった。権力を振りかざすかと思っていたので少し拍子抜けした。


数日後。


聖属性魔法の授業がおわり、僕はノワールとともに話をしながら歩いていた。


ちょっと見は授業の内容を質問をしている生徒というふうに見えるだろうか。


とそのとき例のピオニー商業国の第一王子が「やあ」と声をかけてきた。


この人、王子のはずだけど護衛いないなー。


なんてばかなことを考えていると声をかけてきて僕をほめてくる。


「その若さでギルドの代行業務をしているとは、君は相当優秀だね。それにわざと低評価の噂をながし油断をさそうとは。いやあぜひ君を我が国にスカウトしたいよ」


ハッハッハッとなごやかに僕に話しかける。そしてノワールのほうを向き、


「これはこれは聖女ノワール様。お会いできて光栄の極み。ここで知遇を得られたことをうれしく思います」


とにこやかにあいさつをする。


(本当に伝承どおりの黒髪、黒い瞳、なんだな)


と僕たちに聞こえないぐらいの声でつぶやいた。


その後、何食わぬ顔して優雅な貴族の作法でノワールにお辞儀をする。


王国を代表する王子としての振る舞いに僕は不覚にもきれいだなと感じてしまった。


だからだろうか。このあと、彼から提示された案に簡単に乗ってしまったのは。


この第一王子が言うには、後日、エリューシオン教会の有力者とピオニー商業国との交渉があり、王子として国益をかけて臨むのだが緊張して仕方がない。


そこで王子である自分が認めた人間がいてくれると緊張が軽減するだろうという。


その認めた人間というのが僕とノワールだそうだ。側にいてくれれば思う存分交渉できるというのだ。


ついてはその場に来てほしい。いやいや、ただ来るというがいやなら交渉の場には給仕のバイトという立場で来るのはどうだろう。実はこのバイト非常に人気がなくて募集をかけているがだれも来たがらない。時給はものすごくいいんだがなぜなんだろうね。


と逃げ道を防ぐように次々と提案してくる。それを聞いた僕はその熱心さに観念した。


仕方ない。のってあげるか。


と思った僕は、ノワールにも了承してもらい、王子に承諾の返事をした。



当日。


僕とノワールは帝都プラチナムにあるエリューシオン教会の総本山にきた。もちろんピオニー商業国の第一王子もいる。


「やあ。よくきてくれたね。おかげで緊張がやわらいだよ」


ハッハッハッとあいかわらずつかめない。


たしかピオニー商業国は商業が国名につくだけあって王族といえど商人のようなふるまいをし、決して人に腹を見せず、情より利を第一にするという国だとノワールから聞いている。


ですが・・・・・とノワールは言う。


「商業を第一にするということは契約は絶対に守ると思って間違いありません。彼の言う通り給仕のバイトに徹していてもかならず高額のバイト料は払われるでしょう」


なるほど、彼が何かを企んでいてもこちらはそれに構わなくても良いわけだ。そう思いながら、僕たちは教会の総本山に入っていった。


王子たちが交渉する相手はなんと教会のトップである大司教様であった。


超大物だ。


そしてこの大司教様。大変いやな性格をしているらしい。


部屋に近づくにつれて、付き添いの聖騎士様やメイドたちの緊張が高まるのがわかる。


やっぱり王子様にハメられて貧乏くじを引いたかなと思っていると、ノワールは涼しい顔をしている。


ノワールは僕に対して決して損になることを勧めない。


だから王子が何か企んでいたとしても大丈夫なのだろう。


通された部屋で僕は給仕としてそばに控え、ノワールは僕の隣に立った。


王子も椅子に座らず立って、大司教様が来室するのを待った。


すると扉の外からコツコツと靴の音がし、大司教様が近づいてくるのがわかる。


とびらの外で大司教様がメイドに怒鳴る声が聞こえる。部屋の中のメイドたちもビクッとする。


王子だけが涼しい顔をしている。


扉が開いた。


大司教様が部屋に入り、ギロッとあたりを見回した。


ちょうど僕とノワールのいる方角を見た途端、急に大司教様の顔色と態度が変わった。


大司教様は裏返った声で


「ちょちょちょちょちょちょまってーーーーーーー」


とよくわからない言葉を出してキョドりだした!


かと思うと急に借りてきた猫のようにおとなしくなった。


明らかにオドオドしている。


普段とあまりにも違う大司教様の態度に周りのメイドや聖騎士たちは目をパチクリさせている。


大司教様はチラチラとこちらを見ている。


僕を見ているのか?いや、どちらかというと隣のノワールを見ている。美人だからか??


