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帰還準備編

時間があいたことをお詫びします。

不定期らしくじわじわ投稿するので気長にお待ちください。

m(_ _)m


 

 〈魔王部side〉

 リアル・ファンタジー研究所、ハテノハテ連合星系共和連邦、α星系第2惑星ペタノートにある魔王部ハテノハテ管区研究所では、タニシ連邦、ファランクス星系で拘束された魔王以下269名の幹部クラスと47万5千強にのぼる兵がピングー艦隊によって護送されてきた。


「以上、47万6千弱の魔王軍関係者を送致する次第であります」

「ご苦労であった。ハテノハテ司令部に感謝の意を伝えるものとする」

「では総員、連星共通惑星である軍事要塞ハテノハテへ帰還する」


 軍事要塞ハテノハテはハテノハテ連星系であるα星系とβ星系の共通惑星の1つで、第5惑星に当たる。

 コミュウ家艦隊が各々駐屯するコミュウ連邦東部最大の軍事拠点である。



「はー、やれやれ。一時はどうなることかと心配しましたぞ」

「今回の魔王どもは活きが良かったですからなぁ」

「どれだけ素直に接してくるかは多少心配ですが。魔術では敗北も同然ですし」

「ファンタマズル・キラーも一応魔術ではあるがな。ミュウ魔術やペンギン魔術にあるし」

「ミサイルの表面にそれがついている時点で、という前提つきですけど」

「まあ、勝ったんだからいいではないか。勇者ご一行も本部がどうにかするといってるし」

「あれですか?送還」

「それだろうな。彼らの出身地が存在していないならともかく、あるのであればそこに戻すのが筋ではないかね。誘拐とか拉致に当たるのだし」

「コミュウ家の調査で来月には調うとか。原因の主邪神グローもコミュウさんがさっそくボコりに行ったらしい」

「相変わらずだな」

「まったくだ」



 〈魔王side〉

 どうやら、ここが目的地のようだが…?

 われわれが送り込まれた場所と景色が全く違う。

 太陽って2つあったっけ?


「魔王さまー!太陽が!」

「うむ。東と西にあるな。む…?西から上ってきている!?」

「「うわあ!ほんとうだ!こわぁあああぁ!」」


「そりゃそうさ。だって、ちがう星系だぜ」

 なんだかんだ気を許したらしい魔王部課長代理。面白い連中とわかったらしい。

「どういうことだ、というより、星系ってなんだ?」

「そっからかぁーorz。この土地はあの太陽の回りを回っているんだ」

「は?太陽が我々の回りを回っている訳じゃないのか?」

「天動説かよ~…。とんだ中世から送り込んできたのかよ~」

「どういうことだ、それは?ケンカ売ってんのか?」

「あー、それはしない。負けるからな。いや、う~ん、ペンギン系のあの会社に委託するか」

 ブツブツぼやく課長代理。


 たまに大規模に漂流しているのが発見される仮死状態のタニシ。

 彼らを再教育する最大手のペンギン探索サービス(株)に委託(まるなげ)する気なのだろう。

 なお、この会社もまたピングー財閥傘下である。故にピングーはまた苦労するはめとなるのであった。


「まあ、それはあとで考えるとして、魔王、ちと相談がある」と手招き。

「なんだ?」とついていく魔王。


「なんだろ~?」

「ん~、分からんな」

「お前はいつもそれだな」

「でも、意外と萌えるわぁ~♡ 課長代理、お髭が素敵なイケメンさんだもの~」


 ブルルッ

「どうした?」と魔王。

「いや、なんか知らんが寒気がした。まるで背筋に指で撫でられたような」

「あー、うちのやつかもな~。幹部に漢女がいるんだ。ある事故でなったんだが、それ以降非常に気持ち悪くなってな。優秀なぶん叩き出せないんだよ。こう言うと非常に喜ぶんだが…」

「あー、そういうヒトなんですね…。お察しします」

「いるのか、そういうの?」

「ええ。うちがファンタジー専門だからでしょうかね、そういうのが湧くんですよ。小説とかアニメの見すぎでそんなヒトたちが。たまにそういう薄い本でワイワイしているのにはちょっと…」

