眠りのための処方箋 雲の向こうがわ 作者: 薄雪草 曇り空の帰り道 西の地平線は橙に染まった 雲は龍のように 遠く、遠く、飛んでいく 灰色の雲とのコントラストに 想うのは、西の天気のこと その地に住んでいた人のこと 彼方へ、彼方へ 見上げれば 吸い込まれそう 雲と雲の向こうがわ 藍色に変わる空に 星ひとつ 星ひとつ、雲の上 きれいにひとつ、輝いて こころの泉にも星ひとつ 地上は風もやわらぎ 寒桜が綻びていく 咲いたわずかニ輪の花が 風のなかで、淡い紅いろに染まった 明日は寒いというのに 負けないで 藍色に変わる空に 星ひとつ 雲の向こうから、輝いた 星を映した水に、波ひとつ それからは、凪の時間