僕はノワールの美貌に大司教様が目をつけたのかと思ったが、そういう感じじゃない。


むしろ世にも恐ろしいものを見ている表情だ。


大司教様の顔からだらだら汗が出ている。


大司教様はとりあえず自分がすべきこととして椅子に座ると言う行為を思い出したのか恐る恐る声を出し、


「あーーー、そ、そのー、すわっ、すわってもよろしい・・・・・・・ですか?」


と誰かに対して伺っている。


誰にだ?


もちろん誰も何も言わない。というか答えれられない。


ここでなぜかノワールが発言する。


「あなたより高位のものはいませんよ。あなたが座らないとだれも座れないです。それともあなたより立場の上の方がこの場にいるのですか」


確かにピオニー商業国の第一王子といえど大司教様のほうが立場は上だ。


「そ、そ、そーーーーでした。そうでしたな。いやーーははは。うっかりしてましたーーー」


と大司教様はひきつった声を出す。


ノワールは聖女だけど大司教様のほうが立場が上のはずだよねと僕が考えている間、大司教様はいまだキョドっている。


「わたし?わたしがここでは最高位でしたなーーーーだーはははーーーいやーーうっかりうっかりーーー」


と威厳もへったくれもない。


見ていて飽きないおじさんだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


大司教の心の声


なぜここに大聖女さまがいるのだーーーーーーーーー


やばいやばいやばい。


わしが教会トップの地位を利用してあくどく儲けていることや聖女付きのメイドにちょっかいをかけていることがばれるーーーーーーーーー


教会の本当のトップである大聖女さまがわしを裁きに戻ってきたに違いない。


やっぱりこの世界は創造神様が見ているのだな。


悪いことはできない。


わし、否定派だったけど、創造神実在派に宗旨替えしよかな。


5年前に大聖女さまが「探さないでください」という手紙をおいて出て行って、そこからなんの音沙汰もないので油断していた。


いかん。


大聖女さまの顔をみると、見習い時代に躾けられたトラウマで汗と頭痛と冷や汗が止まらんわ。


あああ、わしのボーナスタイムは終わった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(作者に代わってエクレアからの一言メモ)◇◇◇◇◇◇◇◇◇


エリューシオン教会のトップは実は大聖女ノワールなのです。


しかし、実際に下の者と接触するのは大司教なのでトップが大聖女ノワールであることを下の者は知らないでいます。


他の聖女たちも知らない。大聖女ノワールは大司教のみと接触しておりました。


そして大司教が幼いころからノワールに育ててきてもらったので大司教にとってノワールは絶対的な存在なのです。


ちなみに3歳から育てられたそうです。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 


「大司教様。今日は交渉の場を与えていただき、恐悦至極。有意義な時間をお互いが過ごせますようご配慮をいただければと思います」


と王子があいさつの言葉を口にするが大司教様はあうあうと口をパクパクさせている。


終始キョドった状態の大司教をノワールはにこにこと見つめていた。


大司教としてはいつ大聖女ノワールが自分を裁く発言をするのか気が気でない。


がそんなことは知らない僕は給仕をするために来ているので、お茶がなくなれば注いでいたが、大司教様めっちゃお茶を飲む。


なんなら淹れた先から飲む。


緊張している顔色をしているが緊張させる存在がいるとは知らないから僕は不思議で仕方なかった。


ピオニー商業国の王子だけはにこにこしながら、容赦なく大司教様に対し有利な条件をつきつけていた。


もうこわいぐらいの笑顔で。


しかしそれどころではない大司教。


とにかく一刻も早くこの場から逃げたいあまり余計なことは言わず全て相手の言うがまま。



無事交渉終了した。


「今回はきみと聖女ノワールさまのおかげだよ」


と大げさなほどの手ぶりでピオニー商業国の王子はお礼をいってきた。


だけど正直事情がよくのみこめていない僕は、


「はあどうも」


としか言えなかった。


その様子を愛おしそうに見ながらノワールは


「私へのお礼の分はすべてご主人様に渡してください」


それに対して王子は


「承知いたしました。黒髪の聖女様」


と一国の王子らしい優雅な振る舞いをノワールに見せていた。


しかしノワールは興味がないのか王子ではなく僕のほうへ視線を向けていた。


その様子を見て、ノワールは聖女だから王子といえど敬意を払わないといけない相手なんだろうと僕は一人で納得していた。

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