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第3部 プラチナ帝国魔法学園編 第1話

「いやああああああ、私、ゲームの世界に転生してるーーーーーーーー」


叫び声があがる2日前、アイボリー王国の王家に次いで権力をもつベージュ公爵の娘であるシャトルーズ・ベージュは屋敷の階段を降りようとしたとき、ふとした弾みでバランスを崩して足を踏み外してしまった。


ガタタッ、ガシャーーーーン。


「お嬢様ーー!!」


悲鳴をあげる侍女。


幸いなことに、身体に大きな傷は無かったが、運悪く頭を強く打ってしまった。


そして今、シャトルーズは目を覚ましのだが、起きて最初の一言がそれであった。


心配していた侍女をはじめ、公爵夫婦が「ゲーム??転生??」と疑問を持つのは仕方ないことだろう。


そんな皆の心配をよそにシャトルーズは真っ青な顔をしている。


私、いままでシャトルーズとして生きてきたけど、頭を打った拍子に前世のことを思い出したんだわ。


たしか、令和の日本でブラック企業の社畜をしてて、30歳を目前に過労死した気がする・・


そしてシャトルーズ・ベージュは私が前世でやり倒したゲーム「あなたの胸にロックオン!!憧れの王子様とラブラブ♡ズキュン」略して「胸キュン」にでてきた悪役令嬢の名前と一致しているのよ。


ついでに言うと顔もそっくりーーーーー!!


このゲームたしか、悪役令嬢は追放エンドで破滅するのよね。


どんどん記憶がよみがえってきたシャトルーズはさらに顔色が悪くなる。


「わたしはゲームのように破滅なんかしないわ。絶対に追放エンドを回避して見せるわよーーーーーーーーーーー!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「・・・・・・というわけで、「ギルド屋」のあなたに依頼をしたいのよ」


長々と説明をしたあと、すがるような眼で一人の令嬢が僕を見つめてくる。


僕はいま、プラチナ帝国の学園に学生として在籍している。


この学園は15歳から入れるらしく、この4月に僕は入学した。


いまは6月。


暖かい陽気を感じる季節だ。


中庭で昼寝をしようと教室から出たところをシャトルーズ嬢につかまり、長々と話を聞かされたうえで「ギルド屋」である僕に依頼をしてきた。



順を追って説明しよう。


さきの協定でシルバー王国とプラチナ帝国が同盟を結び友好を深めることになった。


友好政策の一環としてお互いの若い人材を交流させようということになった。


そのためシルバー王国からプラチナ帝国の学園に留学生が来ることになった。


この学園の名称を魔法学園といい、ここプラチナ帝国では王族貴族に加え、平民でも試験をクリアすれば入学して学問の恩恵にあずかることができた。


平民にとっては卒業後に高給取りの仕事に就きやすいというメリットがあるので人気は高い。


そこに、シルバー王国からも貴族が来ることになったので護衛を増やす意味で今年の4月から入学者の枠を広げたらしい。


すると、それに目を付けた商業ギルドが学園内で貴族とギルドの間のつながりを作るチャンスとみてギルドの関係者を送り込み、末永く良好な関係をつくろうとしたことがはじまりだ。


