1話
僕は辺境に居を構え、細々とポーションを近くの町に卸し生活をしている。
錬金術師という者は服に刺激臭というべき匂いが服に移るため、街中に住んでいると顔を顰められる存在のため悲しいことに町に住むことが出来ないのだ。
そして今日、ポーションの材料を取りに森の中に入ったのだが急に霧が立ち込めてきたため、私は森の中で迷ってしまった。
今回、取りに来たポーションの材料は、人も日の光が入らないような場所に生えているため森の奥の洞窟に行かなければならないため気を付けていたつもりだったが...。
霧の濃さも相まって方向がわからない、大陽の位置から方向を確かめようにもここは、日も当たらない森の奥のため大陽を確認することが出来ない。
「迷ったら、その場で動かないで助けを待つが正解なんだろうけど...。」
あいにく僕は森の中に入ったことを誰にも伝えてないし、町に行く頻度も高くないため私の遭難に気付いて探してくれるような人もいない。
となると賭けだが動いて見知った場所を見つけられることを願うしかない。
それから何時間も歩いていたが見たことある場所のような...。見知った場所のような...。もう場所の見分けもつかない...。
「このままじゃ...。」
少し焦りを感じながらしばらく歩いていった。
すると当初の目的地である洞窟が現れた。
「たっ、助かったぁ...。」
見知った場所を見つけたおかげでかなり気が楽になった。
しかし、安心して一息ついて周りを見回すと日が傾いたせいか森の中がさらに暗くなってきた。
「今日は洞窟の中で過ごすことにしよう。」
流石にこの暗い中で帰って再び迷ったら洒落にならないので
完全に暗くなる前に洞窟の入り口に焚火の準備を行い火を付けた。
「洞窟に入ったはいいものまさか動物の住処になっていないだろうな?」
以前、洞窟に入った時は熊が根城にしていたため肝を冷やしたものだ。
寝ている間に熊に襲われたらたまったものではない。
僕はカバンに吊っていたランプを取り出し明かりをつけた。
ランプを掲げ奥を確認しながら、洞窟の奥に進んで行った。
この洞窟はそんなに広いわけではなく、つきあたりに左に15歩ぐらいしか奥行きがない。
奥まで進み左に曲がる前に、熊に鉢合わせしないように奥の気配を探ってみると。
「はぁ...。はぁ...。」
何だか熊にしては息が小さく弱々しい息づかいが聞こえてきた。
曲がり角から顔とランプを少し出し、奥を覗いてみると奥に何かが倒れている。熊じゃない、何だが小さい。
角から体を出し、ランプを掲げ奥まで照らすと...。
人だ..。
そこには人が倒れていた。
「ッ、、、!」
よく見てみれば倒れているの着衣は服とは言えないような布切れだった。洞窟でこんな服を着て倒れているということは只事ではない。
僕は急いで倒れている人に駆け寄り、容態を確認した。
倒れている人の体を観察すると、まず最初に目についたのは胸の膨らみであった。
うっすらではあったが膨らみが確認できる。
女か。
次に視線を顔に向けると胸の割には幼い顔をしていた。
少女の顔を見ていると近くに蛇がいた。
洞窟の中は薄暗く蛇の毒の有無が分からない、早く女から蛇を離すために投げるしかない。
そして手を伸ばし掴むと
「うっ!」
女の顔が動き呻いた、これは蛇が頭に繋がっている?
蛇から手を離し、観察すると蛇は女と同様にぐったりしている。
「蛇女?」
女の頭に蛇がついていることが異常なことだと脳が認識した瞬間、心臓が飛び上がり背中から嫌な汗がでてくる?
化け物?このまま見捨てたほうが良いか?
しかし、頭に蛇がついているとはいえ少女を見捨てられるのか?
「うぅ...。お母さん...。」
少女が母親を呼ぶ声が耳に届く。
ここで少女を見捨てたらそれこそ、私自身がバケモノではないか。余計なことは助けた後に考えれば良い。
「よし!覚悟を決めるぞ。」
まずは念のために持ってきた治癒ポーションを使用しよう。
少女は弱っていて手足を見ても痩せ細り全身に怪我をしている、息が荒いのもおそらく熱があるせいだ。
まずは怪我を治すために全身にポーション一本振りかけ、もう一本取り出し口に徐々に含ませ飲ませる。
「ポーションだ。飲みなさい。」
少女から返事はないが嚥下していることは確認できた。
ポーションを飲ませ、傷や体力は回復できたが熱は以前とあることには変わりない。
このまま冷えた洞窟内で放置したら体力が尽きて死んでしまう...。ならば早く家に戻って治療しないと。
「おい君、立てるか?」
「はぁ...。はぁ。」
駄目だな。意識も薄く返事する余裕も無さそうだ。
立てない少女を担ぎ上げると簡単に持ち上がり、少女の異常な痩せ方が嫌にもわかる。
さて森で迷っている私だが家路までは簡単だ。この洞窟を出て右にまっすぐ行くと川に出る。その川に沿って下って行けば家路に着くことができる。
ここから家まではかなり距離がある。急がなければ手遅れになる。
「仕方ないよな...。」
カバンから持久ポーションと暗視ポーションの二つを取り出し飲み干した。
するとポーションの効果で森の中は昼間同然に明るくつまづく心配はなくなり、いくら走っても疲れにくくなっていく。
洞窟から出て全力で走り、川まで出て川に沿って家路に着いた。
「ゼェッ。ゼェッ...。、ふぅ。」
全力で走ったおかげで思ったより早く家に着く事ができた。
家に入り、少女を寝かせる事にした。
しかし、この家は一人住まいの家で来客もないため来客用のベットもない...。
仕方がないので自分のベットを少女に譲り、寝かせる事にする。
ベットに寝かせてから解熱薬を取りに行き少女に飲ませ、少女の息が落ち着いて行くのを確認してから部屋を出た。