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第10話

プラチナ帝国の皇帝宮では、「創造神がつくりし7つの邪悪な災厄」の一つである邪神による破壊が続いていた。


しかし、こちらは全力で防御しているが邪神のほうは本気でないのかもしれない。


猫がネズミをいたぶるようだ。


中心となって防いでいるのはジングートであった。主に邪神の大きな尾による攻撃を防いでいる。


魔法攻撃に対しての防御はバーガンディ・アプリコット公爵と皇帝ローシェンナ・プラチアーナ自らが先頭に立って防いでいる。2人で防御結界魔法を維持していた。


しかし邪神に対しては防戦一方である。


魔法騎士団が女性や力の弱い貴族たちを大広間から避難させることを優先にしているため消極的な方法しかとれないためである。


そんな状況に苛立ちを覚えた皇帝ローシェンナ・プラチアーナは


「ええい。忌々しい。他に攻撃に参加できる者はおらんのか。そうだ。魔法力は随一のパンジー・マリーゴールドはいないのか!!」


と事態を打開するために必要なパンジー・マリーゴールドの姿を探した。


「いない・・・?すでに逃げたのか。いや、そのような性根のものではなかったように思うが??」


と訝しがっていると、大広間の隅でうずくまるパンジー・マリーゴールドをみつけた。


しかし彼女の様子がおかしい。


まるで魔法を使っているかのように体に魔力が渦巻いている。


かといって邪神に対して攻撃を仕掛けているようには見えない。むしろ・・・・・・・


「まさか、邪神へ魔力供給をしているのか!!!」


魔力供給・・・すなわち魔力を邪神にあたえ、邪神を支援している。


つまり、この騒ぎをおこした実行犯は彼女パンジー・マリーゴールドということだ。


隠しようもない大罪といえる。


「ぐぅぅぬうううう。貴様何をしている。パンジー・マリーゴールド!!!!!」


皇帝ローシェンナ・プラチアーナは激昂しながらパンジー・マリーゴールドに問いかけるが彼女は答えず魔力の供給に集中する。


その様子を見て、


「貴様なのだな。そうなのだな」


とさらに怒りを見せる皇帝ローシェンナ・プラチアーナに答えず、さらに魔力をこめ邪神に大きな魔力を与えた。


邪神にさらに力を与え、この大広間ごと消滅させるつもりのようだ。


皇帝ローシェンナ・プラチアーナはその様子を見ても何もできないでいることに顔を大きく歪めている。


とそのとき、突然、ピカアァァァァァという音がした。


その音の激しさにその場にいる者たちは一斉に目を伏せた。


邪神からの強力な魔法攻撃を受けたと思ったからである。


だれもがもう駄目だと思ったが、何も感じない。


不思議に思って顔をあげ邪神のほうを見るととんでもない光景が広がっていた。


そこには宙に浮く大魔導士イオニーアがいたのだ。


たなびく髪は神々しく、発せられる魔力は膨大であるが、魔力からは厳しさよりも温かさを感じる。


「大魔導士イオニーア様・・・・・」


だれかがそうつぶやき、人々は感じた。


大魔導士イオニーア様が我々を助けに来てくれたのだと・・・・。


しかし宙に浮く大魔導士イオニーアは、


「誇らしきご主人様のご希望により、この場を収拾いたします」


とつぶやくのみ。


大魔導士イオニーアがそっと左手をあげる。


ピカァ。


魔力を込めたそぶりすらなかったのに、その場にいた全員のケガが元通りになった。


腕がとれた騎士、足が火で焼け落ちた貴族、顔が半分なくなり絶命した文官、上半身が無くなり絶命した大臣、すべてである。


死者までも生前となんら変わらぬ姿に復元した。


まるで時間が逆行したかのように。


その場にいる者が驚くのをよそに、大魔導士イオニーアは次の行動に移った。


スゥと右手をあげ、ゆるやかに魔力をこめる。


その動作はひどく緩慢だ。


すると邪神がピギャアアアアアアアァァァという断末魔のさけび声をあげ、押し潰されるように小さく圧縮し空間から消え去ったのだ。魔力の一かけらも残さずに。


人々がきづくと大広間はもとの重厚な雰囲気をもつ国威を高めるにふさわしい空間に戻っていたのである!!


ほんの一瞬前まで、命が失われ、国が崩壊する寸前であったのに、それが夢であったかと錯覚するぐらい元通りになっていた。


どれぐらい茫然としていただろう。


だれかが気付いたように叫んだ。


「大魔導士イオニーア様!ばんざーい!!ばんざーい!!ばんざーい!!」


それに同調するかのように多くの声が大魔導士イオニーア様バンザイを繰り返した。


目の前で起きた奇跡をいまだ信じられない気持ちのジングートは、一人つぶやいた。


「これが噂のプラチナの守り神の魔力・・・・大将軍シェーラ様と同格の魔力だ。この守り神がいる限り我がシルバー王国はこの国に手出しできない」


ジングートは、この騒動が落ち着いたら一刻も早く調印式を再開しなければと思考をきりかえた。


大魔導士イオニーアは完全に元に戻ったことを確認し、バンザイの声をきいても一言の感想も漏らさず、来た時同様、音もなく転移魔法で消え去った。


姿を現してから消えるまで時間にして5分足らず。


後にのこったのはバンザイを連呼するプラチナ帝国の要人と呆けた顔をしたパンジー・マリーゴールドであった。


「イオニーア様・・・・・・・。なぜ私を置いていくの・・・」


と。その目には途切れることのない涙が流れていた。

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