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「みなさんお揃いでしょうか。この度はアンダーグラウンドフェスティバル2025にご参加くださり、誠にありがとうございます。今年度のアンダーグラウンドフェスティバルは明日の24時、明後日の0時より開催されます。ここの施設は、現在このアナウンスが流れている大広間、ここから5つの出入口がございます。左からフロア1から5と名前がつけられております。フロア1は休憩室となっております。ご自由に使っていただき、休憩なさってください。2から5は今後ゲーム内で使用していきます。明日のゲームが始まるまではご自由に入っていただいて結構です。それでは皆さんの健闘を祈ります。」
大広間で盛大なアナウンスがなされた。
薄暗い雰囲気の会場を見回ろうとしてると羽二が自分の手を引いて歩き出した。
「どこへいくの?」
「休憩室を陣取りにいくぞ。早く行かないと取られるんだよここ。」
「え、そうなの?あ、あとさ、ひとつ聞きたかったんだけどさ。経験者?」
「あぁ、そうだよ。私は経験者だよ。休憩室さ、仕切りしかないから早めに隅っこの場所取らないとダメなんだよ。」
「前回の経験者ならお金、貰ったんじゃないのかよ。」
「貰ったけど、100万くらいだったからね。もう使い切っちゃったよ。」
「賞金100万だけのこともあるんだな。」
「って言っても100万は最低金額だけどな。」
「なんだ、じゃあゲームに負けたのか?」
「いや、勝ったよ。勝ったけど、最低金額だった。」
「何人くらい勝てるの?」
「10人。100万貰えるのが5人、1000万貰えるのが3人、1億貰えるのが2人、そんで10億貰えるのが1人さ。」
「随分勝ったんだね。すごいじゃん。」
「まぁね。でもヒヤヒヤもんよ。あたし10番目だったからさ、あと1つ順位落としてたら死んでたんだもんなぁ。怖い怖い、まぁ、これがギャンブラーの性なんだけどな。」
「1つ順位落としてたら死ぬって何?」
「その通りだよ、負けたら死ぬんだよ。」
「え?死ぬの?」
「そうだよ。じゃなきゃ面白くないだろ。」
「いやいやいやいや、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、帰る。」
「どうやって帰るんだよ。」
「…」
「任せろって、私にはツキがツイてるからさ。大丈夫だよ、死なないって。」
こんなことなら来なければよかった。もともと怪しい話だったのだ。自分が死んでしまったら娘はどうしよう。大学まで行かせてあげたいのに、それに、もともと一人しかいない親が欠けてしまったらあの子はどんなに悲しむだろうか。
後出しで物事を言ってくる妹に腹を立てた。
「よし、ここにしよう。悪くない所が陣取れたな。」
「あぁ。」
「ここからは自由行動な。あ、そうだ、ここにいる人たちってさ、ヤバいやつらだから気をつけて歩けよ。ほらこれやるよ。」と言われて果物ナイフとライターを渡してきた。
「あ、あぁ。ありがとう。」
「そんなんで大丈夫かよ。しっかりてくれよ相棒。」
「とにかく、また明日な、俺は今は羽二と話したくない。」
自分はそう言って大広間に出ていった。