「あるんだな、そっちにも」

「え?あるのか!」

「もちろん。ただ、そういうなにか男同士の…みたいな小説がうちの世界にたくさんあったな。敵のユラニー連合王国は特に多かったそうだ」

「どの世界でも変わらんもんなんだな」

「同感だ。で、話ってなんだ?」

「住むところについてなんだが、戻るか何かの希望はあるか?」

「戻る、のは無しだな。いずれ滅ぼされかねん。それより残された者たちをこちらに連れてきて欲しいのだ」

「どのくらいの人数だ?」

「ざっと1000万ってところだ。敵は今ごろ祝賀パレードなんぞしてそうだな」

「マジかよっ!?それで少数派?早急に救出作戦をしなくては」


 課長代理が懐から取り出した仮想パネル端末に、魔王軍に対する人権侵害のおそれという緊急報告を上層部に提出し、1000万単位での救出作戦の必要性を明記した。僅か30秒のことだった。


「そのうえで、どこに住む?」

「誰も住んでいない大陸1つぐらいでどうにかならんか?」

「いっそのこと、星1ついかが?新種族として登録するし、なにより多少排他的でもどうにでもなる」

「それで大丈夫なら星1つお願いする」

「星1つだな、了解だ。特殊な環境が必要なら言ってくれ。あとから増設する」

「そんなことも可能なのか…」

「星1つ丸々製造できる特殊な会社があるからな」

「神をも恐れぬ所業だな…」



 ◇◆◇◆◇◆


「はぁー、やっっと終わった」

「長かったな。体力・精神もろとも疲れたぞ」


 ここはコミュウ造船(株)のアンナナ造船所。ようやくあの艦隊が完成した模様。あのコミュウの依頼(ようきゅう)からわずか1ヶ月のことだった。

 これから実証実験を行い、設計図の修正および解体検査を3回行ったあと、はじめて完成したと言える。要するにまだこれからであった。


「ぐったりするのもよろしいですが、まだスタートラインではありませんか。ほら、社長(ピングー)もシャキッとする!」

「へいへい」


「それにしても、今回はどこで実証実験をするんだ?そらとび能力の調査だろ?」

「えーっと、タニシ周辺国会議からそらとびの許可を得ているから、そっちで行う」

「ということは、南部か~。それまでは通常航行か?」

「短距離・中距離・長距離の単独ワープの実証実験も兼ねての航路外航行だね」

「初っぱなから大変だな、これに乗るやつら」


 タニシ周辺国会議とは、1万年前に発生したビックバンの地殻変動から逃げたタニシ第2世代の子孫たちが建国した国々で構成されている宇宙間連合である。小宇宙丸々所領とする国家もある。


 また、航路外航行とは、通常航路がワープ・トンネルを通じて接続されていることから、トンネルを一切使わずにワープ機関だけでワープしながら航行すること。トンネル開設前はこの方法が主流だった。今では、ワープ機関があっても使わないことが多く、緊急用として載せられている。



 ◇◆◇◆◇◆


 〈勇者side〉

 リアル・ファンタジー研究所本部のあるビックバン共和国連邦、都市国家ビックバンで比較的自由に過ごすことが国家単位で認められていた俺たちはその日、本部の勇者部に呼び出しを受けた。

 そこで、勇者部の勇者ギルド受付嬢のカロリーナ・マクスウェルさんから衝撃的な事実を言われた。


「「「え?帰れる?1ヶ月しか経ってないのに?」」」


「そうなの。この国のさらに上のトップがひどく尽力なさってね。一部犠牲者が出たらしいんだけど…」

「えっと、俺たちの国っていったいどこにあったんですか?」

「え?そこから?」

「え?」

「…それもそうよね。恒星間航行をしているわけでもないみたいだし、ましてやその宇宙の大勢力と関わっているわけでもないし。この連邦が特別変なだけだわ」

「…」

「じゃあ、全員本部第1437会議室に30分後に集合ね!しっかり説明するから!」

「「「「「はーい!」」」」」



 30分後。


「さて、全員揃ったかしら。始めるわよ」

 会議室の中央にある3Dホログラフ装置を起動させる。

 すると、コミュウ連邦の立体地図が浮かび上がった。

「まずは、この大連邦からだけど、今いるところはわかるかしら?そう、中心部のビックバンね。で、君たちが召喚されたのは、南東部に位置するタニシ連邦の更に東部にあるファランクス星系」


