プロローグ
これは夢?
ここはどこ?
目を開けると青空が広がっていた。
「眩しっ、えっ?‥‥‥そ、ら、?‥‥‥」
寝る前に、お気に入りのエッセイを読んだ。孫娘が祖母を連れてロンドンを旅するお話だ。作者の名前が私と同じなので余計に親近感があり、何度も読み返して、いつかロンドンに行ってみたいと思っていた。その記憶はハッキリと残ってる。
それで夢を見たんだな。きっとそうだ。
まだ頭がボーッとしている。夢の続きか。
そっか、ここはロンドンなのか?
待てよ、草の上?ロンドンの草むら?
土と草の匂いがする。
半身を起こして辺りを見まわした。
私はジャージの上下を着ていた。パジャマ代わりにいつも着て寝るやつだ。昨夜も着ていた。
ほっぺたをつねってみる。大昔から変わらない、夢か現実かを確かめる方法だ。他のやり方は知らない。
「痛っ」
夢ではない?いや、夢の中でほっぺたをつねったのかも。
もう一度つねってみる。やっぱり痛い。
訳がわからなかった。
「えっ、待って待って待って」
誰に何を待てって言ってんだ、私?
『ミチルはこんらんした』
ポケ○ンの台詞が頭をよぎる。よくやられたなぁ。これやられると自分で自分を攻撃してしまうのだ。
しばし、小さい頃やり倒していたRPGに思いを馳せる。主人公にミチルという名前をつけてた。あれはDSだったかなぁ。
待て待て、馳せてる場合じゃないだろ。
こんな前代未聞の大ピンチでも、全く関係ない思い出に浸れる自分のメンタルの強さに敬服した。凄いぞ、自分。
横に目をやると真っ黒な細長い塊が横たわっていた。人だ。
え?学ラン?誰?
顔を覗き込むと、その人物も目を開けた。よく知った顔だった。
それは幼馴染みの同級生、慶太だった。
しかも慶太は、高校生に戻っていた。