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非日常的物語  作者: 森 神奈
1シーズン

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4/6

4話 非日常的な職業体験


「みんなー! 今日は職業体験だぞー!」

白猫先生こと白上猫乃が、珍しくテンション高めに教室で宣言した。

生徒たちはざわめきながら、それぞれ振り分けられた職場に向かう。

冬と乃亜、翔真、愛の四人は、ある中規模の会社へ見学に行くことになった。

「……なんか、嫌な予感しかしない」冬は出発前からぼやく。

「何言ってんだ、仕事体験って楽しそうじゃん!」翔真が声を張り上げ、愛がすかさずツッコむ。

「翔真くん、声がうるさい。……あと集合時間ギリギリだから走って」

到着したオフィス。

案内してくれた女性社員は、落ち着いた雰囲気の24歳。

「ようこそ、皆さん。今日はよろしくお願いしますね」

冬は(なんか親しみやすい人だな……)と感じる。

体験は順調に進んでいたが、ふと社員同士が慌てて声をひそめ合う場面に遭遇する。

「経理部でお金が……」

「いや、まだ生徒に知られるわけには……」

乃亜の眉が動く。

「へぇ、横領か。面白そうじゃん」

「お前、事件にワクワクすんな!」冬が即ツッコミ。

だが空気はすでに緊迫していた。

会社の一角で、経理担当者が明らかに不自然な動きをしている。

伝票の数字をすり替え、金の流れを誤魔化そうとしていたのだ。

冬は観察眼を働かせ、静かに呟く。

「伝票の消えた数字……。これ、横領隠しの手口だ」

乃亜は左頬をグッと引っ掻き、血をにじませながら笑った。

「よし、ぶん殴ってぶん殴ってぶん殴る!」

「おい、会社で暴れるな!」冬が必死に抑える。

結局、冬の冷静な推理と証拠の指摘で横領の不正は明るみに出る。

社員たちは安堵し、責任者に謝罪される形で職業体験は終了した。

帰り道、乃亜が楽しそうに言った。

「な?やっぱり非日常の方が楽しいだろ?」

冬はため息をつき、スマホを取り出す。

Natu_./:今日、うちの会社来てたでしょ?どうだった?

冬:え?……まさか同じ職場?

Natu_./:ふふ、秘密だよ

冬は画面を見つめて固まった。

「……やっぱりやになるな〜」

会社での横領事件が解決し、解放されたような気持ちで帰路につく冬と乃亜。

夕暮れの街を歩きながら、冬は深いため息をついた。

「……ほんっと、やになるな〜。職業体験で犯罪に遭遇するとか普通ないだろ」

「まあ、俺的には暇つぶしに最高だったけどな」乃亜は肩をすくめて笑う。

その時。人混みの端に立っているひとりの女の子が、じっと二人を見つめていた。

長い髪を揺らし、携帯を握りしめ、こちらを追いかけるように歩き出す――かりんだ。

乃亜は一瞬だけ視線をそらし、低く呟いた。

「……またか」

冬が気づいて振り返る。

「ん? あれ……あの子、また見たことあるような……」

「そーいや今日もいたな」乃亜が苦笑する。

「お前の元カノ、イベントあるごとにいっつもいるな」

「はぁ……顔荒れるどころの話じゃねえ」

乃亜は額を押さえながらぼやき、冬は吹き出す。

「お前、ストーカーされる側ってのも大変だな」

遠くから、かりんは小さく微笑んで二人を見送っていた。

その目には、強い執着と消えない未練が宿っている。

夕焼けの道を歩きながら、冬は胸の奥でつぶやく。

「……やっぱり、非日常からは逃げられないか」


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