 そして、現宇宙とその周辺宇宙が映るよう縮尺を小さくする。

 コミュウ連邦の所有宇宙と周辺国会議など、色別に国や連合を区分けしてあった。宇宙の交流を示すワームホール(天然・人工含む)の位置も図示されていた。


「これがこの宇宙の周辺なのだけど、君たちの出身宇宙が写っちゃってるのねー。どれかわかるかしら?」


 全員揃って首をかしげる。

「「「「「えっと…?」」」」」


「そうよね。分かってたわ。ここよ」

 とコミュウ連邦の北側の宇宙のその西側にある小さい宇宙を示した。


「「「「「ええええええええええええええっ!!」」」」」


「盛大な驚きをありがと…」


「でも、その宇宙、隣と繋がってないようですが…」と木谷根。

「そこが非常に問題だったのよ。この宇宙、大連邦から8宇宙先にあるのよ。要は大回りするの」

「「「「「えっ?こんなに近いのに?」」」」」

「この隣の宇宙との間にワームホールを設置できないほどの異常があるからなんだけど、近年ようやく解消する方法が確立されて、来年までにはできるんじゃないかしら。君たちが楽にこちらに来れるようになるわよ」

「「「「「今回はどうやって?」」」」」

「まあまあ落ち着いて。最初の話に戻るんだけど、この国のさらに上のトップが特殊な宇宙航行技術を持っていてね、それに全員とRF研とか連邦の関係者が乗れるよう尽力なさったの。ちょっと規模が大きくなったし、犠牲者が出たみたいだけど、それに乗れば帰れるわよ。私も行ってみたい」

「「「「「へ、へぇー…、な、なんだかスゴいことに…」」」」」

「もちろんとんでもなくすごいことなのよ、これは!トップ、この際『コミュウ家』って言っちゃうけど、その最先端技術の公開とそれに伴う特許の放棄を宣言なされたわ。これによって、ワームホールで繋がっていない宇宙にも気軽に行けるようになったのよ!君たちがこの連邦に召喚されちゃったことがこの結果に繋がってる!もちろん、ちゃんと送り届けるわよ」


「な、なんだか、この国の技術史の決定的瞬間を見ているみたいだ…」

「光栄な気分だな」

「だな」


「君たちというか、恐らくだけど、君たちの国は開国することになりそうだわ」

「「「「…ん?黒船みたいに?」」」」

「それが君たちの世界にもあることが驚きだけど、間違っちゃいないわ。だって、君たちが帰る船、『漆黒の終焉艦隊』って呼ばれているから」

「「「「「う、うわああ!!黒なんだ~」」」」」


「で、何で開国に?」

「それがね、その『漆黒の終焉艦隊』が問題で、君たちの宇宙の大勢力のプノシス王国を訪ねなくちゃいけないし、その過程で一緒についてくるのよね、王国艦隊が。よって、結果的に『黒船来襲』による開国になりそうだなっと」

「「「なるほどorz」」」

「戦争にはならないですかね?」心配そうな石川先生。

「戦争するほど精神的な窮乏はないわよ、こちら側は。わざわざ1惑星を侵略する必要性は欠片も存在しないわ。そうするより先に未探索銀河をどうにかする方が早いもの」

「なるほどな。格が段違いに違うということか…」

「えーと、最新の情報では、その専用の艦艇が完成したけどまだ厳密な検査が続くので、あと半月は待ってほしい、とのことらしいわ」

「「「「「最短であと半月で帰れちゃうのっ!?!?」」」」」

「まあ普通はそうよね…。この連邦のあり得ない開発速度に正直考えるだけ馬鹿馬鹿しいくらいだわ。ちなみに総員500名の予定らしいわよ」

「「「「「………」」」」」


「さて、あと最短で半月はあるし、しっかり楽しんで準備しなさい。以上解散」


 蹌踉(そうろう)とした足取りで去っていく彼らにはまだ衝撃的な真実がもたらされてはいなかった。

 彼らの帰還すべきその1惑星に国家が1つしかない状況を、召喚されてしまった彼らを含めて、愕然とするのにもう少しの時間が必要なのかもしれなかった。


 《つづく》



召喚されてしまった勇者たちがついに帰還へ。

一方の魔王たちは大連邦に移住し、残された者たちの救出作戦が実施されることに。

主邪神グローの処遇はどうなるのやら。

次回は勇者たちの幕間になる予定です。

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