ここで学園に送り込むのは若者が望ましいという結論になった。


大人を送り込むには教師という形しかないが魔法学園の教師になるには難関試験に受からなければいけないから。


なので15歳から20歳までの若者をギルドの代表として魔法学園に生徒として送り込むことになり、その白羽の矢に僕が当たったというわけだ。


一応、商業ギルドのCランク相当の依頼という形をとっている。僕は商業ギルドの商業人だからね。


内容は学園で手に入りにくい商品の取り寄せが主だが、学園から外へでるときの護衛もあり。全寮制だからそういう需要もあると判断したわけだ。


ちなみに僕は平民専門。


平民といえど学園に入学できるということは家は一定以上の資産をもっている証だ。関係を作っておいて損はないと考えたのだろう。


僕は4月から入学してすでに何件か依頼をうけ達成している。


依頼人からはとても喜ばれている。そこから僕のことを「ギルド屋」と呼ぶようになったみたい。


そしてその評判をどこかから聞きつけてきたアイボリー王国ベージュ公爵令嬢のシャトルーズ嬢はぼくのところへ依頼をしにきたというわけだ。



「あの~~~~ちゃんと聞いていただけているんですの?」


と考え事をしていた僕にシャトルーズ嬢は心配そうに声をかけてきた。


説明をしても僕が無反応だったから心配になったんだろう。だけど無反応になる気持ちもわかってほしい。


彼女の話をまとめると、シャトルーズ嬢の婚約者が平民に「これから」熱をあげて、その平民の令嬢が「これから」冤罪工作してシャトルーズ嬢の評判を下げて、「これから」1か月後の終業式パーティで婚約者からその令嬢をいじめたという断罪イベントが起きるからそれを阻止してくれ。


まだ起きてもいないことを前提にだなんて無茶もいいとこだ。「これから」が3つもあるし。


この令嬢は、託宣か予言のスキルを持っているのかな。だってそうじゃなかったらただの妄想だ。


ツッコミ所が満載で僕の手に負える範囲じゃない。だけど、彼女自身は嘘でも冗談でもなく必死な様子だ。


ぼくは、必死な思いをしている人を無下に切り捨てるようなことはしたくない。


「僕は何をすればいいんですか?」


と返すとシャトルーズ嬢は自分の意見を聞いてもらえたと思い、目を輝かせて自分の考えを僕に言った。

 

シャトルーズ嬢からの依頼とは、録音の魔道具をつかって自分は何もしていないという証拠を集めてほしいということだった。


あと平民令嬢がばらまく噂をできるかぎり消してほしいとも。


最終的には、終業式でおきる断罪イベントの被害を最小限に抑えるというのが本当の目標らしい。


最悪、婚約者である王子殿下との婚約は破棄されてもかまわないと言った。


どんな事情にせよ貴族令嬢が婚約破棄されるというのはかなりのおおごとだと思う。


もちろんそんなことは彼女の妄想で起きない可能性もあるわけだけど。


だけど、シャトルーズ嬢は明らかに困っていた・・・・・ようにみえる。


本当に困っているなら助けようと思い、僕はまずシャトルーズ嬢がどんな人物かを調査した。


結果は白。


少なくとも嘘をつくことはないとわかった。


なら、彼女の言葉を信じて、彼女の婚約者であるアイボリー王国第1王子ライム・アイボラリーと側近、そして平民令嬢を調べることにした。


結果は黒。


どうやって知り合ったのかわからないけどライム王子と平民令嬢が学園内でいちゃついているのは周知のできごとだった。


王子なので側近がいて窘めているかというと、側近たちもその令嬢にべた惚れだった。


その令嬢は魅了のスキルでも持っているのかと疑った。だって綺麗だけどそこまで魅力的と思えなかったから。


調査の結果魅了スキルもなし。


平民で入学している理由は貴重な聖属性の魔力をもち、魔力量がAクラスだったから。実家は普通の家。これも調査してすぐにわかった。


じゃあ将来は聖女候補としてエリューシオン教会に入るか、それ以外だと魔法省や魔法騎士団ということも考えられる。


さらに詳しく調べると、王子たちも最初は聖属性もちで回復魔法を利用できるとおもって近づいたらしいが徐々に本気になっていったということが分かった。


王子チョロイ。


しかし、王子には婚約者がいるので愛する者とは結ばれない悲劇のヒロインだと自分たちで酔っているようなのだ。


ここまで聞いた僕は、たしかにシャトルーズ嬢の言う通りだと思った。


他には、王子の婚約者である公爵令嬢がその平民令嬢に嫉妬していやがらせをしているという噂も流れている。


もちろん公爵令嬢のシャトルーズ嬢はそんなことはしていない。そんな許せない噂の出どころはライム・アイボラリー王子とその側近たちであった。


僕にとって、冤罪をきせる行為はは許せない。


なので、シャトルーズ嬢に全面的に協力することにした。

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