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第4話


僕が警護をしているクリムソン様は、”赤”のマゼンタ公爵様の屋敷に入っていった。


いまは真夜中だ。少し雲が出て来たので、雨が降るかもしれない。


警護役の僕は外で待つようにと言われてしまった。


屋敷の中では警護は不要とのことなのだろう。僕以外にも何人かの騎士さまたちが屋敷の周りを固めている。


おそらくマゼンタ公爵閣下の騎士さまたちだろう。


仕方ない。待つしかないか。


ポツリポツリと雨の音がし始めた。


・・・・・・・・・・やばい。本格的に眠い。この雨の音も眠気を誘う。


するとイオニアが気を利かせてくれて、


「誇らしきご主人様、ご安心を。いま異空間を作りこの中に快適にすごせる部屋を用意しました」


「この中に入ってぐっすりお休みくださいませ。リューシェが添い寝をしてくれますよ。もちろん何かあればすぐお呼びいたしますので」


眠くて仕方がなかったので助かったが異空間って何?


もう何でもありだ。


そしてもう1つ質問があるので聞いておく。


「でも僕がいないことがすぐばれるんじゃ?」


「ご安心を。周りへの対策として私の隣にご主人様がいるように見える認識阻害の魔法をかけております」


「せまい執務室内だと難しいですが、ここは外ですし、周りの方たちも私たちのことはあまり気に掛けていない様子ですのでばれません。ご主人様はゆっくり眠ってくださいね」


と言ってくれた。


僕はイオニアの魅力的な誘いを断われず身を任せてしまった。


異空間??かどうかはわからないが心地いいベッドがありすぐに眠りに落ちてしまった。



目がぱっちり覚める。


隣にはサファイアのような青い2つの瞳が僕を見つめている。


リューシェだ。


リューシェは僕が起きたことに気づくと穏やかな笑みを浮かべて、


「おはようございます。英明なるご主人様。お疲れはとれましたか。まだ勤務中ですので朝食をとることはできませんが、簡単な軽食でよければお召し上がりくださいませ」


この言葉に僕はさっと起きる。


やばい、寝過ごした!!!


いま、どうなっている。たしか警護中だった。


僕は焦る気持ちを隠せなかった。


ぱっと視界が明るくなった。どうやら異空間??から元の世界にもどったみたいだ。


「おはようございます。誇らしきご主人様。よくお眠りになられましたでしょうか。まだあの者たちは屋敷を出る気配はありません」


イオニアが朝の挨拶をし、クリムソン様がお屋敷から出ていないことを教えてくれた。


「よかった~~~~~~~~」


僕は力が抜けて、座りそうになったぐらいホッとした。


いまだにクリムソン様がお屋敷を出る気配はない。


あのあと雨がかなり降ったのか地面が濡れている。いまは止んでいるようだ。


会合はまだまだ終わりそうにない。


そう思ったとき、屋敷内で動きがあった気配がする。しばらくすると、屋敷の扉があき、クリムソン様が出てきた。


クリムソン様が僕を目で探している。


「私の警護役をしてくれていた者・・・・・お、いたいた。君だ。やってもらいたいことがある。疲れていることは重々承知だが」


と一息ついてクリムソン様が僕に話しかける。


「これからこの袋をもって国境沿い近くのエボニーの町へ向かってほしい。そこについたらこの袋をあけ、中のものを使って指示書に従って動いてほしい」


手に持っていた小袋を僕に渡してきた。


僕はその小袋を受け取る。何か、小さい金属のようなものが入っているようだ。


「は、承りました。それではただいまからエボニーの町に向かいたいと思います」


そして後ろを向き立ち去ろうとすると、クリムソン様が僕の肩をガシッとつかみ、


「出発する前に、確認したいことがある」


「君は我がアプリコット公爵のみならずこのプラチナ帝国のために命を投げ出す覚悟はあるか」


と静かだが、とても芯のある声で僕にそう尋ねた。


その目は血走っているといってもいい。よほど、大事なことをこれから決行するようだ。


シェラや他の従者がいて命を失うということは考えられなかったし、冒険者時代も魔物と何度も戦闘を繰り返している。


命を懸ける覚悟はできているつもりだ。


「命を懸ける覚悟はできています。僕の身がどうなろうと大恩あるアプリコット様のご迷惑になることはいたしません」


その言葉を聞くと安心したようにクリムソン様は、


「その言葉を忘れるな」


と言い立ち去った。


僕はクリムソン様の後ろ姿を確認すると従者とともにエボニーの町へ向かった。


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